↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

マリア再び

「おい、ゴリラ、つんつん。バッティングセンター行くぞ」

「ホームランか?」

ゴリラが聞いた。

「違う。今日はデッドボールの方だ!」

「さては昨日、WBBC見たな?」

つんつんも続く。

「ワールド冒険者ベースボールカップ、最高だよね」

反応を見る限り、二人とも見ていたようだ。

「おうよ。あれ見て、なんだか熱くなっちまってよ」

「決まりだな。行くぞ」


「おいらも連れてってよ」

横から声がした。

弓使いだ。


弓使いは、学ランを着ていて、背中には矢筒を背負っている。

身長は俺と同じくらい。

体つきは少し細身で、いかにも素早そうな見た目をしていた。


「おいらも見てたら、やりたくなったからさ」

「おう。弓使いも一緒に行くぞ」

俺たちは教室を出た。


「それにしても、こないだホームラン行った時は最悪だったな」

「何かあったの?」

弓使いが聞いた。

「聖女学園のやつらに絡まれてよ」

「あー。あそこの子たち、プライド高いからね」

「最悪だったよな」

「ああ」

ゴリラも頷く。


つんつんが胸を張った。

「僕なんて革の鎧、錬金術屋に持ってって炎耐性+3付けてもらった」

「すげーじゃねーか」

「バイト代すっからかんだよ」

確かに鎧の色が少し変わっている。


ゴリラも得意げに言った。

「俺は土の魔法からの逃げ方研究しといた」

「どうやるんだ?」

「地面が柔らかくなった瞬間、横に逃げれば避けられる」

「なるほどな」

「まあ、そうそう会うこともねーと思うけどな」


「そういえば、おいら騎獣ないんだけど」

弓使いが言った。

「問題ねーよ。俺のボアでタンデムすりゃいい」

「ありがとう」


騎獣置き場に着き、弓使いを後ろに乗せる。

「それと、今日もビリが一回分な」

「今回は負けねー」

「今日は俺が勝つ」

つんつんもやる気のようだ。


「よーい。どん!」

俺の掛け声で、一斉に魔獣学園から飛び出した。


俺たちは駅前の騎獣置き場に騎獣を停めて、デッドボールへ向かって歩いていた。

「湊、一回分ごちな」

「ふざけんな。なんで俺が負けんだよ」

「腕が落ちたんじゃねーの」

二位のくせに、笑いながらゴリラが言う。

「負けた理由が全然わかんねー」

つんつんは嬉しそうな顔をして言った。

「俺たちが速くなったのかも」


その時だった。

「インフェルノ」

横から声がした。

ゴォォォォォ!

「ぎゃあああああ!」

つんつんが炎に包まれた。

その場で転げ回る。

「熱い! 熱い!」

「つんつん!」

声を掛けながら炎が飛んできた先を見る。


そこには、またあの聖女学園の三人が立っていた。

「なんでこんなところにいるのかしら」

真ん中に立っていたマリアが不思議そうな顔をしている。

「もしかしたら、マリア様のストーカーかもしれませんわ」

「まあ、怖い」

二人が口元に手を当てる。


マリアがつんつんを見る。

「それにしてもゴミのくせに、生意気に革の鎧+3なんて着て」

「おかげでインフェルノを使う羽目になってしまいましたね」

「ゴミにはもったいなすぎますわ」


「ふざけんな!」

俺はとっさに剣を抜き、襲いかかった。

右にいる女が叫んだ。

「ウインドカッター」

鋭い風が飛んでくる。

「くそっ!」

剣で弾く。

「やっぱり近づけねぇ!」


「俺に任せとけ!」

ゴリラが大剣を構えて突っ込んでいく。

マリアが静かに手を上げた。

「土葬」

足元の地面が柔らかくなる。

「食らうかよ!」

ゴリラが横へ飛ぼうとした。


「うおっ!?」

柔らかくなった地面に足を取られた。

うまく飛べない。

そのまま身体が沈んでいく。

「ぐわぁぁぁぁ!」

ズボッ!

ゴリラは地面へ飲み込まれた。

「ゴリラは埋めるに限りますわ」

「さすがマリア様」


「ったく」

俺はため息をつく。

「二人とも成長しねーな」


次の瞬間今度は左の女が叫んだ。

「アイスニードル」

無数の氷が飛んできた。

「っと!」

俺は剣で払いのける。

「と言っても」

剣を構え直す。

「お前らも成長してねーな」


「はぁぁぁぁ!」

剣へ気合いを集中する。

そして振り下ろした。

「スキル、みなとブレード!」

ブォン!

