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じじいの里帰り

またしてもワシの知らない記憶が…


王都から数日、村外れと呼ぶには些か大きな街道が姿を表す

その街道の両脇は見渡す限りの芋畑が広がる

「自慢の芋畑です、どうですか?」

始めて見る見渡す限りの芋畑に感心するレバニラくんにワシは問う

「これが辺境伯の仕事…」

レバニラくんが固唾を飲む


パーパス辺境伯なんてただのお飾りだと思っていた

しかし目の前に広がる芋…自分達の食卓でも頻繁に出てくるそれを作ったのがカタナの父だという

彼は負けた気がした

武功でも政治でも父はカタナの父に勝てないのか…

そう思えた


しばらく馬車に揺られらと簡単な関所が現れる

人が増えれば魔族の襲来に備えなければならないからのぅ

昔はこんなもん必要無かったのじゃが

関所を抜けるとそこにはナナシ村…最早村と呼べる様な規模では無い物流の拠点がそこにはあった

パーパスの発明した空気を暖める魔道具で劇的に農業環境が改善した結果、痩せていたと思われていた領地はソーディアスでも指折りの農業の拠点となっていたのじゃ

「我が父ながら何時見てもこの光景には言葉が出ません」

ワシ自身、何もない貧しい田舎の村でのんびり育てられたのじゃ、見る度に大きくなっていく故郷というのは何とも言えぬ寂しさはがるのぅ

ワシらはそのまま村に入り視察を始める

「いいですかレバニラくん、ここでは住民と僕は家族みたいな付き合いをしていますので彼らの無礼な行動は許されています、無礼で返すのは構いませんが罰を与えようという考えはやめてくださいね」

ワシは最初にレバニラくんに釘を刺しておく

そうしなければ

「おいカタナ、久し振りじゃないか!かくれんぼで負けたから逃げたのかと思ったぞ」

三軒隣の幼なじみのガキ大将が声を掛けてくる

「かけっこじゃ僕に勝てないクセに偉そうだぞボス」

ワシもガキ大将に笑顔で返す

「王族相手に不敬では無いのか?それで良いのか?」

青い顔でずっとだまっていたレバニラくんがワシに声をかける

「父上が赴任してきた時に右も左も解らなかった頃から支えてくれた人達ですから、僕も産まれて来た時に彼のお婆ちゃんに取り上げられたんですよ」

ワシは自慢の村民の事を紹介する

多分距離感が他所と違うのはワシでも解る

「ヤベ、お客様が居るなら教えてくださいよカタナ様」

ガキ大将の態度が急に改まる

一応彼らもワシやパーパスが恥をかかない様に気は回してくれていたのじゃ

「構いませんよ、彼も僕の友達ですから」

ワシはガキ大将に笑顔で返す

「と…友達?」

ワシの言葉にレバニラくんがあたふたする

友達、嫌じゃったかのぅ

「友達、嫌でしたか?」 

ワシはレバニラくんの顔を覗き込み上目遣いでウルウルしてみせる

これぞ(自称)子供のふりスキル泣き脅し五秒前じゃ

「お…お前がどうしてもっていうなら…なってやってもいい…」

レバニラくんは恥ずかしいのかそっぽを向いて言う

まだ改良が必要かのぅ

「おう、じゃあ俺達も友達だなよろしくな!」

そう言うとガキ大将は笑顔でどこかに行ってしまった

レバニラくんは突然増えた友達にどう対応して良いやら解らずしどろもどろになっておる

まあ、貴族社会なんぞ社交的な人付き合いくらいしか基本せんから友達などおらんのじゃろうな

気持ちは解らんでは無い

こうしてワシらは短い視察を終えランス領の中心地であるガーデァアスを目指すのじゃった

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