じじいと難民
馬車に揺られる事半月余り
ようやっとラゴウ村にたどり着く
村の代表のソンの出迎えでワシは村の集会所にやって来た
「本当に来てくだり助かりました」
老人の見た目をした若い戦闘種族オニの特殊個体であるソンは言う
オニはかつて栄えた超科学文明が生み出した戦闘用の合成種族じゃ
今は神の加護を受けた普通の種族じゃが
「早速入植希望者の代表に合わせて頂けますか?」
ワシは早々にソンに要件を問う
「呼んでおりますので暫しお待ちを」
ソンは言う
そして少しして現れたのは人ならざる種族じゃった
全身モフモフで犬の顔をした人みたいな種族じゃ、初めて見たのぅ
『この種族はコボルトと言い妖魔の類いですが、基本的に臆病で人に害を成す事はありません』
ガイダンスさんが教えてくれる
妖魔は魔素の影響で獣が魔物化した連中の内、高い知能と繁殖能力を持ち種族化した魔物の中でも最下級ランクの魔族の事じゃ
「あなた達は何故ここに?」
ワシはコボルトの代表に問う
「我ラ困窮、ココ誰でも受ケ入レル聞ク、我ラノ子、助ケタイ」
大分片言な中央大陸の標準語でコボルトの代表は窮状を訴える
理解は出来るのじゃがどうにもまどろっこしくていかんのぅ
『異世界転移・転生者にデフォルトで用意されている自動翻訳機能で妖魔語による会話が可能ですがそちらに切り替えますか?』
ガイダンスさんが提案をしてくれる
なる程、それでワシは文字を理解出来たり話せたりしたのじゃな
では頼みますじゃ
ワシはガイダンスさんにお願いする
「あなた方の言葉は多少なら使えますのであなた方の言葉で話をされて大丈夫ですよ」
ワシは凡妖魔語という彼らの言葉で話しかける
「我らの言葉が解るとはなんと聡明なお方なのだろうか」
コボルトの代表か感嘆の声を挙げる
それを威嚇と捉えた護衛に着いていたオニ達か一瞬身構える
ワシはそれを片手で制止して話を続ける
「失礼、彼らはあなた方の言葉が通じておりませんので」
ワシはコボルトの代表に謝意を示して話を続ける
「我々はその出自の為に他の妖魔や魔人の様な邪悪な種族と勘違いされ長い間迫害を受けて来ました、ですが我々はヒトが思う程邪悪でも強くもありません」
コボルトの代表は続ける
「噂では似た様に迫害を受けているオニ達か平和に暮らしていると聞いております、もし我々を住まわせてくださると言うのなら大人達の毛皮を皆さんに差し出しても構いません、どうか子供達だけでも」
コボルトの代表は壮絶な覚悟で言う
コボルトの毛皮にそんな大層な価値があるのかのぅ?
『コボルトの毛皮は上質であり、それを目的とした狩りが行われる事もあります』
ワシはガイダンスさんが言った事に憤りを覚えた
同じ知性を持った生き物を狩って皮を剥ぐじゃと?
ガイダンスさん、嘆きの森の魔獣の毛皮とではどっちが価値が有るのじゃ?
『比較するまでも無く森の魔獣の毛皮の方が価値が高いです』
ガイダンスさんが教えてくれる
「心配せずとも大人の毛皮は必要ありません、幾つか条件はありますが皆さんを受け入れますよ」
本来なら妖魔との共存など王の許可が必要な案件じゃが事後報告で構わん
彼らがここまでの覚悟を見せたのならそれに報いねばなるまい
「条件とは?」
コボルトの代表は問う
「一つ、暫くは監視が付きます、一つ、大変でしょうが中央大陸標準語をもう少し勉強して貰います、最後に皆さんにも働いて貰います」
ワシは三つの条件を言う
「たったそれだけなのですか?財宝や毛皮とは言わないのですか?」
コボルトの代表は答える
財宝とは何じゃろうか?
『コボルトは土木作業がドワーフより上手い為、地中の金銀や宝石を溜め込んでいると言う都市伝説がありますが、実際には彼等には採掘の技術や知識はなく希に拾う事はあっても溜め込む程には持ってはいません』
ガイダンスさんが教えてくれる
なる程のぅ
「必要ありません、土木作業が得意と聞いております、その腕をどうかこの村の発展の為に貸してください」
ワシはコボルトの代表に頭を下げる
「頭を上げてください、解りました我々は命尽きるまでこの村の為に働かせて貰います」
コボルトの代表は力強く答える
「ダメです」
ワシはそれを拒絶する
まさかの反応にコボルトの代表は言葉を失う
「のんびり楽しくやりましょう、命を粗末に扱ったらダメですよ」
ワシはニッコリと微笑んで言う
「我等コボルト、あなたに子々孫々まで着いていきます」
コボルトの代表はここで初めて穏和な顔で答えてくれるのじゃった




