11話
さて、まずはアドバイス通りに食糧を買うか。
「すいませーん、食糧欲しいんだけどー」
店の奥から恰幅のいいおばちゃんが出てくる。愛想いいな。真似したい。
「いらっしゃい。どんなのが欲しいんだい?」
「パンとか干し肉とか保存のきくやつ。1週間分ね。あと、水もあるとありがたいかな。」
「あいよ。ちょっと待ってな。」
また奥に引っ込んでしまった。暇だから周りを見渡してみる。
保存食ばっか頼んじゃったけど、料理した方がいいよな。でも、やったことないんだよなー。
母さんいたから作らなくてよかったし。うまいし。
もしかして、やばいか?
「待たせたね。全部で2,000ユグでいいよ。」
「りょーかい」
銀貨一枚で1,000ユグだ。銀貨二枚を手渡す。
「まいど。お兄さん、どっか行くのかい?」
おばちゃんが受け取りながら聞いてくる。
「ああ、義勇兵になるんだ。それで、南の方にある町に行く。」
「どうやって行く気だい?」
「えっ?歩いて、とか?」
おばちゃんが固まっている。変なこと言ったか?
「お兄さん。それじゃあ、保存食足りないよ。1週間ていうのは馬車での話さ。」
え?そうなの?知らんかった。情弱すぎだ。
「しょうがないね。私の知り合いの商人が今日その町へ行くはずだよ。
手紙を書いてやるから、それを渡しな。」
おばちゃん優しい。
「いいの?ありがとう、助かるよ」
「それくらいいいよ。商人の名前はザックだよ。
私より横幅のある豚みたいなやつだよ。そいつを見つけたら、手紙を渡して事情を説明しな。」
おばちゃんが手紙を渡してくる。
両手でありがたく受け取った。
「ホントにありがと、おばちゃん。また来るよ。」
いいながら、出口へ向かう。
「ああ、そうしてくんな。ザックにヨロシク言っといてくれ。」
「はーい」
いやー、幸先いいな。あんなに優しくしてもらっちゃった。
あれ?ザックさんはどこにいるんだ?聞いてなかった。まあ、南門だろ。たぶん。行先は南だし。
「おい!」
義勇兵ってふつう何人組でやるのかな?もしかして、俺ソロ?(キリット
古いかな?
「聞いてんのか!?」
基本ボッチだからな俺。誰かに話しかけるなんて難しいな。
あのおばちゃんは例外。笑顔が完璧だったもの。
「おい!!!」
なに?さっきから。五月蠅いんだけど。
後ろを振り返ると、さっきまで模擬戦をしてたサウロ君が突っ立っていた。
メンドクサ
「なに?」
「てめぇ、さっきはよくも恥かかせてくれたな。落とし前はつけさせてもらう!」
なんだこの負け犬臭は。
仮にも相手は騎士だ。殺すのはマズイ。適当に無力化するか。周りに人もいるし、証人になってくれるだろう。終わったらすぐに南門行くけど。
「怪我はもう治ったからな、次は油断しねぇ」
勝手に言ってろ。……『解析』
名前:サウロ
歳 :18
性別:男
レベル:20
スキル:なし
……ゴミめ。『剣術』がなくなったことにも気づいてないのか。
せっかくだ、『体術』を試そう。
……マジかよ。
あいつ、真剣抜きやがった。周りの人も驚いてるじゃないか。
でも、これで正当防衛だ。存分にやる。
「死ねええ!」
「……」
……なんだこれ。弱すぎだろ。スキルの力は偉大だ。
単調にもほどがある。それに、遅い。
右、左、右、左、……
「おい、本気出してんのか?遅すぎるぞ。」
サウロが顔を真っ赤にして、猛然と駆けてくる。
だから、それが単調なんだって。フェイントくらい入れろよ。
『剣術』がなくなると、そんなことも分からなくなるのか?
「なんで!何で当たんないんだ!」
もう、剣技でもなんでもない。ただ振り回してるだけだ。
もういいな。俺が攻撃されているのはみんな見た。
単調な剣を躱して、懐に入る。
肘で鳩尾を抉るように突き上げた。
「ぐええ」
サウロは剣を落として、うずくまっている。
……やり返すか。今までやられていたことを。殺すのはまずいと思ったけど、結果として死ぬだけだ。
それに、6年間の恨みがある。死んでも文句は言わせない。
脚を振りかぶる。全身の力を脚に集中させる。
『強化』と『体術』の複合だ。死ね。
「ラアァ!!」
「びぇ」
模擬戦で殴りつけようとした脇腹をまた蹴る。蹴るなんてもんじゃないな、ただの破壊だ、今のは。
あんな感触初めて味わった。「ぐにゅ、ぱん」みたいな感じ。わかんないか。
最低でも内臓破裂だ。治癒魔法持ちがいないと手遅れになるな。知ったことじゃないが。
……復讐したのに、何も思わないな。
達成感が無い。弱すぎる。
「はぁ……」
ため息を一つ付き、サウロに背を向けて南門へ歩き出す。
サウロに近づく者はいなかった。
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