表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/62

57話

 「何だったんだ、あれは?」


 人が塵になって死んでしまった。

 決して炭になったわけではない。体が崩れ始めボロボロになっていった。

 あとはまとっていた炎が焼いてしまい、屑にしかなっていない。

 最初から殺すつもりだったから、どうでもいい。

 子供を誘拐する奴に同情の余地など皆無である。


 それよりゾイグさんがかなりの重傷を負ってしまった。

 自分より大きい岩や樹木を受け止めすぎた。

 倒れているゾイグさんに駆け寄り、安否を確認する。


 「ゾイグさん、大丈夫ですか?助かりました」


 「……気にするな。役目を果たしただけだ」


 回復薬を差し出し服用してもらう。

 内出血と骨の損傷が激しい。しばらくは戦えないかもしれない。


 「ゆっくり休んでください」


 「そうさせてもらおう」


 生徒たちに支えられて校舎に戻って行った。


 「ノールは大丈夫か?」


 ゾイグさんと同じく俺への攻撃を防いでいた。

 攻撃を受けていた印象はなかったが、『付与魔法』をかけていなかった。


 「あ、ああ。……大丈夫」


 短剣をボーっと眺めて曖昧な返事を返す。

 見たところ怪我はなさそうだから安心か。


 「大丈夫ならいい。助かった」


 「ん」


 フラフラしながらノールも校舎へと向かって行ってしまった。

 大丈夫なのか?


