じじいと救済
見送るアッシェの背中が灰色に変わっていく
思いの外反応が早いのぅ
「あんたが呼んだ様なもんでしょ」
母神…この世界の統括者である最高神ワルド様じゃ
「御足労をお掛けしておりす、ところでコボルトの子は対象外ですかのぅ?」
ワシはワルド様に問う
「そうねぇ…妖魔ねぇ…」
流石のワルド様にも妖魔に対する偏見があるのかのぅ?
「百聞は一見に如かずと申します、コボルトの子供を見てやってくだされ」
ワシはワルド様にコボルトの子供を見て貰える様に促す
「まあ、あんたがそこまで言うなら構わないけど…」
ワルド様はそう言うと近くにおったコボルトの子供に目をやる
「…あら、あらあら、あらあらあらあら」
ワルド様の目がハートになっておる
「撫でて良いかしら?」
ワルド様がワシの方を向き許可を得ようとする
「構いませぬがその子に変な加護とか与えないでくだされよ?」
無駄じゃとは思うのじゃが一応釘を刺す
「解ってるわよそんな事」
ワルド様はそう言うと子コボルトの頭を一撫でする
「はぅ~柔らかくてモフモフ、それにこの愛らしさは何?新しい扉開いちゃいそう…」
ワルド様はその毛並みの良さに恍惚の表情を浮かべる
「妖魔である事を理由にその子らを狩って皮を剥ぐ輩がおるそうです、ワルド様がビシッと言ってくださると助かるのですが」
ワシはコボルト達の窮状を訴える
「異端…」
ワルド様がボソリと物騒なワードを呟く
「こんな可愛い天使の皮を剥ぐ?あり得ないわ!」
ワルド様が憤って怒り出す
「良いわ、ソッコー神託で全世界にこの子達を種族として正式に認めさせるわ」
ワルド様、こういう話では頼もしいのぅ
「何時だって私は頼もしいわよ、それにこの子に触れてこの子達の性質は理解したわ」
ワルド様は続ける
「出自が魔素によるってだけで穏和だしヒトに害なんて加えてないじゃない、普通に合格よ」
ワルド様は慈愛に満ちた表情で子コボルトの額にキスをして言う
変な加護を与えんで欲しいのぅ
「ではそれに際して一つワシからお願いがあります」
ワシはワルド様に提案をする
「どうせあんたは自分の為にお願いする奴じゃないしいいわ、聞いてあげる」
ワルド様は答える
「ありがとうございます、コボルトにヒトの標準言語をお与えくだされ、会話が出来れば幾分かはマシになりましょう」
ワシはこの数日で村人とコボルト達のコミュニケーションの苦労を思って提案する
「それいいアイデアね、採用よ」
そう言うとワルド様は手を組み祈る様なポーズを取る
その姿はまるで女神様の様に美しいのぅ
「女神様よ」
ワルド様は祈りを捧げながらワシの思考にツッコミを入れてくる
「はい終わり、神託も済ませたしついでにコボルト達の知能も少しだけ上げといたわ」
ワルド様は言う
世界への神託をこの短時間でワシにツッコミを入れながらするとは流石じゃのぅ
「色々と感謝致しますワルド様」
ワシは礼を言う
「本当よ、あんたくらいよ私を呼びつける奴なんて」
ワルド様は楽しそうに言う
「でも良いものを見させて貰ったから今回は赦してあげるわよ」
ワルド様はそう言うと徐々に透明になっていく
「そうそう、ここに来たついでに言っとくけどメイスイがバカやったら何時でも連れ戻すから連絡頂戴ね」
ワルド様、水の神のメイスイ様がここに逃げ込んでるの知っとったんじゃのぅ…
時が止まっているはずの空間で湖が一瞬波打つ
その日、世界はコボルトを種族として正式に認め狩りは殺人とみなされる様になった
コボルトが突如としてヒトの言葉を話す様になり全ては母神様の奇跡として扱われた
じゃが多くの神学者達が頭を悩ませる事があった
神託の中にある女神様よという言葉の意味が解らないからじゃ
その後数百年間に渡り議論のなされる問題に発展していったのはまた別の話じゃ
ワシ、何かしてしまったかのぅ




