60/365
3月1日 未来郵便の日
「郵便が過去から届くなんて素敵じゃない。」
そう笑いながら言っていた妻の顔を今では薄ぼんやりとしか覚えらていない。
未来郵便に手紙を託してから三日後妻は死んだ。
不慮の事故としか言いようがないが、逆に言えばだれを憎んでいいのかわからないものだった。
病死なら医者か病気を、事故死なら加害者を憎めばいいが俺の場合はどちらでもなかった。
だから今日が結婚記念日十年目で九年前の妻から手紙が届くなんて思ってもみなかった。
「お互いに中を見るまでの楽しみにしたい」
との妻の提案で封書になっている郵便をとったとき俺は心から震えた。
その字だけで涙が零れ落ちていた。
今日が祝日でよかった、もし平日なら仕事になっていなかっただろう。
ゆっくりと手紙の封を開いた。
雑に二つ折りになっている手紙を丁寧に開いていく。
『にゃあ』
猫のイラストが吹き出しでそう言っていた。
ああ。こういう女性だった。
その手紙を額に入れてでも飾ろうと俺は外出することにした。
外は冬なのにいい陽光だった。




