飼育係
今日もいい天気だ。
俺はいつものところに騎獣を停めて、教室へ向かった。
教室に着き、席に着くとゴリラが話しかけけて来た。
「おう、湊。久しぶりだな。何してたんだ?」
三日ぶりのゴリラだ。
「三日間吊るされてたよ」
「なんだよそれ。相変わらず意味わかんねーことやってんなぁ」
「まあ試合には勝ったんだけどよ。勝負に負けたから、いつかリベンジしねーとな」
「おいおい。しっかりしてくれよー!」
そんな話をしていたら、教室の前の方から音が聞こえてきた。
ガラガラ。
教室の扉が開き、おっさんが入ってきた。
確か担任だったと思う。
見るのは二回目だ。
「今日は係を決めるぞー」
モヒカンたちが急におとなしくなった。
「せんせーい。高校なのに係なんてあるんですかぁ?」
「おう。二つ係があるんで説明するから、よく聞いとけ」
「はーい」
みんなが答える。
「一つ目は飼育係だ」
「飼育係?」
「そうだ。魔獣学園の由来知ってるだろ?」
「……」
誰も答えない。
「知らねーのか。お前、言ってみろ」
福山が木刀を弓使いへ向ける。
「魔獣がいるからですか?」
自信なさそうに答えた。
「おー、知ってんじゃねーか。次、お前。何がいるか言ってみろ」
福山は少し満足そうに見える。
今度は木刀をゴリラへ向ける。
「……分かりません」
ドーン!
福山は教卓を蹴飛ばした。
「知らねーだと。じゃあお前、どっちかの係決定な」
「え?」
「なんだ。嫌なのか?」
「いやと言うわけではないのですが、ちなみにもう一つの係は何ですか?」
ゴリラが聞いた。
「もう一つは餌係だ」
「?」
福山は続ける。
「こっちは何人でもいいぞ」
「飼育係と餌係って違うんですか?」
「全然違うぞ。おめーら知らねーのか。知ってる奴いたら手を挙げろ」
「……」
誰も手を挙げない。
「誰も知らねーのか。中学で何習ってきたんだ」
福山は木刀を肩に担いだ。
「飼育係は飼育する係で、餌係は餌になる係だ」
「!?」
教室がざわついた。
「おう、たけし。お前どっちがいい?」
たけし?
誰のことだと思った瞬間、ゴリラが答えた。
「飼育係やります」
少し怯えた顔をしていた。
「おう。じゃあ、たけしは飼育係な」
福山はたけしを見た。
「もし魔獣が死んだら、路頭に迷うからしっかりやれよ」
「俺、退学になっちゃうんですか?」
「はあ。何言ってんだ。廃校に決まってんだろ」
「!?」
「お前が路頭に迷ったっていいじゃねぇか。俺が路頭に迷うから気合い入れろって話だろ!」
「はい」
「路頭に迷うのはあれだから、たけしの人生ログアウトさせて、俺も塀の中に就職することにしてもいいかぁ」
脅しではなく本気で考えていることが口から洩れているだけのようだった。
ゴリラは背筋を伸ばした。
「飼育係は決まったから、次! 餌係に立候補するやついるか?」
「……」
誰も手を挙げない。
「毎年ここで、もめんだよなぁ。めんどくせー」
福山は木刀をモヒカン1へ向けた。
「おめーでいいか」
モヒカン1も姿勢を正した。
「嫌でございます」
「……そうか」
福山はうんうん頷いていた。
また、福山は教室を見回す。
「おめーはどうだ?」
よしきに木刀を向けた。
「校則を覚えるのに忙しくて」
「それじゃあ、しょうがねえな」
福山は木刀を下ろした。
また、福山は教室を見回す。
生徒全員下を向いて黙っている。
「よし、推薦方式にするかぁ。困ったときはこれだよなぁ」
みんな息を飲んだ。
そして、誰もが推薦されるのが嫌だと思った。
「誰か? 推薦したい奴はいるかぁ?」
「……」
殺したい奴と同じなのではと思った。
「おう、たけし。お前と一瞬だけどコンビ組むわけだからお前推薦しろ」
たけしは怯えながら言った。
「え? 俺が?」
「そうだ。嬉しいだろ?」
「まだ、俺、みんなのことよく知らないので……」
「ちっ。それじゃあ、選べねーなぁ。もうちょい仲良くしとけ」
福山は教室の時計を見た。
「まぁいい、おめーら次までに餌係決めとけよ」
そう言って扉の方に歩いていく。
ガラガラ。
バン!
担任の福山は不機嫌そうに教室を出ていった。




