田中
今日もいい天気だ。
今日も教室でゴリラと駄弁っていた。
ゴリラが聞いてきた。
「おまえ、学校のてっぺん取るって言ってたけど、どうなってんだよ」
「たまにあいつらのたまり場行ってんだけど、学校来てねーんだよ」
「毎日は行かねーのか?」
「毎日はめんどくせーからなぁ。屋上とか旧校舎とかマンホールの中とか結構遠いんだよ」
「それなら仕方ねーな」
その時だった。
「たいへんだー! たいへんだー!」
つんつんが叫びながら教室へ飛び込んできた。
相当急いだのか息を切らせている。
「どうした?」
俺は聞いた。
「マンモス校のやつらが殴り込みに来た!」
「なんだと?」
あいつらが攻めて来ただと? ずいぶん調子くれてんな。
つんつんが息を切らしながら続ける。
「三年の武田を筆頭に三百人くらいはいる!」
マンモス校。
隣駅にある学校で、魔獣学園ほどではないが、そこそこヤバい学校として知られている。
生徒数は三百人とすごい生徒が多いわけではない。
だが、校長の野望がでかいためマンモス校という名前がついたという噂だ。
就職率もそこそこ。
中の下の高校だ。
俺は席を立ちながら言った。
「あいつらに攻められるなんて、随分舐められたもんだな」
「そうだな」
ゴリラが答える。
「お前ら、付いてこい」
俺は歩きながら教室の生徒に声を掛ける。
「おう」
みんな一斉に席を立つ。
「つんつんは他の一年にも声かけてこい」
「分かった!」
俺たちは校庭へ向かった。
少し遅れて、つんつん、小野、そして他の一年たちもやってくる。
「これで大体揃ったな」
校庭には槍を持った連中がずらっと並んでいた。
一方で、校舎の窓から、その様子を見ている集団がいた。
「今年の一年は、生きがいいのが入ったって噂じゃねぇか」
二年で一番大きな勢力。
神山一派の神山だ。
神山は窓枠に肘をつきながら笑った。
「ちょっと見させてもらうか」
隣にいた男へ顔を向ける。
「戸田たちにも、まずは見物しようぜって言ってこい」
「はい」
有山は走って教室を出ていった。
校庭では、マンモス校の先頭にいた男が一歩前へ出てきた。
「おめーらが調子に乗っていられるのも今日までだ!」
俺は剣へ手をかけながら言った。
「おいおい。うちに舐めたことしてくれてるな」
男が笑いながら名乗った。
「俺の名前は武田だ。一生忘れられないようにしてやんよ」
槍を肩に担ぐ。
「舐めてんじゃねーぞ!」
俺は剣を抜き、一気に走り出した。
マンモス校は槍を使うやつが多いことで有名だ。
前へ出ようとするたび、何本もの槍が突き出される。
「ちっ!」
剣で弾く。
また別の槍が飛んでくる。
「なかなか近づけねぇな」
ゴリラが大剣を振り回し、槍を払いながら俺を見る。
「どうすんだ?」
「仕方ねぇ」
俺は剣を両手で握った。
「あれやるしかねーな」
「なんだ? とっておきでもあるのか?」
「おうよ」
これを見たらゴリラたちは驚くに違いない。
俺は剣へ力を込める。
「はぁぁぁぁぁ!」
気合いを全部剣へと集中する。
そして振り抜いた。
「スキル、みなとブレード!」
ブォン!
剣圧が一直線に飛んでいった。
「ぐはぁ!」
マンモス校の一人が吹き飛ぶ。
ゴリラが目を見開いた。
「すげーじゃねーか、湊!」
しかし、一人倒したところで、相手は三百人いる。
こっちは一年だけ。
「スキル、みなとブレード!」
皆奮闘しているが徐々に押され始めた。
「くそっ、多すぎんだろ!」
その時だった。
ブォォォォン!
どこからか騎獣の音が響いてきた。
「なんだ?」
全員が振り返る。
一人の男が、大きなワニ型騎獣に乗って校庭へ入ってきた。
一見すると、普通の大型ワニ型騎獣にしか見えない。
だが、ただの騎獣じゃねーのはなんとなく分かった。
男は俺たちを見て笑う。
「おう。一年、頑張ってんな」
ワニ型騎獣の頭を軽く撫でた。
「これくらい蹴散らせねぇようじゃ、魔獣学園代表にはなれないぜ」
「なんだと?」
俺は男を睨む。
その時、つんつんが叫んだ。
「田中さんだ!」
「田中?」
こいつが田中か。
俺の潰すノートに書いてある名前の一つだ。
田中は俺を見ると笑った。
「まあ見とけって」
そのままワニ型騎獣に乗って、マンモス校へ向かっていく。
「何する気だ?」
マンモス校の連中が槍を構えた。
だが、まだ距離がある。
「おらいけー」
田中が叫ぶ。
次の瞬間。
ワニが口を開いた。
ゴォォォォォ!
炎が噴き出した。
「ぎゃあああああ!」
「熱い! 熱い!」
マンモス校の連中がまとめて燃えた。
つんつんが叫ぶ。
「噂の改造ワニ型のワニブレスだ!」
「ワニブレス!?」
聞いたことねぇ改造だ。普通の改造ではないかもしれねぇ。
「おらいけー!」
田中が声を上げる。
ゴォォォォォ!
ワニの口から炎が噴き出される。
槍なんて届く距離じゃない。
一吹きするたび、十人以上が燃えていく。
「なんだあれ。すげーな」
ゴリラが呆然とする。
つんつんが得意そうに頷いた。
「あれが改造のすごさだよ」
田中は笑いながら校庭を走り回っていた。
「ははは! おめーら燃やしちゃうぞー!」
ゴォォォォォ!
「ぎゃあああ!」
マンモス校のやつらは、このままだと燃えるしかないだろう。
しばらくすると、武田が叫んだ。
「撤退だー!」
武田たちは逃げていった。
校庭には、まだ動けなくなった黒焦げの人間が転がっている。
田中が俺の前で騎獣を止めた。
そして顔を覗き込んできた。
「お前が一年の湊か」
「そうだ」
俺も田中の目を見た。
「まだまだだな」
「なんだと?」
「二年のやつらを何とかしたら、相手してやるよ」
田中が笑う。
「まあ、お前じゃ無理だろうけどな」
「てめ――」
ゴォォォォォ!
帰り際。
ワニが、地面に転がっていたマンモス校の生徒へもう一度炎を吐いた。
「ぎゃああああ!」
「ははは!」
そのまま田中は学校から出ていった。
「……一人で終わらせやがったな」
俺は呟いた。
隣を見る。
ゴリラが少し震えている。
「三年って、やっぱ化け物みたいだな」
俺は遠ざかっていく改造ワニを見た。
「てっぺん取るために三年以内にあいつをぶっ倒さねーといけねーな」
「あー、そうだな」
ゴリラも同意した。
二人とも、三年が来年卒業することを忘れていた。




