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三大派閥誕生編② 体育館

今の3年が2年の時の話です

放課後。


突然呼ばれた二年生たちはこれから起こるであろうことを思い思いに話していた。


ステージの上には太田、まもる、イチローの三人が並んでいる。


太田は腕を組み、まもるは剣と盾を持ったまま立っていた。

イチローは長ランのポケットに手を入れ、二年生たちを見下ろしている。


その三人の少し前に、井上が立っていた。

「おーい! 静かにしろー!」

井上が大声を出した。


体育館のざわめきが少しずつ小さくなる。

「今日は二年全員で決めることがある!」

「やっぱ戦争か!?」

「どこ、潰すんすか―?」

誰かが叫んだ。


井上は後ろにいる三人を見る。

太田が頷いた。

「始めてくれ」

「おう」

井上は二年生の方に体を向ける。


「まず、名前を呼ばれた奴は前に来てくれ!」

井上は手元の紙を見る。

「田中!」


人混みの中から、一人の大男が出てきた。

背が高く、鍛えられた上半身には何も着ていない。

下は黒いハーフパンツ。

足元には茶色のブーツを履いていた。

背中には大きな大剣を背負っている。

大剣の陰から大きなワニの入れ墨が見える。

そのワニの口からは炎のようなものが描かれていた。


田中はそのままステージの前まで歩いてきた。


田中はよくわからないが井上が指さしたところに立った。

「ここでいいのか?」

「おう。そこで待っててくれ」


太田が田中のところまで行って、肩をたたいた。

「なんだよ」

「おめーが一番だ。俺が知ってる」


井上が声を張り上げて言った。

「次、佐藤!」


今度は緑色のローブを着た男が前へ出てきた。

井上が指さした、田中から少し離れたところに立った。

手には杖を持っている。

先端がくるんと上を向いた、ピエロみたいな黒い靴を履いていた。

魔獣学園には珍しく魔法が使える。

佐藤は一切しゃべらないせいで、他の高校の面接に受からなかった。


「……」

まもるは佐藤の近くに近づき満足そうに頷く。


井上は再度声を張り上げた。

「最後、鈴木!」

人混みの中から、小柄な男が出てきた。


三人の中では一番背が低い。

普通の学ランを着て、足元は白いスニーカー。

背中には弓を背負っている。

見た目だけなら、田中や佐藤と並ぶような男には見えなかった。

鈴木は大人しそうな顔で前へ歩いてくる。


同じように鈴木も井上が指をさしたところに移動した。

イチローが近寄ってくる。

「おめぇが一番ってことは、俺がよーく知ってるからな」

「はぁ」

鈴木は何を言っているか分からなかった。



田中。


佐藤。


鈴木。


三人が体育館の前に並んだ。


田中は強い。

騎獣のワニも強いが、本人も普通に強かった。


佐藤も強い。

そして魔獣学園では珍しく、魔法まで使える。


鈴木だけは少し違った。

荒事は苦手だが騎獣の操作は二年全員から一目置かれていた。


去年、田中、佐藤は太田たちと何度もいざこざがあった。

タイマンなら、負けないかもしれない。

だが三人揃った太田たちには勝てなかった。



井上が二年生たちを見る。

「今日決めるのは、この三人のうち誰の騎獣が一番速いかだ!」


そして誰かが叫んだ。

「鈴木のテクで決まりだろおお!」

「いや佐藤のダチョウの速さには届かねーよ!」

「わかってねーな。田中のワニだろうおお!」

みんな思い思いに叫びだす。

一人の男が言った。

「集まったはいいけど、どうやって決めんだ?」

一瞬、体育館が静かになった。


井上は声を上げる。

「よく聞いてくれた。まずはおめーらの意見を聞く。この三人の中で一番騎獣が速いと思う奴の前に行ってくれ!」


体育館にいた二年生たちが一斉に動き出した。

一直線に向かうもの。

迷って選ぶもの。

どこに行っていいのか分からないもの。


しばらくして、二年たちの動きが止まった。

井上が叫ぶ。

「ファイナル冒険者アンサーでいいな?」

二年の全員が叫んだ。

「ファイナル冒険者アンサーだぁぁ」


井上は頷いた後、人数を数える。

「田中、十五人!」

「佐藤、二十五人!」

「鈴木、三十五人!」


そして、まだ四十人ほどが体育館の中央に残っていた。


井上がそいつらを見る。

「お前らは?」

「わかんねー」

「興味ねー」

井上は頷いた。

「じゃあお前らはその他ってことだな。続いて民主主義で決める!」


二年たちがざわめき始める。

「民主主義?」

「なんだそれ?」

そのとき、一人の生徒が手を上げて言った。

「俺、それ聞いたことあるぞ!」

「知ってんのか?」

二年たちの視線が集中する。

「民の意思で決めるやつらしい」

また、二年たちはざわめきだす。

「民の意見?」

「わかんねー」

「そもそも民ってなんだ?」


太田が大きな声でしゃべりだした。

「さっきのやつが言った通り、民主主義とは民の意思で決めることだ。そして、民とは俺たちのこと。要するに俺たちの意思。つまり、力のつえーところが、一番はえーってことだ」

「おおお」

歓声が上がる。

「これが民主主義か! 確かにすげぇ制度だ」

生徒の全員が納得した。


さっき民主主義を知っていた生徒が言った。

「民の意思を決める日は、投票日って日に決めるって聞いたことがある」

「投票日?」

また、ざわめきだす。

太田が言った。

「その投票日は明日からだ」

田中が聞いた。

「で、投票日はいつまでだ?」

「速い奴が決まるまでだ!」

太田が答える。

「なるほど」

イチローが叫ぶ。

「文句あるやつはいるかぁ?」

「民主主義最高だ―」

「いるわけねーだろ」

佐藤、田中は頷いていた。

鈴木は震えながら小さな声で言った。

「レースの方が……」

鈴木の声は小さく誰の耳にも届かなかった。

そんな鈴木をみてイチローは肩をたたく。

「武者震いして、早速やる気だな!」


ざわめきが収まらない中、井上が叫ぶ。

「投票日は明日から! 誰の騎獣が一番速いか決まるまでだぁぁぁ!」

「おおおお!」

体育館に歓声が響いた。


こうして、二年で一番速い騎獣を決める投票は、翌日から始まることになった。

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