じじいのアラカルト
話は少し前に遡る
Bランクの魔獣の単独撃破の報がソーディアス全土を駆け巡る
パーティによる撃破でもちょっとした騒ぎになるのじゃから単独撃破ともなると大騒ぎじゃ
またカタナと差がついた、ぼくとあいつで何が違うって言うんだ?
レバニラくんことライバは大賢人マナ・ライの指導の下、何故か畑を耕していた
「大賢人様、農作業をしていて強くなれるのでしょうか?」
手を止めずライバは訪ねる
手を止めると怒られるからだ
ライバはそれを幾度と経験した
「おうよ、俺様に任せておけばお前は強くなれるぜ」
マナは立派な白髭を撫でながら答える
「なんで野良仕事させられてるか解らない内は無理だがな」
そう言ってマナはケラケラと笑う
農作業に理由なんてあるのだろうか?
ライバは当たり前の疑問を持つ
場所は移ってラゴウ村の集会所
「やはり若様の偉業を称えねばならぬと思うのですが、どうですかなガイ殿」
薄暗い会議室で男が二人
ラゴウ村の村長ソンと相談役のガイである
「盛大に祝うのは当たり前としてどうされますかソン殿?」
二人とも悪そうな顔をして相談をしていた
更に場所は移る
次は王都の革工房ジュウゾウ
「えぇっ!?私にこんな物を加工しろって言うんですか?」
大声を挙げたのはジュウゾウ、不慮の事故で日本からこの世界に飛ばされて来た革職人じゃ
ナレーションが変わった?
それはそうじゃ
「真っ二つにしてしまったので剥製は難しいと思うので半分をタペストリーに、残りは私が大きくなったら使いたいので保存しておいてください」
ワシがその場に居るからじゃ
ワシは王噛の革を加工して貰えぬ物かと相談に来ていたのじゃ
「…私が持ってる道具ではちょっと歯が立ちませんよ…」
ジュウゾウがサンプルの革の欠片を見て洩らす
それはそうなのじゃが
何せワシの魂喰らいが弾かれたからのぅ…
魂喰らい…そうじゃ
ピコーンと頭の上で電球が光る
「で、なんで俺のところに来てるんだ?」
ワシはジュウゾウを連れてただ一人知るエルフのところに来た
「お久し振りですスミスさん」
ワシはぷりちーに笑う
彼の名はスミス・ブラウニー
当代随一の武器職人じゃ
勇者や騎士ジョン、父である剣士パーパスなどの勇者やパーティの武器を打ったのは彼の師にあたる男じゃ
「見ての通り俺は忙しいのだがな」
窓の外に目をやると相変わらず順番待ちをしている彼のファンでごった返しておる
現役の内に完成したらマシな方などと冗談で言われておるくらい注文が殺到する人気の鍛冶職人じゃ
「はい、彼の使う革細工の工具を作って頂きたくて」
ワシは物怖じせずニコニコと笑って答える
それを見たジュウゾウはワタワタしておる
まあ、スミス・ブラウニーの工具なんぞ前代未聞じゃろうからのぅ
「あのなぁ…」
自分の作る物の価値を客観的に知るスミスは頭を抱える
「魂喰らい、BランクどころかCランクにも通用しませんでしたよ」
ワシはそんな呆れているエルフに言う
「なに?」
それを聞いたスミスの表情が変わる
「それどころかオニも斬りましたが瞬時に回復されてしまいましたし、これ本当に大丈夫なんですか?」
ワシは更に煽る
いや、実際にはワシがある程度身体が出来上がるまで基礎トレーニングもしない方針なだけなのじゃが
「ぐぬぬ…」
自信を持って渡した武器が通用しないと聞いたスミスの表情が険しくなる
「お前がベビーフェンリルを倒したという話は聞いているがその男と何の関係がある?」
スミスは苛立ちを抑えながら訪ねる
「そのベビーフェンリルの革の加工をお願いしたのですが【並みの】工具では歯が立たないらしく…」
ワシは並みという言葉を殊更強調して言う
「そこの男、道具を見せてみろ」
スミスはジュウゾウから道具の入った革のカバンを取り上げる
「ほう、これがお前達の世界の工具か…成る程、よく手入れがされている…良い道具だ…」
スミスはジュウゾウの道具を見て感心したかの様に言う
「良いだろう、俺の作った物が野良犬如きに通用など有ってはならんからな」
そう言ってスミスは工具の製作を了承した
「あの、お代は…」
ジュウゾウ恐る恐る訪ねる
何せスミスの武器は国一つ買えると言われる額で取引される
まず作らない工具なんぞ幾らするやら
「要らん、その代わり俺にも道具を入れる革のカバンを作れ、気に入った」
スミスはそう言うとジュウゾウから奪い取った道具入れを還す
名付けてスミスは超一流の職人じゃからジュウゾウを引き合わせればお互いの利になる作戦大成功じゃ




