じじいの祭り
オニギニワッチョイ
なんじゃこの怪文書は?
ワシが王都に行っとる間に見事に外堀は埋められておった
宴の準備が盛大にされていてDランクの魔獣であるグレートバッファローの肉まで用意されておった
『グレートバッファロー:Dランクの魔獣、その強靭な肉体から繰り出される突出は城の城壁も物ともしないと言われています また、その肉はとても美味でありこの大陸の五大グルメの一つとされ珍重されています』 とガイダンスさんが教えてくれた
とんでもないのぅ
勿論、この肉を提供するに足る貴賓やワシに縁のある人も招待されておる
「カタナ様なら何時かやってくださると思っておりましたともハイ」
手をニギニギしながら男が挨拶をしてくる
領主バーパスの居城のある街、ガーディアスで嘆きの森の木材を独占的に卸しておる材木商、ウド商会の主のウドじゃ
「ええ、何れはお父上の様にオーバーランクの魔獣の単独撃破もしてくださる事でしょうともハイ」
ウドは続ける
勇者パーティは皆凄いのぅ
「水源が確保出来次第ウド商会の支店が作れそうですよ、ウドさん」
ワシはウドに長らく要請を受けていたウド商会のラゴウ村支店開業の目処が立った事を告げる
近隣の魔獣や魔族が強すぎる為に難色を示して居ったがまあ良いじゃろう
「おお、それはありがたいですなぁ」
ウドは手をニギニギさせさらに身体をクネクネしだす
気持ち悪いのぅ
「それと、例のマース商会の件ですが商工会への根回しは概ね完了しました、ハイ」
ウドはそれまでの気持ち悪い動きを止めて急に真面目になる
「マースの奴は元々評判のいい商人でしたからね、以前カタナ様が一斉検挙で捕まえた連中が消えたら反対する連中はみんな黙りましたよ」
ウドが笑いながら言う
「それに私らもあの一件には思うところがありましたので協力させて頂いて多少でも助けになればとは思っております、ハイ」
そう言うとウドはペコリと頭を下げて去っていく
こうやってワシらの行動も多少はよい方向に向かってくれたら良いのぅ
「…で、忙しい俺をこんな片田舎に呼んだのか?」
ワシらと一日遅れで到着したエルフの鍛冶職人のスミスと隣には革細工職人のジュウゾウが居る
「申し訳ありません、村の者が勝手を言いまして」
ワシは苦笑いをする
「俺の工房、こっちに移して構わんな?」
スミスが唐突にぶっ込んで来る
「都会は煩くて敵わん、引っ越しを考えていたところだ」
スミスは悪びれもなく言う
どうやら拒否権は無いらしい
「ではジュウゾウさんもどうですか?」
隣のジュウゾウにワシは声を掛ける
「え、いや…」
ジュウゾウは思うところがあるのか口ごもる
「今ある店は販売店にしてしまって工房をこっちに移すのも一つの手ですよ」
これから嘆きの森の魔獣の革を一手に卸すのじゃから手狭な町工場では何れ限界も来るじゃろう
「お二人が宜しければ工場作りから支援させて頂きますよ」
ワシは二人に提案する
十分その価値はある
「良いだろう、見返りはなんだ?」
流石は長生きしとるエルフじゃ、話が早くて助かるのぅ
「村の鍛冶屋として…」
ワシがそこまで言うとスミスがワシを制止する
「流石にそれは調子に乗りすぎだ」
怒られてしもうた
「弟子の修行の片手間で良ければ弟子にやらせる、それでいいか?」
スミスが妥協案を提示する
まあ、ワシは鍛冶職人が居てくれたらそれで良いのじゃが
「お弟子さんが居るとは以外でした」
ワシは思わず本音が出る
「俺を何だと思ってるんだ…」
スミスは呆れて言葉も出ないといった風じゃ
「あの…」
ジュウゾウが手を上げる
「はい、ジュウゾウくん」
ワシは軽快にジュウゾウの発言を促す
「私は職人で商人ではありません、出来たら商品は商人にお任せしたいのですが…」
ジュウゾウの言う事も尤もじゃ
「旦那、それなら俺が扱いましょうか?」
スミスとジュウゾウの二人の後ろから別の男が声を掛けてくる
ボサボサの赤髪
小間切れアッシェの異名を持つヤクザもんじゃ
外道貴族の理不尽な仕打ちで家族を失ったがそいつらをいい感じに潰せそうなので表の社会に復帰する予定じゃ
「マース商会の目玉としてジュウゾウさんの皮製品とスミスさんのお弟子さんの武器や工具を売る、悪くないですね」
悪くないどころかエラいこっちゃ
「ムムっ、カタナ様、お金の臭いがしますぞっ、ハイっ」
金の臭いに引き寄せられたウドが物凄い勢いで手をニギニギしてすっとんでくるのじゃった