 マリシアやアイラにアイビス、シズクもこっちに来る。


 「いや~、それにしてもすごい魔法だったね。どっかーん!ってね!」


 「はい!あれを見たのは2回目です」


 アイラが元気よく答えてくれる。


 「いや、グラウンド破壊してどうするのよ……」


 「……ネク兄ぃ凄いっす」


 完全に爆発したことででっかい穴が開いてしまった。

 『天通眼』の時よりは小規模だが、それでもこれはない。


 「あいつかなり強かったからな。一人できたのはかなり馬鹿だったが」


 「そうだね~。もっと人数いたら面倒だったよ。こっちの戦力を把握してなかったみたいだね」


 「そうみたいだな」


 正直、地面なんか通さず直接爆弾を飛ばそうかとも思ったが、あいつの操作圏内に入った時にどうなるか分からなかった。

 それに、物体を操作するのに目視が必須だったみたいで、地中を通せば邪魔が入る事は無いと考えた。

 それを確認するため、火球を3つ時間差で飛ばして顔と目が動いたのを実証したわけだ。


 勝因はそれとあいつが馬鹿だっただけだ。

 スキルを過信しすぎて、定石を使わなかった。

 優秀な前衛が居れば過不足なく『操作魔法』を発揮できたはずだ。

 俺の場合ゾイグさんが完璧な働きをしたおかげで、集中して魔法を使う事が出来た。

 ま、人数の差だ。戦いなんて多い方が勝つ。


 「―――――ッ!」


 シズクが体を跳ね上げ硬直する。

 『未来視』が発動した。


 「何が視えたの?シズクちゃん?」


 マリシアが優しく尋ねる。意味無い事かもしれんぞ。


 「……また、来るみたいっす」


 再度襲撃があるみたいだ。





 また大部屋に集まり会議を始める。


 「という事で、3日後にまた襲撃があるッス」


 「はい、もっと詳しく」


 今から言おうとしたのに、みたいな顔をされ不満げに睨まれる。

 手で払ってそんなものは無視するとアピール。

 はぁ~、と一息ついたら視えたものを話し始めた。


 「今回は2回に分けて襲うみたいっす。1回目がかなりの大人数で来るッス。アイラ姉ぇが全部対応するかと思ったすけど、地形的に難しかったみたいっす。」


 この校舎は森に囲まれているので、遠くの敵を狙いにくい。

 木で阻まれて狙撃できないのだ。


 「なので、最初はここにいる全員で迎え撃つみたいっす」


 これには生徒たちはかなりやる気を見せている。

 さっきの戦いはほぼ俺とゾイグさんだけでやって戦い足りないらしい。

 そのゾイグさんは壁にもたれ、目を閉じているが話はちゃんと聞いている。

 戦いは3日後だがゾイグさんは前線に出れないかもしれない。


 「ここは全員で頑張れば切り抜けられるみたいっす。問題は2回目ッスね。

 5人来るみたいっす。かなり強いっす。」


 「どんなもんだ?」


 「少なくとも今日より強い人が一人居るッス」


 マジかよ。スキルレベル33の化け物より強い奴が居るのか……。


 「戦えるのは4人みたいっすけど、全部一対一で戦ってるッす」


 「何でそんな事している?」


 「1回目で疲れちゃったみたいッスね。どうしても皆張り切っちゃったみたいっす」


 それを聞いて生徒たちは苦笑を漏らしてしまう。


 「戦うのはネク兄ぃ、ノール兄ぃ、アイビス姉ぇ、クラウン兄ぃっす」


 「ええ!?シズクちゃん、わたしは?」


 「矢を全部撃っちゃうみたいっす」


 アイラは大変ショックを受けたようで項垂れてしまった。

 生徒たちがここぞとばかりに慰めている。

 アイラが居ればなんの苦労もなかったが、そうは問屋が卸さないか。


 「ネク兄ぃは同年代の男。ノール兄ぃは剣と斧を持ったおっちゃん。アイビス姉ぇは顔を布で覆った人。クラウン兄ぃは女の人っす。」


 「残った一人は何してるんだ?」


 「さあ?マリシア姉ぇと何か話してたッす」


 「……私と?」


 マリシアも疑問に思った様子だ。

 さっきの奴に対しては問答無用で「死ね」とか言ってた組織の人間とお喋りするんだ。

 変にも思う。


 「……というより、今回はたくさん視えたな」


 「ま、命がかかってるっすからね」


 そんなもんなのか。

 その時部屋の中に大声が2つ上がる。


 「「おっしゃあああああ!!」」


 アホとアホである。

 訂正。ノールとクラウンである。


 「……何騒いでんだ」


 ノールはバッとこちらを振り向き、喜色満面の笑顔で楽しそうに言う。


 「だってよー、今日はさちょっとしか戦ってないんだぜ?3日後が楽しみだなぁ……」


 アホだ。


 「やべー。アイビスに良いとこ見せれるぞ、俺。もしかしたらお兄ちゃんって呼んでもらえるかも」


 もう一人シスコンが居た。


 「お前アホだろ。アイビスも戦うって言ってんだろ」


 「……しまった!そうだった。アイビス!そいつ即効倒したら助けに行くから待ってろ!」


 「ええ、待ってるわ」


 「よっしゃああ!めっちゃ頑張る!」


 勝手にしろ。一人倒してくれるならそれでいいわ。


 「シズク、強い奴はどいつか分かるか?」


 「ネク兄ぃの相手っす」


 なんでだよ。俺と同年代で、今日の奴より強いとかどうなってんの?


 「なんだよ、ずるいぞ!!」


 「アホなのかお前は?今日より強いとかどんだけだよ」


 俺が一番強い奴と戦う事を知り、ノールがそいつと戦うと駄々をこね始めた。

 いや、無理だから。変わりたくても変われないから。本当は変わりたい。でもできない。


 「……はぁ~」


 「んじゃ、皆力を合わせてがんばろ~!!」


 マリシアが気の抜けた喝を入れてその場は解散となった。





 3日後。

 日は暮れかけ、木々で覆われる森はもう暗い。

 戦うのに不都合はないが、人間では遠くまで見通す事はできない。

 

