じじいの反省会
学校が終わりワシは今バンゾーのところにおる
昼間の居眠りの件についてのお説教じゃ
「良いですかバンゾーくん、冒険者は不眠不休の強行軍も時に必要になりますし敵が睡眠をさせる能力を使ってくる可能性もあります、眠気に負けていては勤まりませんよ?」
バンゾーはワシの言葉を露骨に嫌そうに聞いておる
「まずは我慢を覚えるところから始めましょう」
最早保護者目線じゃな、これでは
「解ってるよそんな事くらい…」
バンゾーもまた親にお説教されている子供の様な反応を示す
「じゃあ明日からは我慢を覚える為のトレーニングを始める事にします、あと居眠り見付けたら夕方のこの時間はたっぷり座学…お勉強です」
ワシは悪魔の様に微笑む
「うげぇ~、そりゃ無いだろ」
バンゾーはお勉強と聞いて血の気の引く様な顔をする
「では居眠りはしない事です、それに明日は一日バンゾーくんも好きそうな体力検査ですよ」
明日は体力測定をやり、みんな大好き予防接種という予定じゃな
どうせバンゾーは明日の予定など知らんじゃろうな
「おお、そうだったそうだった、俺だって身体動かせてたら寝たりしないぞ」
ドンとバンゾーは胸を張るが、出来れば勉強の日も寝ないで欲しいのじゃがのぅ
「それは何よりです、じゃあ早速、夕御飯までは座学でもしましょうか」
ワシはニッコリと笑いながら言うとバンゾーは嫌そうな顔をする
「ああ、今日のは軽めですよ、時間もそれ程無いですしね」
罰としての座学ではないから今日はバンゾーが好きそうな話でもしてやろうかと思ったのじゃがのぅ
「バンゾーくんはどんな武器が好きですか?」
ワシはバンゾーに問う
座学というよりは男の子が大好きな話題じゃな
「やっぱ剣だろ、勇敢な戦士なら剣一択だよ」
ワシの質問を聞いたバンゾーが一転して目をキラキラ輝かせて語り出す
「剣は見た目が格好良いですからね、ただ習得に物凄く努力が必要です」
ワシはバンゾーの回答に対して現実を伝える
「俺だって頑張ればそのくらい…」
スキルとやらが可視化されとる世界じゃ、自分に才能が無い事は嫌でも自覚するじゃろう
「ぼくはね、バンゾーくんが勇敢な戦士になれないって言ってる訳じゃ無いんですよ」
そう言うとワシは私物のノートとペンを出す
「バンゾーくん、クワは振るった事ありますか?」
ワシはバンゾーに問う
「農家の子だから当たり前だろ?」
僅か八歳でクワを振るうのが当たり前というのは厳しい世界なのかのぅ
「その動きを武器に役立てる事が出来るとしたら?」
ワシはこのスキルとやらはもっと柔軟なのではないかと思っておる
そしてバンゾーに解りやすくクワを振るう人の絵を描いてみせる
「絵、上手いな」
バンゾーは褒めるがそこじゃないのじゃよ
「でもおかしいぞ、クワの先端に刃が付いてないんじゃないか?それじゃ他だの棒だよ」
バンゾーは絵の不自然さを指摘する
「そうですね、ではこの棒をこうしたら…」
ワシは棒の先端に斧の刃を書き加える
「おおっ」
バンゾーはその絵を見てワシの意図を察した様じゃ
「武器のスキルが無いのなら敵を耕すつもりで武器を振るうと言うのはどうでしょうか?」
ワシはバンゾーに提案する
これも確証がある訳では無いのじゃが
そこのところはどうじゃろうか、ガイダンスさん?
『敵を畑と見立てて斧で耕す様に攻撃をするというのはスキルの運用よりもイメージが重要になると考えられます、実戦的な訓練と農作業をやりながらのイメージトレーニングを行えば高確率で扱えると思われます』
ガイダンスさんが親切に教えてくれる
ありがとうガイダンスさん
『お役に立てて何よりです、またお声を掛けてください』
そう言うとガイダンスさんの気配は消える
「取り敢えずお小遣い稼ぎも兼ねて農作業の手伝いをしつつぼくの基礎トレーニングを受けると言うのはどうでしょうか?斧だって立派な戦士の武器ですよ」
おそらくはバンゾーは剣では大成は出来んじゃろう、じゃが斧で敵を耕せるなら農作業のスキルがそのまま武器スキルになりうる
「確かに村に来てた活劇の戦士もカッケェ斧で戦ってた、俺もそれにする!」
自らの才能の無さを逆手に取れるかも知れないと言う希望がバンゾーの思いを一歩前進させた瞬間じゃった




