第18話 期末テストの結果
遂にテスト前日。
真白さんや藍川さんなど色々な出来事があったが、なんとかテストまでに勉強をすることができた。
……あとは、寝るだけだな。
前日の徹夜は体に毒だ。
早く寝よう。
――そう思った矢先。
ピロンッ。
ん?
携帯から通知が。
その相手は藍川さんだった。
「琥太郎くん、テスト前日だけど本当に大丈夫なの?」
「大丈夫って何が?」
「だから、勝負の話でしょ!負けたら辞めさせられるんでしょう?」
「そうだね、でも、安心して何度も言ってるように俺が負ける事なんて絶対ないから」
意外だなぁ。
藍川さんがここまで俺の事を心配してくれるなんて素直に嬉しいな。
「本当でしょうね。まだ、始まったばかりなんだからね。琥太郎くんは私のライバルとして居てくれないと困るのよ」
本当に藍川さんは毅然とした態度をとっている。
藍川さんらしいなぁ。
俺は思わず目尻を下げながら、藍川さんとのメールを見つめていた。
「心配しないでよ、俺もまだまだ藍川さんとボドゲでボコボコにしたいし、辞めるつもりはないよ」
「ガチシバくよ(怒)」
藍川さんからのお怒りのスタンプと共にシバクとか言うパワーワードを送りつけてくる。
ひぃ、怖いなぁ。
出来ればお手柔らかにお願いできると助かる。
単語帳をめくりながら、頭に叩き込む。
「……」
流石に……寝たか。
俺もそろそろ寝ようかな。
明日の寝坊は厳禁だからな。
俺はスッと目を閉じて意識が落ちるまでに時間はそこまでは掛からない。
***
「……まーた、チェス?最近チェスと将棋だけじゃん本当に飽きないねぇ」
また、この夢だ。
夢なのに鮮明に声が聞こえるし。
本当になんなんだろう。
それにこの声なんか聞いたことがある気がする。
とっても身近に居た声。
俺は時々、自分に対して不思議に思うことがある。
やったことのない筈のボドゲが出来たり、料理や裁縫に関しても勿論小さい頃からやっていたが最初からある程度できた気がする。
この話のチェックメイトとして古傷がある。
俺は"記憶喪失"なのか?
今までその事は泰葉や両親に相談した事は無かったし、 俺もそんなに気にしていなかった。
だけど……本当に気にしなくていいのか?
俺は知らなければいけないのでは?
いいや、知らなくていいか、俺には両親や泰葉がいる。
"思い出す"必要なんてないんだ。
俺には"家族"がいる。
世の中には知らなくていい事だってあるんだ。
「お!また挑んでくるのか。フッ、お前が俺に勝てるようになるには後十年は必要だな」
今度は若い男の声。
俺とボドゲをやっているのか?
多分、友達かなんかだろう。
聞き馴染みがある――。
……あるんだけど、なん……で。
こんなにも胸が痛くなるのだろう。
何故、滅多に涙を流さない俺がこんなにも泣いているのだろう。
胸が苦しい。
夢なら早く覚めてくれ、こんなに辛い思いをさせないでくれ。
すると、自分の体が大きくゆすられる。
「お兄ちゃん!大丈夫?」
目を開けると、目の前に泰葉が心配そうに顔を覗かせている。
俺は心底安心した。
それは泰葉という家族が近くにいたから……俺の手を優しく握ってくれていたから俺はこの場で泣きことも我慢できた。
俺の目には大量の涙が零れ落ちていた。
「ああ、ごめんな。心配させてでも大丈夫だから、少し悲しい夢を見ただけだ」
「悲しい夢って――」
「あー、なんか俺、夢で知らない友達とチェスやってたらしいんだよね。あは!本当、俺って本当にチェス好きなんだなぁー」
俺はその感情を押し殺すように、明るく振る舞う。
「そう……今日は期末テストでしょ?頑張ってね」
泰葉にはバレてるよなぁ。
大体、表情でわかる。
泰葉が部屋から出ていくと。
「……うぅ。馬鹿泣くな!夢見たくらいでなんで泣いてんだ!」
でも、涙が止まらない。
俺は一体――"何者なんだ"。