 今回の戦いではこちらから仕掛ける事にした。

 戦ってる未来しかなかったので、校舎を守る必要が無いからだ。


 作戦は単純。

 森の中で匂いを使い敵を索敵。

 部隊を3つに分ける。

 一つはアイラとシズクとマリシアとゾイグさん。

 今回はゾイグさんは3人の護衛と言う形となってしまった。

 とても惜しいが怪我の具合を見ても、安全圏に居た方がいい。

 あと、『調理』を持つグリーもここに居る。


 他を2つに分けて敵の左右を挟む。


 アイラがガンガン撃って注意を引いている間に、『隠蔽』した仲間たちを送り込んで奇襲をかける。


 基本これだけ。

 クラウンの魔物達は後詰で待機させている。

 何かあればいつでも戦いに参戦できる状態にある。



 森の中に待機してからだいぶ経っている。

 俺とノールは右に待機、アイビスとクラウンは俺達から200m以上離れた左に待機しているはずだ。

 敵が来るはずの森は静寂に包まれ、鳥の声ひとつ聞こえない。

 あるのは自分の呼吸音と隣の仲間の息づかい。

 手は汗ばみ鼻の無い自分には状況を判断できない。


 なぜまだ来ないんだ。

 これ以上遅くなれば人間である以上、暗すぎて戦闘どころじゃない。

 完全に獣人の独壇場だ。


 すると横にいるノールが小さく声を上げてきた。


 「来たぜ、ボス」


 その一言に10人に満たない生徒達も息をのむ。

 自分達も来ている事が分かったが、今一つ自信が無くノールの一言で完全に確信に変わった。


 あたりはまだ俺でもそこそこ見える。

 ギリギリに来やがった。


 「人数は?」


 「100以上」


 情報屋の言っていた通りだったか。

 2日前に100人を超える人間の大きな動きがあったと報告があった。

 『照魔鏡』かは不明だったが、当たっていたようだ。


 配置に着く前に全員を『隠蔽』してある。

 左側も同じく『隠蔽』してあるが、効果は定かじゃない。

 俺の錬度が低すぎて、すぐに見破られる可能性がある。


 事実この3日間で試したが結構な確率で見破られた。

 獣人だから、という言い訳も有りだが楽観視はしないでおこう。


 「『隠蔽』を信用するなよ」


 後ろを向き最終確認に入る。

 全員の顔には緊張が張り付いている。


 「アイラの射撃を確認したら奇襲をかける。声は上げるな。信用するなとは言ったが、最大限『隠蔽』を活用しろ」


 全員首肯した時に森の奥から弓の射撃音が響いた。

 ギリギリ視認できる距離にかなりの数の人間が走っている。

 面白いように人間が貫かれ、周りに動揺が走っているのがこの距離からでも伝わってくる。


 まだまだ鳴る矢の音に獣人が嬉しそうにしている。

 アイラとの共闘に自分が本当に関わっているのが本当に誇らしいという事だ。


 数回の射撃の後、音が沈黙してしまう。

 想定通りだ。木の陰に隠れたな。


 「作戦開始」


 『隠密』!


 全員静かに走りだし、俺は『強化』で木の上に飛び移り、木の上を移動する。

 『体術』も駆使して、俺が一番乗りで敵陣に侵入。

 音もなく抜刀し木から飛び降りながら、木を背にしている人間の頭に剣を突き刺す。


 落下の速度と重力により、あっさりと剣は頭蓋を叩き割り絶命させる。

 死んだ奴はなんで死んだかも分からない筈だ。完璧な暗殺。


 周りの人間もまだ俺に気付いていない。

 『隠密』と『隠蔽』の併用に加え、アイラと言う脅威に注意が向き仲間の一人が息絶えた事に気づきもしない。

 再度跳躍し、木の上に移動。『索敵』で隠れている人間を発見し同じ手順で殺した時に獣人たちが気づかれた。


 「左右に居るぞ!」


 大声で全員に聞こえるように報告している。

 だが逆にそれはお前たちが終わっているという事だ。


 対応しようと飛び出した一人の人間がその瞬間矢で貫かれ、力なく倒れた。


 人間は最強の狙撃主に睨まれている事を思い出し、現状の劣勢を思い知る。


 「お前たちはその木の陰から動けないんだよ……!」


 殺した人間から剣を抜いて、魔法を使う。

 場をさらに混乱させる。


 「付与魔法」(ブースト・レッグ)


 俊敏性を大幅に向上させ、光る脚を持つ人間が戦場を疾走する。

 『索敵』で順次発見した人間を斬っていると、とうとう生徒達が人間と戦闘を始めた。


 左右合わせて20人程度だが、全員『スキル持ち』。

 騎士団と遜色ない。


 木から押し出されれば、一撃必殺の矢が人間の頭を襲い絶命させていく。

 その事に気付く人間もいるが、抵抗むなしく殺されていく。


 あまり柄ではないが、戦意を喪失させる。

 原始的に生物は大きな声に驚く。完全に戦意を喪失させて勝利を我らの物に。


 『付与魔法』(ブースト・ボイス)!!


