三大派閥誕生編⑦ 解決編
「急報! 急報!」
井上は五人の前まで来ると、膝に手をついた。
「はぁはぁはぁ」
息を整える暇もなく顔を上げた。
「聖女加藤が今日の夕方から出張らしい」
「!?」
太田は焦った。
「ほんとか?」
「ほんとだ! 一週間は帰ってこないらしい」
「それはまずいな」
聖女加藤とは魔獣学園の教会室の先生だ。
教会室の治療は有料だが、普通の教会の三分の一程度の金額で済む。
その聖女加藤がいなくなると外の教会に行かなければならないのだ。
「代わりの聖女は来るのか?」
「どうやら来ないらしい」
「おい、早く治療受けねーと、やべーぞ」
魔獣学園の生徒はお金がない生徒が多い。
しかも、ツケで治療してくれるのは学校の教会室だけだ。
ツケがある者は普通の教会では診てくれないこともある。
太田が叫ぶ。
「今日はここまでだぁ」
「まずは重傷者から教会室に連れていけぇ」
もともと恨みがあるわけではないので、グループ関係なしに助け合う。
イチローが言った。
「こんなに怪我したのはいつぶりだろうな?」
まもるも笑う。
「あぁ。教会室は送ることはあっても、あんま行くことはなかったな」
二人は笑い合う。
太田も笑っていた。
「いつも、三人で送ってたな。でもお前らとやりあうのも面白かったぜ」
田中も佐藤の近くによる。
「おめーの魔法もなかなか大したもんだな。今度俺のワニ男と炎対決しようぜ!」
「……」
「なんだと、俺のワニ男をなめんなよ」
「……」
「ちげーねぇ、おめぇの言う通りだ!」
全力を出したためか、和やかなムードになった。
教会室では聖女加藤は出張の準備をしていた。
「こいつ診て下さーい」
「出張の準備をしているので、少しお待ちください」
そう言って、富士山の絵の方に祈りを捧げていた。
「こっちもお願いしまーす」
「俺の手も付けて下さーい」
次々来るので聖女加藤は祈りを諦めて治療することにした。
「はぁ、この学園だと祈る暇もない。並んでくださいねー」
夕方には全員の治療が終わり、聖女加藤はほっとした。
そして、聖女加藤が戻るまではと、みんな大人しくしていた。
数日後。
太田は夜、騎獣-1グランプリ第2戦を見ていた。
画面の中ではユニコーンと疾走トカゲが最後のデッドヒートを行っている。
パカラッ、パカラッ。
ガササササ。
「疾走トカゲ行けぇ!」
パカラッ、パカラッ。
最後、更に加速したユニコーンに疾走トカゲは抜かれてしまった。
「疾走トカゲ負けちまったかぁ。ユニコーンはえーなぁ」
太田は悔しがった。
その時太田は思った。
速いの決めるのレースでいいんじゃないか?
ふと、そんな考えを頭がよぎる。
ピコリロリン!
そのとき太田のスマホが鳴った。
ピコリロリン!
ピコリロリン!
次々にメッセージが届く。
太田はスマホを開いてみた。
「レースで決めたらいいんじゃない?」
「騎獣-1見てて、これでいい気がしてきた」
「レースで決めよう」
田中派のグループSNSだ。
太田も送る。
「俺もそう思った。レースで決めればいいな」
ピコリロリン!
「言ってる意味が分かんねー!」
ピコリロリン!
「レースすれば、速い奴分かるだろ」
ピコリロリン!
「投票は国民の権利じゃねーのかよ」
一部よくわかっていない奴もいたが、だいたい同意見のようだった。
太田は送った。
「明日説明する」
太田はあいつらにも送ることにした。
「レースで決めたらいいんじゃ」まで打ったところで。
ピコリロリン!
まもるから三人のグループにメッセージが来た。
「レースで決めるのが早いね」
太田は書き途中の文字を消して打ち直した。
「俺もそう思った。レースで決めればいい」まで打ったところで。
ピコリロリン!
イチローからも返信が来る。
「俺もそう思った。レースで決めるべ」
太田は再度文字を消して打ち直して送信した。
「これの話から始まったのにな笑」
まもるからさらに返信が来る。
ピコリロリン!
「まぁ楽しかったな。また、三人でも集まろうぜ」
最近はお互い違う溜まり場に集まるようになって話す機会は減っていた。
こうして騎獣の速さを決めるために集まった三つのグループは、その後もそのままたまり場に溜まっていた。




