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盤上の翼  作者: なぎさ
17/45

第17話 真白さんと勉強


 期末テストまであと一週間ほど。

 天城さんとの勝負から俺はボドゲ部と勉強を両立できているつもりだ。

 すると、俺の部屋から泰葉が何処からともなくヌルッと俺の懐に潜り込んでいた。


「どうしたんだ泰葉?」


「お兄ちゃんの頑張りを見てるところ」


 可愛い奴だな。

 俺は泰葉を軽々と持ち上げて部屋の外に連行する。


「お兄ちゃんは今、勉強してるんだから邪魔しちゃダメでしょ!休日なんだから、泰葉も友達と遊びに行きなさい」


「はーい、今日は真白姉と遊ぶし、別にいいもーん」


 俺は聞き馴染みのある名前に思わず息を呑み込む。


「そんなに仲良かったか?前までは真白さんとの遊びに行くなんて一度も言わなかっただろ?」


 俺は単純な疑問を泰葉にぶつける。

 すると、泰葉は明らかに狼狽したように。


「べ、別にー全然そんなことないけど!」


 泰葉は紛らわすように口笛をヒューヒュー吹いている。

 なんか怪しいな。

 まあ、別に真白さんと遊ぶこと自体に悪いことなんてない。


「真白さんと何するんだ?」


「お家でゲーム」


 即答する泰葉。

 サラッとエグい発言に耳を疑った。


「……マジ?」


「結構マジ」


「それって一階だけだよね?」


「そ、そだよー」


 怪しさプンプンなんだけど。


 ピンポーン。


 チャイムの音が2階の俺にまで響き渡る。

 噂をすればって奴だな。

 泰葉は飛び出すように一階に向かう。

 まあ、一階だけで遊んでくれるなら別に文句はないな。

 俺は勉強するし、流石に泰葉も気を遣って一階までに留めておいてくれるだろう。


「泰葉ちゃんがこーたくんが一緒に勉強したいって言ってたから――でも本当に急でごめんなさい!」


 真白さんは必死に頭を下げる。

 そんな風に謝られると何も言えなくなるな。

 真白さんパワー恐るべし。

 真白さんの後ろに泰葉がちょこっと首を出す。


「お二人さん。ごゆっくり」


 泰葉がゆっくりとドアを閉めていく。

 本当に泰葉って奴は手のかかる妹だ。

 その手のかかる所が泰葉のチャーミングポイントでもあるんだけど。


「じゃあ、真白さん。」


「はい」


「遊びましょ――」


「勉強しましょうか」

 

