不死鳥
「はははは! なんでお前、下何も履いてないんだよ」
モヒカン2は下に何も履いていない状態で、手で股間を隠していた。
「うるせー! ボンタン、パンツ狩りにあったんだよ!」
モヒカン2泣きそうな顔をしていた。
俺は席を立った。
「なに? 魔獣学園だと分かってやられたのか?」
どこのどいつがやりやがった。
「申し訳ねぇ」
モヒカン2は声を絞り出すように言った。
許せねぇ。
「このままだと、舐められるな」
「誰にやられた?」
ゴリラがモヒカン2に聞いた。
「不死鳥のやつらにやられた」
「不死鳥だと? 走り屋の癖に調子に乗りやがって。」
俺は教室を見回す。
「おい、お前ら行くぞ!」
「おう!」
「いってらっしゃい」
よしきだけは行く気がないようだ。
「おう。おめーは来ねーのか?」
「校則覚えるので忙しいから」
一生懸命担任が配ったプリントを見ている。
「なら仕方ねぇ。早く覚えろよ」
勉強してるなら仕方ねぇか。
俺はモヒカン1を見る。
「モヒカン1。お前、他の一年にも声かけてこい」
「分かったぜ!」
しばらくして、モヒカン1が戻ってきた。
「湊さん。今学校にいる一年、みんな集めました」
「おし!」
俺は立ち上がる。
「騎獣に乗って行くぞ! ないやつは誰かに乗せてもらえ!」
「おう!」
どこ行けばいいんだ?
つんつんなら知ってるはずだ。
「おう。つんつん」
「なに?」
「あいつら、どこに溜まってるか知ってるか?」
「いつも勇者の銅像があるツァスコに溜まってるよ」
ツァスコとは食料品から服、家電まで何でも売っている大型スーパーだ。この辺の中学生が遊びにいくのは大体あそこだ。
「おう! みんな聞いたか!」
俺は一年たちを見回した。
「勇者の銅像があるツァスコに行くぞ!」
「おおおお!」
様々な騎獣が、一斉に音を鳴らす。
ブォン!
ドドドドド!
ガルルルル!
俺たちは一斉に勇者の銅像があるツァスコへ向かった。
ツァスコへ到着した。
駐車場は広く、校庭四つ分はありそうだ。
そして駐車場の端っこの方にそれらしい集団がたむろしていた。
「湊さん。あそこにいるやつら、不死鳥の旗持ってます」
「おう」
俺は前へ出る。
「おめーら、舐めた真似してくれんじゃねーか」
向こうの一人がこっちを見る。
「あーん? おめー誰だ?」
「魔獣学園の一年総長、湊だ!」
その瞬間。
魔獣学園の一年たちが一斉に俺を見る。
「!?」
「そんなのあったの?」
「知らん」
「今考えたんだろ」
「明日には忘れてるだろ」
まぁもうすぐ魔獣学園の番長になるから忘れるというのもあながち間違っちゃいねーな。
不死鳥のリーダーらしき男が前へ出てきた。
そいつは白い特攻服を着ていて、背中には大きく不死鳥と書いてある。なかなかイケてる服装だ。靴は白いブーツみたいなものだった。
そいつは言った。
「魔獣学園一年総長だとぉ?」
鼻で笑う。
「聞いたことねーな」
「だったら今日覚えて帰ってもらうだけだ」
俺は剣を抜いた。
「おめーら、準備はいいか!」
「おう!」
一年たちが答えながら武器を構えた。
不死鳥のリーダーも叫んだ。
「こいつら、やっちまいな!」
一斉に戦闘が始まった。
戦闘に慣れている魔獣学園の方が、押している。
「おらぁ!」
「ぐわっ!」
「次!」
俺もリーダーに向かって進んでいく。
「この親衛隊隊長の俺を倒さないとここから先には進めねーぞ」
「なんだおめーは」
みるからにひょろひょろなやつが俺の前に現れる。
そいつはハンマーを俺に振り下ろしてきた。
俺は軽く横にかわす。
ドーン。
ハンマーは地面を打ちつけた。
「いてー」
ひょろひょろのやつは手がしびれたのかハンマーから手を放した。
「なんだこいつは?」
俺は剣を振り下ろす。
ザシュ。
ひょろひょろのやつは倒れた。
その様子を見て、不死鳥のリーダーが叫んだ。
「待て!」
「なんだ?」
「俺らは走り屋だ!」
「だからなんだよ」
「走りで負けたら、お前らの傘下に入ってやる!」
傘下に加わるのは悪くない。
「上等だ! 俺が相手してやる!」
俺は剣をしまった。
それを聞いていたゴリラが大声で叫んだ。
「みんな戦闘中止だ!」
みんな一斉にゴリラを見る。
「頭同士で決着をつける!」
戦っていた連中は全員手を止めた。
俺を見て、不死鳥のリーダーがニヤッと笑った。
「チキンレースで勝負だ」
リーダーは遠くにある壁を指差す。
「あの壁に向かって、一斉にアクセル全開で走る」
「ほう」
「そして、止まった場所が壁に近い方の勝ちだ」
「やってやろうじゃねーか!」
俺はグレードボアを撫でた。
「俺のボアちゃん舐めるなよ」
不死鳥のリーダーも、自分の騎獣へ乗る。
ダチョウ型だ。
相手は俺のグレードボアを見る。
そして笑った。
不死鳥のリーダーは思った。
あいつのボア型はたぶん加速は同じくらい。
だが、型が古い。
俺のダチョウ型には、安全セイフティーシステムが付いている。
アクセル全開でも、壁の手前で勝手に止まる。
絶対に負けない。
「何ニヤニヤしてんだ?」
俺はニヤニヤして、気持ちわりーなと思った。
「なんでもねーよ」
そう言いながらにやけていた。
二台がスタート位置へ並ぶ。
周りに一年たちと不死鳥メンバーが集まった。
ゴリラも気合いが入っているようだ。大きな声で叫んだ。
「いくぞ!」
「三!」
「二!」
「一!」
「ゴー!」
ドォン!
二台が一斉に飛び出した。
「うおおおおお!」
俺はアクセルを全開にする。
恐らく向こうも全開だ。
壁がどんどん近づいてくる。
「おい!」
見ていたゴリラが叫ぶ。
「二人とも全然ブレーキかける気ねーぞ!」
つんつんも叫ぶ。
「ぶつかるぞ、このままじゃ!」
その時。
キキキキキキィィィ!
ダチョウ型が急ブレーキをかけた。
「くくく」
不死鳥のリーダーが笑う。
「安全セイフティーシステムだ!」
ダチョウ型は止まり始める。
不死鳥リーダーはこっちみて笑った。
「それじゃあ、お前は止まり切れねーぞ!」
「うおおおおお!」
俺もブレーキをかけた。
キキキキキ!
だが。
遅い。
止まり切れない。
「湊ぉぉぉ!」
壁が目の前まで迫る。
「うおおおおおおお!」
ズドォォォォン!
グレードボアごと壁へ突っ込んだ。
壁が粉々に吹き飛ぶ。
瓦礫が舞う。
そして。
壁があった場所に俺はいた。
「…………」
周りが静かになった。
少し遅れて。
キィィィ……。
不死鳥のダチョウ型が、壁があった場所の少し手前で止まる。
不死鳥のリーダーが降りた。
俺もボアちゃんから降りる。
「俺の方が壁に近いな」
「…………」
壊れた壁を見る。
「俺の負けだ! 今日から不死鳥は、魔獣学園一年総長の下につく!」
「今日は関東制覇の第一歩だ!」
俺は叫んだ。