知らなくていい、知らなくていい。
俺はそう、呪文もかけないと、押し潰れそうだった。
そう、俺は西條琥太郎なんだ。
記憶喪失なんかじゃない。
***
「琥太郎おはよー……ってお前どうした!目赤いぞ?」
「あぁ、心配するな。ただの花粉症だ」
「今夏だよね?えぇと、夏に流行する花粉症。検索」
慶賀は徐に夏に流行る花粉症を検索すると。
「えーと、まあなんかわかんねーけどそういうのが流行してるんだってな。気をつけろよ琥太郎」
俺は「あぁ」と適当な返事をする。
慶賀の察しが悪くてよかった。
あれから、俺の心が収まるまで学校登校時間ギリギリまでかかった。
あー、最悪だ。
大事なテストだっていうのにこんなハプニングに見舞われるなんて。
「琥太郎はテスト大丈夫なん?」
「まぁね。やれるだけのことはやったよ」
慶賀は重々しい表情で呟く。
「琥太郎……今から入れる保険はありますか?」
「うーん、慶賀の場合は赤点保険だな」
二人で笑い合っているとあっという間に学校に着いてしまった。
遂に来たか。
俺はやる時はやる男なんだ。
天城さんとの勝負。
……絶対に勝つ!
***
期末テストの数日間に及ぶ闘いは幕を下ろした。
藍川さんは「あ〜」と納得のいってないような声を出す。
多分、あんま良い感触じゃ無かったんだろうな。
「琥太郎くん、余裕そうじゃない?そんなに自信あるの?」
「まぁね、あらかたできたかな」
「うざ」
何でそれでうざになるんだ?
だが、次の時間遂に順位発表。
勝負の結果は如何に。
次の時間。
俺たちは入り口の大きな広場に集まる。
そこには大きく学年全員の順位が張り出されていた。
俺は――。
だが、俺の名前を探すのに時間は要らなかった。
学年順位。
第5位西條琥太郎。
よぉおおおし。
勝ったぞ。
俺は10位に入ったので勝ちは確定しているものの――上位はほとんど生徒会メンバーだ。……でも天城さんの名前はない。
俺は上から順に見ていく。
あ!
あった。
だけど……学年36位天城雫。
いや、十分高い。でも……思っていたより低い。
すぐ真横を見ると、赤面したぽっちゃりした女の子――天城雫がプルプル震えていた。
……なんて声をかければいいんだ?
あれだけ煽ってきたのだ。
どっちが半端者なのかな〜?
とか、煽っても良いんだけど。
藍川さんじゃあるまいし、流石に心が痛むな。
物凄い速度で歯軋りをしている天城さん。
「……西條琥太郎。悔しいですが貴方の勝ちです。約束は約束なので、何でも言うことを聞きます」
なんでもかぁ。
どうしようかな。
「……じゃあさ」
天城が顔を上げる。
「俺の友達になってください!」
「は?」
「天城さんの言う通り俺は友達が少ないんだ。でも、見た感じ天城さんも友達いなさそうだし、良いかなって思ったんです」
「な、し、失礼な!」
「俺は天城さんと友達になりたいんです!」
「……ぅ。わ、分かりました。約束です。友達になりましょう」
約束って言われるとなんかおかしいなぁ。
俺は天城さんに向かって微笑む。
「……ッ」
天城さんは耳を赤くする。
「じゃあ、西條……さん」
「うん!これから宜しくね天城さん!」
なんでだろう。
……天城さんとは喋りやすい感じがする。
「ですが、本当にそんな約束でいいんですか?」
「えぇ、俺は全然それで構いませんけど」
「ボドゲ部……ほんの少しだけ考えを改めます」
俺は天城さんに手を振り終えると。
小さくガッツポーズ。
よぉし、また新しい友達ができた!
因みにボドゲ部の順位。
第29位釜石真白
真白さんはまさかの天城さんに勝つと言う結果になった。
頭いいな〜。
第117位藍川陽葵。
予想通りです。
それ以外の感想が出てきません。
そして、ボドゲ部ではないが。
第238位藤平慶賀
ギリッギリで最下位回避。
なんて言うか、まぁどうせ勘だろ。