 喉を強化し大きな声を出せるようにする。

 人間ども恐怖しろ。

 息を大きく吸い、一旦貯める。腹に力を肺に空気を充填し、全力で吐き出す。


 「オオオオォォオオオオオオォオ!!!!!!」


 空気の振動と言うより衝撃波が口から吐き出され、同心円状に全ての物体に語りかける。

 体の水が震え、肉が震え、心が震える。

 腹の奥が振動し、何とも言えない感覚が全身を貫く。


 強者に睨まれ侵入してきた人間は全員俺を見てしまい、束の間俺はこの場を支配した。

 音に振り向き、発信源がただの人間と言う事実に格の差を感じているが、忘れている事があるぞ。


 「お前ら目の前の奴らはいいのか?」


 俺の小さな呟きが場の凍結を開放するが、当初の打ち合わせ通り生徒達に委縮した様子は無くこの隙を最大限活かし、瞬く間に20人の人間が死んだ。


 残り70人。


 まだブースト・ボイスの効果は50秒以上は残っている。

 全員と離れていてもここから指示が出せるのは大きい。


 「殲滅しろ!!!!一人も逃すな!!!!」


 ブースト・レッグもまだ半分以上ある。

 俺が行動で示す事で俺が本気である事を敵にも思い知らしめる。


 決死の覚悟で身を低くしながら一人が俺に突撃してきた。

 アイラも他の援護をして俺に対する援護は無し。

 上手い事やったな。一斉に動き出されたら厄介だが、死の危険があるのに全員ができるとは思わない。

 お前は勇者だな。


 敵aはナイフを2本持ち決死の思いで突き出す。

 連撃では俺に移動する余地を与え、アイラの射撃の危険性が増える。

 一撃で決めに来るのはいい判断だ。


 俺は刹那的な時間の中、剣を地面に突き刺し無手になる。

 向かってくる二本の腕を手首で掴み取る。

 必殺の一撃を繰り出したはずが、完璧に受け止められ逃げようにも力の差がそれを許さない。


 一つ試したい事があったんだよ。


 「人は音で死ぬのか?」


 俺の死刑宣告を聞き今まで以上の抵抗を見せるが、俺の知的好奇心は児戯に等しい抵抗を封殺する。

 息を大げさに吸い込み、絶望に暮れる表情を見届ける事にする。

 ああ、良い表情だ。


 「ガアアア!!!!!」


 至近距離で顔に音の爆弾を叩き込まれた敵aは、目・口・鼻・耳から血を吹き出し地面に倒れた。

 倒れようがお構いなしに爆弾を叩き込み続ける。 

 音は森に木霊し一方的な殺害を証明し続けている。

 遂に微動だにしなくなった所で、『付与魔法』が切れた。


 「はああ、こんな風になるのか。超使える……!」


 あまりの音に戦場は完全に停止していた。

 生徒達も同様である。


 動かなくなった()から目を離し、辺りをぐるりと見回す。

 戦場を支配しているのは俺で、絶対なのも俺だ。

 『照魔鏡』は俺を見て次に何をするのか恐怖している。


 俺が1歩近づくと後ずさってしまう。

 突き刺していた剣を引き抜いて、またさらに近づく。

 脚はどんどん速く動き、もはや疾走の域に入っている。

 木々の間を縫って走り抜け、動く事もできない人間の首に剣を突き刺す。


 『照魔鏡』は俺が全員を一方的に殺す事に恐怖を覚え、無様に逃げ始めた。

 剣を投げ捨て少しでも身軽になって逃走している。


 「おいおい、殺す気で来てたはずじゃないのか?何逃げてんだよ……!」


 「お前達!やっちまえ!!」


 クラウンが声をかけると隠れていた魔物が姿を現し、人間を追いかけている。

 クラウンの『洗脳』はただ操るだけじゃない。

 魔物を強制的に強化して本来以上の戦闘力を発揮している。

 後天的スキルを完全に使いこなし、低レベルでも強い効果を発揮できている。

 認めたくないが優秀だ。


 突如として現れた魔物達に武器を放棄した人間は混乱して、逃げ場を見失っている。

 戦う事も出来ず、逃げる事も出来ない。


 そこに生徒達が追いつき、スキルを使いこなし倒していく。

 気合の入った声がもう戦わず後ろにいる俺にまで聞こえてくる。


 すでにオーバーキル気味だ。

