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47話

迷宮の外の魔物の魔石には用途がありません。

なのでネクロは『天通眼』の魔石を回収しませんでした。


疑問が寄せられたので、回答しておきます。

 翌朝、2週間分の食料とその他諸々を馬車に詰め込んで街を出発した。


 

 街を出てもアイラとアイビスの元気があまりない。

 昨日ほどでも無いが、何を思っているのかは話してくれないようだ。

 話す必要がないなら聞かない。聞かないで欲しい事もあるはずだ。


 ……いや。

 ……もしかして生理なのか!?

 アイビスなんてまだ11歳だぞ?そんな心配はしていなかった。

 しまった。俺のミスだ。アイラの方は13歳。来ていてもおかしくない。

 そんなそぶりは見せていなかったから、二人とも偶然同時に生理が来てしまったのか?

 なんて事だ。言い出せる訳無いじゃないか。

 俺が女だったら言いやすいかもしれないが、あくまで男だ。


 ここは俺から話を切り出して、二人の不安を解消するべきだ。うん、そうに違いない。


 「……なぁ、二人とも生理なのか?」


 今日最後の言葉になった。



 さらに翌日。24時間は寝ていたみたいだ。

 顔面がパンパンに膨らんでいる。

 『生命力』が効いてないだと?どんな力が発揮された?


 2人はプンスカ怒っているみたいだが、表情は以前に戻っている。

 まぁ、元に戻るならいいわ。

 

 ……でも、ここまでしなくていいんじゃない?

 俺じゃなかったら死んでるよ?そこんとこ理解してる?



 「なぁ」


 「なにー?」

 「「……」」


 ノールしか反応してくれない。


 「なぁってば」


 「……はい?」

 「……何よ?」


 かなり不機嫌だった。

 ちょっとお茶目に振る舞うか。


 「許してちょ」


 変なポーズをしながら許しを請う。



 二日間覚めなかった。



 ……ちょっと、どうなってるの?

 3日間何も食ってないんだけど?

 ほとんど寝てるし。ていうか気絶だけど。


 適当に保存食を腹に入れて、腹を満たす作業に没頭する。


 今度はちゃんと謝って許して貰おう。


 「すいませんでした」


 土下座である。11歳と13歳に向かってのDOGEZA。

 完璧な姿勢だ。今にも『土下座』が発現してもおかしくない。

 能力は「絶対許して貰える」だな。これで決まり。


 「……もういいです」

 「……いいから顔上げなさいよ」


 「うっす。あざっす。」


 『解析』で確認したけど、『土下座』はなかった。

 なんだよ。めっちゃ使えるスキルなのに。変態行為をしても許して貰える。



 名前:ネクロ

 歳 :18

 性別:男

レベル:20↑(1)

スキル:スナッチLv4

    強化Lv11↑(1)

    火炎魔法Lv19↑(1)

    剣術Lv23↑(1)

    解析Lv18

    体術Lv19↑(1)

    生命力Lv7↑(2)

    索敵Lv13

    隠密Lv12

    毒耐性Lv10

    剛腕Lv11↑(1)

    付与魔法Lv12↑(2)


名前:ノール

歳:13

性別:男

レベル:15↑(2)

スキル:双剣術Lv18↑(1)


名前:アイラ

歳:13

性別:女

レベル:14↑(3)

スキル:弓の加護Lv17↑(1)


名前:アイビス

歳:11

性別:女

レベル:19↑(1)

スキル:暗殺術Lv28


 軒並み上がっていた。『天通眼』は手に入らなかったけど、悪くない結果だ。


 「……おお」


 「何ですか?」

 「何よ?」


 「いや、『解析』を使ったんだが、皆強くなっていたからな」


 御者台からノールが出てきて、俺に確認を求める。


 「ボス!俺は?」


 「レベル15で『双剣術』は18だ」


 「おお~!めっちゃ上がってる!!」


 気分よく御者台に戻って、馬車を操り始める。

 さっきまでそこに居る奴いなかったよな!