 ***


 う〜、やっぱり真白さんは駄目なんだよ。

 隣に座っていると、真白さんの髪から凄いフローラルな香りがするもん。

 勉強に集中ができるわけない。

 それにその顔の可愛さ。

 常人だったら、勉強どころじゃないだろうな。


「……ここがわからないんだけど」


 真白さんは綺麗な指で問題をなぞる。


「ああ、そこはね――」


 数時間後。


 勉強にひと段落つき、真白さんと俺は休憩していた。

 うむ。

 今日とりあえずわかったことは真白さんはいい匂いがするっていうことと、俺が思っていた以上に頭が良いということだ。

 俺の予想だと、50位以内には入ってくるだろう。

 泰葉〜来てくれよ。

 この空間結構気まずくて困る。


「真白さんってどうしてボドゲ部なんかに?」


 真白さんは急にボドゲ部に入る宣言をしたわけだけど。

 一体、学年一の美女がどうしてボドゲ部に――。


「こーたくんがいたから、かな?」


 唖然と立ち尽くす。


「えーと、冗談だよね?」


「……」


「……」


 暫くの沈黙の後。


「冗談に決まってるじゃないですかぁ」


 真白さんは天使のような笑顔で言う。

 冗談とは思えない間だったけど。

 これも真白さんのテクニックが――恐るべし。


「こーたくんは忘れたかもしれないけど、私ボドゲ好きなんだよ?一時期こーたくんとめっちゃ、やってたよね。殆ど負けてたけどね」


「そうだっけか?」


「忘れんな!!」


 優しく指で俺の頬を突く。


「泰葉ちゃんも呼ばない?折角の休みだしさ勉強ばっかじゃ疲れちゃうでしょ?」


 確かにそれもそうだな。

 俺はずっと空いてたドアを勢いよく開ける。

 そこには泰葉が聞き耳を立てていた。

 俺は泰葉の手を掴んで部屋に連れていく。


「俺は二人の関係性が気になるなぁ」


「全く。困ったお兄ちゃんだ。私がいないと話が回らないなんて、コミュ症はまだ健在……か」


「お前もだろ!」


 俺と泰葉の会話に手を叩いて笑う真白さん。

 その笑っている顔も実に絵になる。


「じゃあ、お兄ちゃんに質問でーす。真白さんの事どう思ってるの〜?」


「すごい、直球だな。答えずらいわ。でも、真白さんはいつも優しいよね。俺はこれ以上の事を言ったらセクハラで訴えられるので辞めておきます」


「そんなことしないって――私、嬉しいよ」


 ふわっと、手を握られる。

 指が細くて柔らかい。

 俺の心臓がドクンと鳴った。


「私から次の質問してもいいですか?"藍川さん"とはどう言う関係なんですか?」


 これまた直球できた質問に息を呑む。

 藍川さんをどう思っているか――ライバル?

 いや、ライバルは相応しくないな。

 藍川さんは俺の大事な――。


「友達かな。俺の数少ない大切な友達」


「へぇー、私はその数少ない友達の中に入ってるの?」


「うん!入ってるよ。真白さん合わせて今は三人かな?慶賀と真白さんあと藍川さん。先輩方は友達って言う感じじゃないから、対象外かなぁ」


「その大切な友達と泰葉ちゃんだったらどっちが大切なの〜?」


 泰葉が悪魔的な質問もしてくるが、俺には迷いはない。


「泰葉」


「はやぁ、こーたくんは妹大好きだもんね」


「勿論、どっちも大切なんで葛藤しましたけど。やっぱり家族なんでね」


「……葛藤した速さじゃないって」


 泰葉そうツッコミながら、手をバタバタさせている。

 ――可愛い。

 真白さんは「それにしても」と話を切り出す。


「私や陽葵ちゃんのことを大切に思ってくれてるなんて嬉しいな」


 そう何度も掘り返されると、恥ずかしくなってくる。

 だけど――まあ、事実だし。


 俺はパンッと手を叩く。


「それじゃあ、休憩終了。勉強の続きやりますよ」


 すると。


 ピンポーン。


 またもや、チャイムが鳴る。

 ん?

 また誰かを呼んだのか?

 泰葉に確認するが、首を振る。

 一体、誰なんだ。

 嫌な予感がし、カメラで玄関にいる人を確認すると。

 モニターに映った顔を見て、背筋が凍る。


「……ゲッ」


 ――藍川陽葵。

 今、この家に来てはいけない人物が玄関に立っていた。

 ただでさえ、真白さんでいっぱい、いっぱいなのに藍川さんまで来たら、どうなるんだよ。

 ここは居留守しておこ。


 ガチャッ。


 それをする前に泰葉がドアを開ける。


「お、泰葉ちゃん。突然来てごめんね。でも、昨日は琥太郎くんに用があってね――今日琥太郎留守?」


「いいえ、全然いますよ。ほら!」


 俺は泰葉に引っ張られる形になる。

 あー、もう面倒くさくなってきた。

 どうしたものか。


「あー、琥太郎くん。丁度良かった勉強教え――」


「どうしたのぉ?あ!陽葵ちゃん。どうしたの」


 最悪だ。

 藍川さんにどう説明しよう。


「あ、藍川さん。これはね――」


「二人で仲良く勉強してたんですよ〜」


 ……ッ。

 泰葉余計なことを。


「へぇ、前からおもってたけど。随分と仲良さそうだね」


 どうするんだよ。

 この修羅場を――。

 俺には説明できないぞ。


「あ、あとで藍川さんも呼ぼうとしてたんだけどね」


 咄嗟にそんな言い訳しかできない。

 もう、許して。


「琥太郎くーん」


 お!なんか声明るいし許してくれたのかも。


「琥太郎くん、許すマジ」


 そう言いながら、俺の手をミシミシ握り潰してくる。

 別に仲間外れにしたわけじゃないのに。

 

「それじゃあ、今日は帰りますね」


 真白さんは少し寂しそうに笑った。

 そして俺は――

 藍川さんの説教を三時間ほど聞かされることになった。



 

 

 

 

 

 


 


 


 

 

 

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