 全員荒い息を吐いているが、興奮しすぎてやりすぎにも気づいていない。


 「あれじゃ、この後戦えないのも分かる」


 後ろから逃げようとしている人間をアイラも射撃して動けないようにしている。

 かなり撃っている。

 そこまで矢を用意できなかったから、アイラもこの後はダメか。

 すでに来ている。


 「予想通りだったね。ドゥーエを倒すくらいだからこれくらいはやると思ってたよ」


 森の奥からさらに5人組が現れた。

 それを確認して、後方に居たアイラ達も前線に出てくる。


 「何言ってるのよ。この子達全員『スキル持ち』じゃない?異常よ」


 かなり大胆な服装の女が最初に喋った優男に意見している。

 出るとこ出てるし、脚も太ももから露出できるような服だ。

 チャイナドレスみたいなのを着ている。

 クラウンが戦う予定だ。


 「強えーのは良い事だ。楽しみが増えたぜ」


 こちらはゾイグさんみたいに、かなりガタイのいい男だ。

 剣と斧を1本ずつ持っている。

 ノールが戦う。


 「トレ。俺が貰うから殺すなよ」


 あいつか。あの中で最強の奴は。

 確かに俺と同じような年齢に見える。身長も同じくらいだ。


 「……しゃーねーな。お前に逆らったら後が怖ぇ」


 ゴツイおっさんもあいつには頭が上がらないようだ。

 シズクが視たとおりか。


 「……」


 口元を黒い布で覆った男?は喋らない。

 かなり細いな。骨と皮しかないように見える。

 それでもあの中にいるなら実力者だ。

 アイビスが戦う。


 作戦通りこいつらが現れたら生徒達は下がるように言ってある。

 人間は魔物達が後始末している。


 前に居るのは、俺、ノール、アイラ、アイビス、シズク、マリシア、クラウン、ゾイグさん。

 数だけは勝っているが、ここから1対1か……。


 「おい、ゼーロ。ここからは勝手にやっていんだよな?」


 「勝手にどうぞ」


 最強が優男に確認をとっている。

 あいつがリーダーだったのか?


 そのまま俺達に問いかけてくる。

 

 「ドゥーエを殺った奴はどいつだ?」


 『操作魔法』持ちの事だ。

 ゾイグさんも手伝ってもらったが、今ゾイグさんは激しい戦闘ができない。

 俺しか行けない。


 「俺だ」


 「おっ、お前かよ。そこのゴツイおっさんかと思ったぜ。じゃ、俺と殺し合おうぜ」


 「望むところだ」


 男はにんまり笑うと森の奥に進んでいく。

 ついて来いという事か。

 全員を見て健闘を祈る。


 「……死なないでくれ」


 言葉を置いて男の後をつける。

 




 「ウーノはあいつか。じゃ、次は俺だ……」


 トレと呼ばれていた剣と斧を持つ男が喋るが、ノールが口を挟む。


 「おっさんは俺とやろうぜ」


 「……いいぜ、小僧。後悔すんなよ」


 「おっさんこそな」


 ハッと吐き捨てノールとトーレが森の中に姿を消していった。




 「そこの女は俺がやる」


 「あら?大胆ね。いいわよ」


 女はさっさと奥に行ってしまったが、クラウンは進まない。

 アイビスに向かい宣言をする。


 「あいつすぐ倒すから、それまで頑張るんだぞ……!」


 アイビスは自分の心配をしてほしかったが、自分の兄は妹の事しか考えていないのは分かっていた。

 自分の方が強いかもしれないのに、心配してくれている。

 それだけでも嬉しかった。


 「お兄ちゃんも頑張って……!」


 「……!おお!」


 そしてクラウンは女についていき、姿を消した。




 残った黒づくめに対して軽く謝罪する。


 「悪いわね。あなたの相手は私よ」


 「……問題ない」


 初めて口を開き凄い勢いで移動し始めた。

 動きはアイビスに舌を巻かせるものがあった。


 追いかけながら苦い思いを覚える。


 「……強い」



 戦いが始まる。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