 視線を逸らすと、アイラとアイビスも聞きたそうな顔を向けている。


 レベルを伝え尻尾を振っている二人を見て和んだ。




 1週間経ち次の町まであと3,4日程度のあたりまで来た。

 今のところ危険はなかった。

 むしろこの面子で危険なら、こんな所は誰も通れない。


 馬を休憩させつつ、昼飯をとる。

 料理ができる人が欲しい。

 『調理』欲しいなー。でも、持ってる人なんて居ないよな。

 人からはあまり盗りたくないし、恨みのない料理人から盗るわけにもいかない。


 でも、美味いんだよなー。

 1回だけ食ったことある。1年の予約期間を経て、ようやく食ったんだ。

 美味い!!

 本当に美味い!

 食いてー


 魔物で持ってる奴いないのかよ。是が非でも奪うのに。


 「なんで俺たちの中に料理ができる奴が居ないんだ……」


 ポツリと不満を漏らしてしまう。

 それでも、全員に聞こえてしまうような声だ。


 「んだよ、ボス。18歳だろ?何か作ってよ」


 「歳は関係ありません~」


 「……ボスの母さんのご飯、美味かったなー」


 思い出しているようだが、食っているのは10日連続の干し肉だ。

 レパートリーが欲しい。


 「「……料理……」」


 「なに?アイラって何か作ったことあったけ?俺食ったことないけど」


 ノールが過去の経験からアイラに向かって言葉の刃を放つ。


 「……ぐ。わ、私だってやろうと思えば、で、できるわよ……たぶん」


 アイビスも同じく呟いていた。


 「アイビスは作った事あるのか?」


 ジロリと睨まれ、気後れしてしまう。


 「……ないけど。それが何か?」


 素敵な笑顔を向けているが、目は笑っていない。


 「……いいえ」



 恙なく食事も終わり、今後について話し合う。


 「とりあえず、あと4日もあれば街に着く。

 迷宮はないが騎士団から討伐依頼を受けて、少しはお金を稼ごう。」


 「「「はーい」」」


 


 4日後に街に辿り着いた。すでに日は傾いている。

 空は茜色に輝き、人もまばらになっている。

 小さな町というより、もはや村だ。

 そこまで人口は多くないようだ。

 迷宮もないので、武装した人は騎士だけだ。


 「とりあえず宿行って、おいしいご飯を食べよう」


 「「「やった!」」」


 3人は劇的に喜んでいる。この2週間は酷いものだった。

 保存食、保存食、保存食、からの保存食。ときどき水。

 子供が食べるような食生活じゃない。


 またもや1泊5,000ユグも取られ、100万ユグもいつの間にかなくなってしまうだろう。

 まぁ、連泊はしないからそこまで減るもんでもない。


 たらふく飯を食って、豪華な部屋に戻る。

 割と良い生活しているよ。普通の人はこんなに良い部屋には止まれない。

 今回はベットがたくさんある部屋があったようなので、そこにしてもらった。

 風呂もあるので、全く問題はない。


 覗こうものなら俺に未来がなくなるので、絶対にしない。

 この中で一番弱いのは俺なのだ。……何なんだよぉ。


 

 たっぷり寝て、10時頃に騎士団詰所に向かう。

 依頼を受けてもう一泊したら、この町も出る。

 2泊で1万ユグ以上飛ぶので、それくらいは稼ぎたい。

 金はあって困るものじゃない。金が無くて死んでしまう人もいるのだ。

 できるだけ稼ぐ。


 騎士団は主に(コロニー)の駆除をするが、流石に騎士だけで対応するのは難しい。

 なので、騎士団の詰め所に行き依頼を受けて達成すれば、ある程度の報酬が手に入る。

 魔石の数に応じて騎士団は報酬を出すので、倒せば倒すほどお金は入る。

 ただし、依頼を受けずに魔石を回収しても報酬は受け取れないので、注意が必要になる。



 掲示板を見て受付らしき人に声をかける。


 「すいません、『クワトロコング』の討伐依頼を受けたいのですが。」


 「はい、わかりました。魔石ひとつで200ユグになります。結構強いので気を付けてください。」


 「わかりました」


 50匹倒せば1万になるな。それくらいを目標にしよう。

 いつもだったら100匹近く倒しているんだ。簡単だ。


 ……ん?違うか。

 迷宮はそこまで広くないから、ノールとアイラが早めに魔物を発見できてたけど、外になったらそう簡単にはいかない。

 倒せる分だけでいっか。


 

 さて、なぜ『クワトロコング』の討伐依頼かというと、……それしかなかった。


 なんでだよ。

 ゴブリンくらい出しとけよ。

 普通に危ないから。ホントに。

 この依頼誰もやらないだろ。

 義勇兵でもない限り絶対やらない。


 『クワトロコング』は4本腕のゴリラだ。

 だいたい3匹程度で群れている。

 力が強く4本ある腕での接近戦は脅威だろう。

 普通に死ぬから。

 迷宮もないこの村でそんなに戦闘力の高い人材なんていねーだろうが。

 それとも縄張り意識でも働いて、自分たちの仕事をあまり盗られたくないのかな?

