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3月4日 ミシンの日

「ガガガガガ」


 古びたミシンの音が好きだった。

 母親は新しいミシンを欲しがっていたが、私は何時しか祖母から貰ったというそのミシンをもらえる時を夢見ていた。


「ガガギガゴゴ……あれ、また故障?」


 ミシンが嫌な音を出して急に止まった。

 いつもの通りミシンの上部を叩くも全く反応はなく止まったままだった。

 少し時間を空けても全く動く気配はなかった。

 いよいよミシンが壊れてしまった。

 新しいミシンが買えると母は少し上機嫌だったのが私には益々腹立たしくてむくれていた。

 その雰囲気を察してか母が声をかけてきた。


「どうしたのそんな顔して。」

「せっかくおばちゃんから貰ったミシンなのに」

「そうだね。」

「大事にしてたのに。」

「そうだね。でも思いが大切だから。」

「思い?」

「そうだよ。きっと新しいミシン買ったらお母さんだけだと使いきれないからそれもきっとあなたにあげることになるんだよ。」

「新しいミシンを。」

「そうだよ。」

「本当?」

「本当だよ」


 それを聞くと私は嬉しくなった。


「じゃあ、新しいミシン買おうよ。」

「そうだね」

「ガガガガガ」


 ミシンが急に動き出した。


「あれ、動いちゃったね。」

「新しいミシンは?」

「買わないかな。」

「そうなの?」


 ミシンはまだまだ動けるとアピールするようにしばらく動き続けた。

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