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3月5日 啓蟄
もぞもぞと私は布団の中で蠢いていた。
春は来ないのは知っている。
もう過去に過ぎ去っている。
それでももぞもぞと布団の中で蠢いている。
いつまでもここで蠢いているわけにはいかない。しかしまだまだ蓄えはある。
私と親が必死に蓄えたものだ。
「はーるよ来い。はーやく来い。」
気が付いたら口ずさんでいた。
思えば何度か春は来ていたのかもしれない。
学校から級友が声をかけてくれた時。親がわけのわからない業者で私を説得しようとしたとき。
それでも私は外がまだまだ冬だと思ってもぞもぞと過ごしていた。
あと何度春らしいものが来るかわからない。
ただ、次に春らしいものが来たらそれに乗じてここを出ようと思う。
ートントントン
何年振りかのノック音がした。
春の兆しなのかもしれない。