 強い『クワトロコング』をどこかの誰かに狩らせて、自分達はゴブリンを狩る?


 ……それいいな。


 ふざけんな。仕事しろ。

 

 

 詰所の中をウロウロしている3人を捕まえて報告する。


 「今からゴリラを狩る。場所は林の中だ。森ほど木がないからアイラもガンガン撃ってくれ。」


 「「「了解」」」


 

 林とは言ったが結構じめじめしている場所だな。

 大きな岩があちこちあるが、湿気が多く緑に覆われている。

 木もまぁまぁ生えているし、地面は湿っている。もちろん土など見えず、名前の知らない植物があたりを占め尽くしている。


 そこまで視界が悪いというわけじゃない。

 体を傾けて視線を変更すれば、割と林の奥まで見ることができる。


 「どこに魔物がいるか分かるか?」


 索敵はノールとアイラが頼りだ。


 「たぶんあっちだな」


 そう言って2時の方向を指し示す。ここからではさすがに視認できない。


 


 全員で歩き始めるが、なかなか魔物は見えない。


 「ノール?」


 どうなってるか聞く。


 「あっちも動いてる。迷宮じゃないししょうがないよ」


 「そうだったな。いつもの感覚だとどうしても違和感が出る」



 そこからさらに10分歩くとようやく真っ黒なゴリラが見えた。

 数は2匹。


 「……デカ」


 前方には体長2mはあるゴリラがゆっくりと闊歩している。

 すでにこちらに気付き近づいてきている。

 あれと戦るのか。

 メンドイ。


 「……アイラ、頼んだ」


 「はい」


 一本取り出し、矢を番える。

 構え、引き絞り、矢にエネルギーを収束させる。


 「行きます」


 宣言と同時に矢が放たれ、1匹のゴリラの額を射抜いた。


 ゴリラは4本の腕をだらんと落し、矢を額に刺したまま大きな音を立て、動かなくなった。


 「ウホッ!?」


 隣のゴリラがウホウホ言いながら驚いているが、しっかりと対策をしている。


 「あいつ頭良いな」


 4本の腕で頭・首・心臓を守りながら、二足歩行で駆け寄ってくる。

 しかも木や岩を陰にしながら、簡単に矢が当たらないように工夫している。


 「ノール、アイビス」


 「「了解」」


 3人同時に駆け出す。『付与魔法』は魔力の消費が激しいので、今は使わない。

 対応できないと感じれば即座に使う。


 ゴリラの目の前まで行くと、4本腕のガードを外し殴り掛かってくる。


 『強化』!!


 『強化』を使い4本腕の連続攻撃に、ギリギリで対応する。

 徐々に追い込まれていき、背中が知らぬ間に岩に当たってしまい、これ以上下がれなくなる。


 「ウホ――!!」

 「チッ!」


 『体術』『強化』『剛腕』全開!!


 剣を持たない左腕で、ゴリラの拳の一つを迎え撃つ。

 拳同士がぶつかり、骨同士がぶつかる嫌な音が響く。

 勝敗は俺の拳に軍配が上がった。


 「ウボアァァァアア!!」


 拳が砕け、負荷に耐えきれなかった肘も内側に折れ曲がっている。

 3つのスキルの同時使用で、完全に種族差を超えた一撃をひねり出せた。


 拳と肘の痛みに苦しみ悶えすぎ、周りの状況を把握できていない。


 後ろから双剣と鎌が襲いかかり、首が宙を舞い、ゴリラは絶命した。


 魔石を回収していると後ろからアイビスの声がした。俺の話題だ。


 「ゴリラに力で勝ってるわよ……あの人」


 「………………ぐすっ」


 傷ついた。今までごめんなさい、アイラさん。

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