第12話 部長復帰パーティー西條家
一通りゲームを終えた後、望月先輩はパーティーを開くと言い、俺を買い出しに行かせた。
俺が出かけている間に、有栖先輩と望月先輩は家で準備するらしい。普通逆じゃないか?
――まあ、パーティーは望月先輩の家でやる予定だったし。
仕方ないか。
俺の家はボドゲ部メンバー全員出禁だしな。
それにしても、藍川さんは何で来てるんだ?
欠伸をしながら川沿いの白鳥を眺める藍川さん。絶対、余計なものしか買わない気がする。
「藍川さん、本当に言われたものだけ買うからね」
「そんなこと言われなくても分かってるよ」
本当だろうな……
「場所はセンター北のショッピングモールでいいですね?」
「賛成〜」
だらしない声に思わず肩をすくめる。
ショッピングモールは夕方の買い物客でごった返していた。
……こんな所で藍川さんと一緒にいるところ、見られたくないな。
「ねえ、琥太郎くん。食品売り場、こっちじゃない?」
「ああ、広いから迷いやすいね」
今気づいたけど、絶対料理させられるじゃん。自慢しなきゃ良かった……
「何買うの?」
「望月先輩から言われてるのは――小麦粉、砂糖、卵、バター、牛乳、あと肉とか」
この材料ならケーキだろう。
肉まで豪勢すぎるが、望月先輩の自腹だし文句なしだ。
***
材料を次々と籠に入れる。藍川さんが何かを見上げて凝視している。
「どうしたの、藍川さん?」
「見て、琥太郎くん。観覧車だよ」
藍川さんは子供みたいに窓の外を見上げている。
「確かに、遊園地でもないのに観覧車は珍しいね」
――乗りたいんだな。八百円か……まあ、怒られないだろう。
「わかった。一回だけだよ?」
屋上に上がり、俺は小遣いを出して観覧車に乗った。
***
夕焼けが染まる空、観覧車のライトが夜景に映える。
……カップルみたいだな。
狭いゴンドラの中、藍川さんの肩がすぐ隣。
窓に映る横顔が妙に綺麗で、変な妄想を振り払うように口を開いた。
「藍川さん、本当に負けず嫌いだね」
「それ琥太郎くんが言う?私は琥太郎くんの方が負けず嫌いだと思うけどな〜」
「いや、藍川さんは常時発動してるからでしょ。多少悔しいけど……藍川さんほどじゃない」
「いーや、琥太郎くんの方が負けず嫌いだね」
藍川さんは外の景色を見て息を吐く。
「何故か、藍川さんにだけは負けたくないんだ」
「何それ」
微笑む藍川さん。
こんな近くで見る藍川さんの笑顔初めてだな。
「私はボドゲ部に入って高校生活めっちゃ楽しい。琥太郎くんは?」
「俺も楽し――」
「見て、琥太郎くん。凄く綺麗な景色だから」
窓の外を見る――息を呑むほど綺麗な夜景だった。
街の光が川に反射して、宝石みたいに輝いていた。
「こんな夜景を可愛い私と見られて嬉しいでしょ?」
「……そうだね。今度は泰葉と見に行きたいな」
藍川さん、口を尖らせる。
「あー!それは駄目だよ!二人きりで乗ってるのに他の子と行きたいとか言語道断!」
「え、妹でも駄目なのか?」
「駄目です!」
女心は難しい……
「じゃあ、どうすればいいの?」
頬を赤らめる藍川さん。
「そんなの自分で考えてよ!とにかく今の琥太郎くんの行動は藍川ポイントマイナス一万」
「下げすぎじゃない?あと何、藍川ポイントって」
頂上が近づいても、藍川さんは機嫌が悪そうだ。
「私と琥太郎くんは友達なんだから、もっと学校で気楽に喋ってよ」
「友達?」
「逆に何だと思ってたの?」
「一緒のボドゲ部でやる仲間?」
藍川さん、頭を抱えて唖然。
「じゃあ、改めて言うけど……俺と友達でいい?」
「もう、とっくに友達だと思ってたわ!」
内心ガッツポーズ。
友達が増えた!
「私と琥太郎くんは好敵手なの。ボドゲでは切磋琢磨してるライバルたけど、普段は友達」
「昨日の敵は今日の友じゃない?」
「うるさい!藍川ポイントマイナス一億!」
……そのポイント制度、結局何なんだよ。
ピロン。
俺の携帯から誰かからのメッセージが送られてくる。
――えーと、望月先輩からだ。
メッセージと地図が送られていた。
内容は。
「ここに集合」とだけ書いてある。
……ここって。
そこは見慣れた地形。
――俺の家じゃん!
***
急いで帰宅すると、西條家の外装はピカピカ光り輝いている。
……あれだけボドゲ部は入れないでっていったのにもう泰葉のバカ。
今日一日は口聞いてやんないもんね。
家の玄関の前。
……開けるか。
ガチャ。
「ようこそボドゲ部へ!!」
クラッカーの音が鳴り響く。
俺はあまりに予想外だった為、腰抜かす。
そこにはパーティーようハットを被った望月先輩、有栖先輩含め首謀者の泰葉までが笑顔で出迎えていた。
「何なんですか」
「部長の復帰祝いと一年の入部祝いだ!」
望月先輩がノリノリだ。
いや、そんなことより何で俺の家なんだ。
――はぁ、でも。考えたって遅いか。
せめても、今日だけはボドゲ部メンバーの出禁を解除しようじゃないか。
「じゃあ、料理作ってきます」
望月先輩はグーサイン。
あ、やっぱ俺が作る流れなのね。
有栖先輩は「ありがとね」と労いの言葉をかけてくれるが正直猫の手でも借りたいくらいだな――チラッ。
俺は泰葉と視線を交わす。
これでも、生まれてからの兄妹だ。
こんな何気ないジェスチャーでも通じてしまうのだ。
俺と泰葉は食卓へと向かう。
***
藍川陽葵
「琥太郎くんってさ料理もできるんだね。多才で羨ましいよ」
有栖先輩は望月先輩のすぐ真横に座ってお茶を飲んでいる。
これで付き合ってないの普通にバグでしょ。
「あ!有栖先輩。これ琥太郎くんから」
私は琥太郎くんから預かっていた有栖先輩激似のぬいぐるみを渡す。
すると、有栖先輩は目を輝かせて。
「これ、琥太郎くんが作ったのかい?本当に彼には驚かされるよ」
そんなに凄いか?
私だってやれば裁縫だって料理だって出来るんだから。
……本当に出来るからね!?
私は出されたお茶を啜っていると。
「それにしてもボドゲ部四人になったのか。随分増えたねって素直に言いたいんだけどなぁ。欲を言うともう一人が二人欲しいよね」
「そうですね。まあ、その内入ってくるんじゃないですか?」
「だといいんだけどね……」
ピンポンーン。
不意にチャイムが鳴る。
うん?
私は家から玄関にいる人影を見る――え?この人って。
私は大急ぎで台所に向かう。
「ちょちょ、琥太郎くん。げ、玄関にいるの」
「え?そんなに慌ててどうしたの?」
「だから、外にいるのよ――釜石真白が」




