表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/62

37話

 「うまく行ったわね」


 「ああ」


 冷静を装いながらもちょっとドキドキしている自分がいる。

 ノールとアイラも同じはずだ。

 大鎌を携えたアイビスが少しの炎と土煙の中から現れた姿は、恐ろしく、それ以上に綺麗だった。


 「完璧な作戦だったな」

 

 「あ、ああ完璧だったな、ボス」

 「そ、そうね、お兄ちゃん」


 ノールとアイラも少し呆けていたようだ。

 ちょっと前の光景を思い出して、意識此処に非ずという感じだ。


 「何が完璧よ。注意を引いて私が殺るだけじゃない」


 「君は何を言ってるんだね?そこに至るまでの過程は、4人がいなかったらできないじゃないか」


 「……そうだけど。一番頑張ったのはノールじゃない。」


 「へっ!?」


 そんなにビックリしなくてもいいだろう。

 でもアイビスが人を褒めているところを思い出せない。

 友好的な態度だったけど、褒めるのは初めてか?

 

 「まぁ、そうだな。一番危険な敵の注意を引く役割だったわけだし。

 そういう役割はノールばっかりだな。」


 「……あなたもやりなさいよ」


 「こわいからやだ」


 「……」


 冷たい目だ。


 「お兄ちゃん、早く助けに行かないと」


 「そうだったな。そのために来たんだった。」

 

 もう少しでこのまま談笑しながら帰るとこだったわ。

 



 洞窟に近づくところで異変に気づいてしまった。

 そんな馬鹿な。予想外だ。

 動揺を見せてはいけない。3人を不安にさせてしまう。後回しになったとしても、今だけは。


 「俺が行ってくる。3人とも外を警戒していろ」


 「はーい」

 「わかりました」

 「わかったわ」


 俺の勘違いであってほしいと願いながら、中に入っていく。

 心臓の動きが、息が早い。

 洞窟内に呼吸音が響いている。

 俺の呼吸だけ。

 『索敵』に反応がない。ここに居ないだけだ。俺たちは最速できた。

 本気を出した。手を抜いていない。






 洞窟を引き返し外に出る。


 「ボス?」

 「お兄ちゃん?」

 「ネクロ?」


 3人とも疑問に感じている。

 俺しかいない。

 失敗した。


 「……戻ろう」


 言外に告げる。死んでいたと。遅かったと。

 あの惨状を見せるわけにはいかない。

 ホッとしている自分が汚らしい。

 

 あれが3人でなくて良かったと。


 いや、俺は普通だ。大切な人間の方が大事に決まってる。

 俺の手で守れる人は限りがあるだけだ。

 アイビスも言っていた。俺は間違っていない。正しい。

 誰があの状況から助けれた?いない。

 しょうがないだろ。無理だ。最悪でも犯されているだけだと思っていた。

 まさかもう食われていたなんて。

 腹が減っていた?あいつがボスだったから献上した?

 俺が勝手にそう思い込んでいたのか。

 自分の都合のいいように。なぜ最悪を想定していなかった。

 やれると思っていたのか。『スナッチ』を手に入れていい気になっていた?

 馬鹿が。ここに居る全員の中で一番弱いくせに。守られていることに気付け。

 つまり油断していた。調子に乗っていた。勘違いだ。強くなったと錯覚した。俺の力じゃないのに。

 なんだかんだ言って全てうまく行っていたんだ。

 失敗するなんて思わないじゃないか。

 俺は悪くない。だいたい騎士団の仕事だったはずだ。あいつが殺されなければ。

 わざわざ偽善丸出しで首を突っ込むんじゃなかった。

 殴った騎士と同じだ。変わらない。元々騎士になるはずだったんだ。

 同じ穴のムジナだ。

 ダメだ。クソ。なんて言えば。


 「お兄ちゃん!!」


 ハッとする。


 「失敗したのはしょうがないよ。いつも成功するわけじゃない。

 大切なのは次でしょ?次は失敗しないように、また作戦会議すればいいじゃない。」


 「そうだなー。しょうがねぇよ。俺たちがダメだったらあの中じゃ誰もできなかった。」


 「そうね。しょうがないわ。」

 

 そんなあっさりと。


 「だが……」


 「お兄ちゃん」


 まっすぐ見つめられて言葉に詰まる。

 しょうがない。確かに、しょうがない。


 「……そうだな。しょうがない」


 「そうだぜ、しょうがねぇ」


 「しょうがないのよ、これだけはね」


 何でもできるわけじゃない。これが限界だったんだ。


 「……悪いな。皆で謝ろう。」


 馬車へと戻る。気分は……よくない。





 戻っている途中で緊迫した声が上がる。


 「ボス、この先から血の匂いがする……」

 「私にもわかります……」


 そんな。まさか。


 「オーガじゃないのか?」


 2人とも首を横に振る。

 

 「さっきより濃くなってる」


 ダメだ。ここまでダメなんて。


 「……俺だけが行く。お前らは先回りして俺の到着を待て。」


 「でも」


 アイラが言うが、


 「頼む」


 この言葉で引いてくれた。

 3人で先に進むのを確認して、俺も進む。


 できるなら行きたくない。でも食料がない。

 ここから馬車で4日かかる。とてもじゃないけど無理だ。

 回収しなくては。




 一言で言うなら地獄だ。

 安っぽい言葉だがこれが分かりやすい。

 

 中途半端に喰われ、臓物をまき散らし、体は引き裂かれている。

 頭がなかったり、腕が無かったり、脚が無かったり。


 ザックさんも死んでいる。

 最後に何を思っていたのか。こんなことになるなんて。

 

 騎士も全滅だ。逃げなかっただけマシか。俺だったら逃げる。


 馬は生きている。

 魔物は人が好物だ。だから襲われる。食われる。


 食料を回収し、馬車に乗る。

 が、思い直し飛び降りる。


 遺体を一か所に集めて、『火炎魔法』で焼いた。



 すまない。すまない。

 こんなことになるなんて思っていなかったんだ。

 許してくれ。


 立ち上る煙に背を向けて馬車のる。


 行かなきゃ。立ち止まってはいられない。

 やることがある。

 何人死んでも関係ないと言ったのは俺だ。

 立ち直れ。

 人なんていつか死ぬ。

 今日だっただけだ。

 運が悪い人たちだったな。

 本当に。

 力があればこんな事にならなかったのに。


 これ以上無様な姿を見せていたら3人に影響が出る。

 俺はあいつらの前ではカッコいいお兄ちゃんでいたいんだ。


 忘れるのは無理だ。アイラが言っていた。

 次は失敗しない。これを糧にしろ。

 何がいけなかったのか相談するんだ。


 皆で考えろ。あいつらだっていい気分じゃない。俺と同じだ。

 

 頭を使えばなんとかなる。


 


 早くみんなに会いたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