じじいとコボルト
流石に直帰という訳にも行かず暫く様子を見る事になった
勢いで許可はした物の、叔父であり国王のジョンには何と言い訳をした物かのぅ…
途方にくれておったか幾つか解った事もある
コボルトは臆病なだけで決して弱くはない
鍛え方次第ではゴブリン程度なら簡単に撃退出来るじゃろう
それに鼻が利くので嘆きの森の野草採りが格段に捗っとる様じゃ
街の薬師に売れば利益は莫大じゃろうな
それとキノコが大好物でキノコを探してくるのも上手い
どうやら懐かれた様で高級キノコを沢山献上された
これをジョンに贈れば多少は心証も良くなるかも知れんのぅ
「で、カタナ様は何をなさっておられるのですか?」
村の代表のソンがワシに問う
「何と言いますか…」
ワシは気が付くとコボルトをモフっておった
ちょっとばかし獣臭いのを除くとその手触りは格別じゃ
『コボルトの毛皮を欲しがる輩はその手触りが目当ての様ですが生きているコボルトの方が何倍も手触りに優れていると思われます』
ガイダンスさんが言う
そういうもんなのじゃろうな
「ただ獣臭いので風呂に入った方が良いかも知れませんね」
この世界、例によって異世界人の影響で風呂に入る文化というのはある
まあ、水が豊富な地域でのみじゃが
「しかし、風呂というのは贅沢品でして庶民の我々には到底手が出ません」
ソンは言う
そうじゃのぅ
「では湖の豊富な水を使ってみんなで利用出来る大衆浴場を作りましょう」
ワシはソンに提案する
「幸い薪になる木は無尽蔵に村の目の前に広がっておりますからな、では村の者と相談して取り掛かってみましょう」
ソンはそう言うと無限モフモフを続けるワシを置いて出て行ってしまう
「残念ですが私も仕事に戻らないといけないのでモフモフは終わりです」
ソンに呆れられ仕方なくワシも仕事をする事にした
村の視察もせんといかんからのぅ
ワシは仮住まいにしておる集会所から出ると人だかりが出来ておった
手には何やら手持ちの看板を持っとるもんが見られる
内容は魔族の受け入れ反対だの移民阻止だのと書いておる
集まっとる連中も似た様な事を喚いておる
「これは何の騒ぎですか?」
ワシは彼等には問うたが話が通じず何が何やらじゃ
仕方がないのでワシは腰のキーホルダー状の軍刀を実体化する
「お黙りなさい」
ちょっと、ほんのちょっぴりじゃが殺気を群衆にあてる
ワシの殺気に気圧され群衆は黙る
「宜しい」
ワシはそう言うと軍刀をキーホルダーに戻して腰に戻す
「代表の方はどちらになりますか?」
ワシは問うが全員黙って何も言わない
まあ、王族に直訴なんぞ普通は首が飛ぶからのぅ
「安心してください、別に処罰しようという訳ではありません、状況が飲み込めずお話しが聞きたいだけですので」
ワシの言葉にようやっと一人の女性が出てくる
「私がこの市民団体の代表です」
女性は言う
ガイダンスさん、誰だか解りますかな?
『他所から来た新しい住人の一人でイライザという人物で、異世界の平和人権思想に染まっている様です』
ガイダンスさんが教えてくれる
なる程のぅ
「ではお尋ねしますがイライザさん、これはどういう事ですか?」
ワシは問うた
「何故私の名を?…我々にはこの村で平穏に生きる権利があります、只でさえおぞましいオニ共が居るのにその上あんなバケモノまで受け入れられてしまってはおちおち生活も出来ません」
名乗る前にワシに名前を言われて一瞬戸惑う仕草を見せるも毅然とした態度に戻る
「おぞましい、ですか…」
ワシはちょっぴりイラついた
この手の政治ごっこが好きな連中はどうしてこうヒステリックなのかのぅ
ガイダンスさん、この集団の中に旧村民はどのくらいおるのじゃ?
『0です、皆後からこの村に来た者です』
ガイダンスさんが教えてくれる
「権利も結構ですが後から来たあなた方が先住のオニに無礼な言動を取るのは納得しかねますよ」
さて、どうした物かのぅ