剣圧がマリアへ飛んでいく。


「マジックバリア」

ガキン!

薄く光った膜のようなものに弾かれた。


「なんだと!?」

もう一度、気合いを溜めて剣を振る。

「みなとブレード!」


カン!

また弾かれた。


マリアの左にいた少女が笑う。

「そういった魔法みたいなものは、マリア様には届きませんよ」

「バカには分かりませんことよ。おほほほ」

マリアは笑いながら返事をしていた。

「誰がバカだ!」


その時。

後ろで弓使いが弓を構えていた。

「物理的なおいらの弓は防げないだろ」

矢をつがえる。

「謝るなら今のうちだぞ」

マリアが首を傾げた。

「ゴミに何を謝罪しろと?」

「後悔するなよ」


弓使いが矢を放った。

ひゅん!

矢が一直線にマリアへ向かう。

くいっ。

突然、矢が不自然な方向へ曲がった。

そのまま明後日の方向へ飛んでいく。


「なに!?」

マリアが微笑む。

「シルフさん、ありがとう」

「なんだ? シルフって?」

「バカは知らなくていいですのよ」


マリアが手を向ける。

「ファイヤーボール」

巨大な火の玉が弓使いへ飛んだ。

ドォン!

「ぎゃああああ!」

弓使いも炎に包まれ、その場を転げ回る。

「熱い! 熱い!」


俺は周りを見る。

つんつんと弓使いは燃えている。

ゴリラは埋まっている。


「くそっ。どうしたらいい?」

俺は突破口を考える。

その時。

「お嬢さんたち、どうしました?」

聞き覚えのある声がした。


いつの間にか、マリアたちの横にミハエルが立っていた。

「ミハエル様!」

「マリア様がストーカーされているみたいで。助けてください」

ミハエルが俺を見る。

「なるほど」

少し考える。

「確かにモテなそうな顔をしていますね」


「なんだと!」

「私がきっちり教えておきます」

そう言って、ミハエルはニヤッと笑った。

「冒険者ベースボールバッティングで勝負をつけましょう」

「いいぜ。俺も昨日からうずいていたからな」

俺は剣をしまった。


そして、動けるやつらだけでデッドボールへ向かった。

「勝負は簡単です」

ミハエルが鉄のこん棒を持つ。

「どちらが多く点を取れるか。それだけです」

「望むところだ」


冒険者ベースボール。

飛んでくる鉄球を鉄のこん棒で打ち返し、相手選手にぶつけて倒す競技だ。

これを攻守交代しながら七回繰り返す。そのあと、応援合戦を行い、その点数も追加する。

そして、冒険者ベースボールバッティングは、その打撃練習用のものだ。

人の代わりに、大きさや重さの違う的が並べられている。

一人二十球ほど打ち、倒した的の点数を合計する。

今回は、この冒険者ベースボールバッティングの合計点で勝負する。


「では、まず私から行きましょう」

ミハエルが打席へ入る。

次々と飛んでくる鉄球を打ち返していく。

カキン!

ガン!

ドォン!

次々と的が倒れていった。

結果。


二十五点。


「君に越えられるかな?」

どや顔でミハエルは言った。

「さすがミハエル様!」

「素敵ですわ!」

黄色い声援が飛ぶ。


「次は俺だ」

俺は鉄のこん棒を持って打席へ入った。

カキン!

ガァン!

バキン!

順調に点数を重ねていく。


最後の一球を残して二十四点。

あと一つ、どの的でもいいから当てれば俺の勝ちだ。


「もらったぜ、この勝負」

鉄の球が飛んでくる。

その時、誰かの声が聞こえた。

「スリップ」

「え?」

つるっ。

突然、足が滑った。

体勢を崩す。

ほぼ同時に違う声が聞こえた。

「ウィンドムーブ」

頭と体が押される。

「うおっ!?」

そこへ。

ゴンッ!

鉄の球が頭へ直撃した。

「ぐわっ!」

そのまま俺の意識は消えていった。



「お客さん。もう閉店だから帰ってくれ」

「ん……?」

目を覚ますと、店長が俺の肩を揺らしていた。

「閉店?」

頭がフラフラする。


辺りを見る。

もう誰もいない。

ミハエルたちはいなくなっていた。


外に出てゴリラたちを探す。


何かが土から這い出した跡があった。

「ゴリラ出られたか」

二人を担いで教会にでも行ったか。


俺は潰すノートにミハエルとマリア、それとビアンカとアンナの名前を書き足した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。