19話
あれから3日。
二人の装備も整え、安定して狩りができていた。
調子に乗っていた。調子に乗るからこんなことになる。
『スキル持ち』だ。
今は3層にいる。
ノールとアイラの強力な援護もあり、早くも先に進んでいる。
解析結果だ。
名前:ポイズンスパイダー
レベル:10
スキル:毒耐性
『毒耐性』持ちだ。
直接の戦闘に役立つものではない。
しかし、『スキル持ち』の魔物の強さは破格だ。
まだ、見つかっていない。作戦会議だ。
「奥にいるあいつは『スキル持ち』だ。」
二人とも驚いている。
義勇兵の死亡の原因は『スキル持ち』によるところが大きいことは知っていたか。
「ボス、スキルは何?」
「毒耐性だ。」
「それなら他のポイズンスパイダーと変わらないんじゃ?」
そう思うよな。
「それは間違いだ。『スキル持ち』は格が違う。同じように戦っていたら死ぬぞ。」
「『スナッチ』を使ったら弱くなる?」
二人には『スナッチ』のことを伝えてある。
たくさんスキルを披露してるから、疑問に思ったようだ。
ノール・アイラには嘘をつきたくなかったから、正直に話した。
嫌われるかとも思ったが、「すげぇ」くらいの感想だ。拍子抜けだ。
「それはないな。戦闘系のスキルだったら弱くもなるが、あいつの戦闘力はスキルに依存していない。
『毒耐性』を奪っても強さは変わらないだろう。」
「じゃあ、お兄ちゃんどうするの?」
本当ならアイラに矢で目を攻撃してほしい。
が、奴の目は8つある。さすがに全て壊すのは難しい。
しかも、『スナッチ』の発動条件でたぶん「目を合わせる」必要がある。
だから、今まで正面でしかスキルが発動しなかった。
目を破壊したら「毒耐性」が奪えない。
「……アイラ、ポイズンスパイダーの口の近くにある鋏を弓で壊せるか?
あそこから毒が出るらしい。壊せるだけでかなり違うはずだ。」
「できる」
自信満々だな。だが・・・
「アイラ過信するな。奴は今まで倒したポイズンスパイダーとは違う。
それを考慮しろ。できないと思ったらできないと言え。」
「できる!」
怒らせちゃったか。それでもだ。
「よし、わかった。頼んだぞ。
鋏を破壊したら、ファイヤアローを打ち込む。
着弾を確認したらノールの出番だ。
ノールが注意を引いてるのを確認したら、俺が近づいて『スナッチ』を使う。
そのあとは全力で倒す。」
2人とも頷く。
「これはただの予定だ。柔軟に対応してくれ。
アイラは矢を惜しまずどんどん撃ってくれ。」
「わかったわ」
よし。
「行くぞ」
俺とアイラは攻撃に集中する。
ノールが気を引く役だ。
「おい!こっちだ!」
こっちを向いた。やはり、『スキル持ち』は体がでかい。
アイラが矢を2本放つ。
「!!」
一本は鋏を壊し、もう一本はすんでの所で躱された。
アイラが驚いているのが伝わってくる。あれだけ過信するなといったのに。
もしかして、矢が外れたのは初めてなのか?
あり得る。『弓の加護』がアイラに力を与えていたんだ。
ノールも驚いているが、アイラを叱咤する。
「アイラ!!もっと撃て!」
「わかってる!!」
すごい。一人で弾幕を張ってる。
鋏と脚一本を吹き飛ばした。
今だ!
『火炎魔法』!
今までのファイヤアローとは違う。先端部分だけ炎の密度を上げてある。
貫通力が上がっていることを祈る。
ポイズンスパイダーに炎の矢が10本以上襲い掛かる。
「ギジャアァ!」
よし、外殻を貫通してる。ほとんど躱されたが、2本が胴体に刺さっている。
矢の形をしているだけで、元は火炎だ。熱くて堪らないだろう。
「ノール!行くぞ!」
すでに走り出しているノールに命令を出す。
「わかってるよ!!」
声に余裕がない。こんな声初めて聞いた。
アイラの矢が避けられたことがノールにまで影響を与えている。
「アイラも援護を忘れるな!」
「はい!」
ノールが凄まじい速さでポイズンスパイダーに近づく。
本気だ。あんなスピードを出してるのは今までなかったはずだ。
「うおおおぉおぉ!!!」
縦に横に斜めに切り続けている。だが、硬い。
武器が弱すぎる。俺の責任だ。切り裂けていない。
「ノール!!離れろ!」
俺の声を無視して、ついに突きを放ってしまった。
まずい!
「!くそ!抜けない!!」
短剣は折れず突き刺さているが、案の定抜けなくなっている。
「ノール!離れて!」
アイラの声も届いていない。
ポイズンスパイダーが鋭い爪のついた脚をノールに向かって振り上げている。
ノールの奴気づいてない!
ノールに向かって走り出し、ギリギリ足を回避してノールを抱えて回収する。
剣は2本とも突き刺さったままだ。ノールは退場だな。
「馬鹿野郎!!落ち着け!」
「……ボス」
かなり息が荒い。『スキル持ち』がここまでと予想していなかったか。
「ひとまず下がって、アイラを護れ。
できるな?」
「うん」
ノールをアイラの元へ送り出し、俺はポイズンスパイダーへ走り出す。
今回も予測が甘かった。『双剣術』が効かないとなると、止めは『火炎魔法』しかない。
走りながら、アイラに指示を出す。
「アイラ!目を攻撃しろ!俺には当てるなよ!」
「はい!!」
すでに2個の目を壊され、苦しみから体を大きく揺らしている。
でかい顔に飛びついて、目を覗き込む。
『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!『スナッチ』!!
よし!奪った。ノールとアイラのいる場所まで下がる。
「魔法を使う!近づけるな!!」
「「了解!!」」
ノールも立ち直ったか。
塵も残さない!
『火炎魔法』!!!
次々撃ち込んでいく。
一発だけじゃ、死なない。
熱い。耳も聞こえなくなってる。爆炎の光で目も開けてられない。
30発は撃ったところで魔力が切れかけて、『火炎魔法』が使えなくなった。
四つん這いになって、顔を上げる。
黒こげになってひっくり返るポイズンスパイダーが目に入る。
あれだけ撃っても消し飛ばないのか……。
「ボス、大丈夫?」
「お兄ちゃん……」
心配そうに近づいてくる。
「ああ、大丈夫だ。二人ともよく頑張ったな。偉いぞ。」
改めてポイズンスパイダーを見る。
ノールの剣が折れてる。悪いことをしたな。
「ノール、悪い。剣は折れてるみたいだ。」
「いいよ、それくらい。生きてるだけでも運がいい。」
「本当よ!お兄ちゃんが助けなかったら死んでたかもしれないのよ!?」
アイラがノールに突っかかる。
「まあまあ、反省は後だ。魔石を回収して、帰るぞ。
案内は頼んだ。」
「「りょーかい」」
二人の案内で魔物と接触せずに、迷宮を脱出した。
魔力はほとんどないが、歩けないほどじゃない。
斡旋所に向かうか。
「斡旋所に行って換金するぞ。」
「うーい」
「……」
黙っているのは、アイラだ。理由はある。
斡旋所が苦手なだけだ。
「どうも、セラさん。換金お願いします。」
「あああああ!アイラちゃん!良く来ましたね!
今日はおかし作ったんですよ!一緒に食べましょう!」
完全無視だ。
となりの受付嬢も引いている。
換金は隣の人に頼もう。
「あう……」
アイラはしどろもどろだ。
初めてアイラを連れてきたときに、セラさんの態度が急変した。
アイラのあまりの可愛さにヤラレテしまったらしい。
「耳!耳触っていいですか!?尻尾もモフモフさせてください!」
「お兄ちゃん……」
こっちを向いて助けを求めてくる。
すまん。無理だ。
「……諦めてくれ。」
一度、一人で換金に来たときセラさんは烈火のごとく怒りだした。
アイラを連れてこないと換金はしないと、1点張りだ。
もう、アイラがいないと換金もできなくなってしまった。
「ああぁぁあ!!かわいい!!いい匂い!!
あんな男捨てて私と一緒に暮らしましょう!!」
「おい。」
「……なんですか、ネクロさん。
私の至福の時間を邪魔しないでください。」
怖い。目が据わってる。
「いやー、あのー、アイラは仲間なんでぇ、その、引き抜かれるのは……ねぇ?」
突如として叫ぶ。
「まさか!独り占め!?アイラちゃんを独占する気ですね!?
そんな、なんてうらyガハッ!」
他の受付嬢さんが後ろから殴りつける。
最近のパターンだ。
「こちらが換金したお金です。この子は奥へ連れて行くんで今のうちに。」
セラさんの視線は決してアイラを逃さない。
「アイラちゃん!明日も来てくださいね!そしたら、私とぶべ!」
再度殴られ奥の部屋へ連れていかれていく。
これさえなければ。
「ボスー、終わった?帰ろうぜー。
アイラもそんなとこに突っ立てないで、帰るぞー」
アイラがゆっくりとした足取りで出口へ向かう。
ご苦労様です。
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