第八話 最弱トカゲに転生した俺、ガスタを煽り倒す
先程まで青空だったが日差しが曇り、少し蒸しっとした暑さになる。
アルカディアの街行く人達の種族は様々だ。
猫耳がピコピコと動く、獣人族の女性や狼の顔をした鎧を着た男のトレーナーもいる。
獣人族に共通して言えるのは体が引き締まっていることだ。
猫耳の女性なんて、Dカップのお胸と谷間が覗いていて非常にふしだらだ。
これで生足が見えたら、そのお尻とお胸をガン見させてください! というかもしれない。
『さっきから、レディを肩に乗せているのに、猫人族をガン見しているのは何かしら?』
『……おっぱい』
『は?』
『あの女性のおっぱい、いっぱいおっぱい!』
『何を言っているのか、わからないけどとりあえず思いっきりビンタしていいかしら?』
『だってレンカちゃんにはおっぱ……』
ブゥン!
レンカちゃんが俺の肩から降りて、思いっきり俺のすねに尻尾を叩きつける。
痛い! 痛いよ!
人化の鏡は一定量のダメージを食らうと解けちゃうんだよ⁉
『どうどう!』
『あたしは馬じゃないわ! もっとあなたのすねに攻撃していい?』
『す、すみませんでした』
俺とレンカちゃんが馬鹿なことをやっていると、周りにいたトレーナーや後ろにいたガスタが騒ぎ出す。
「大変だ! エルモンがトレーナーに攻撃しているぞ!」
「トレーナーギルドに通報だ!」
「フフフ、服従の鞭を持っていなかったのでまさかと思いましたが、服従させていないとは。ああ、これは危険ですねえ!」
レンカちゃんは狼狽える。
『え? どういうこと?』
『俺にもさっぱりわからん』
ニヤニヤ笑いを浮かべた、ガスタが後ろから近づいてくる。
「危険な野良エルモンを連れたトレーナーは法によって裁かれるのですよ! あーはっは
」
俺は無表情でデブ商人のガスタを見つめる。
この場を切り抜けるにはレンカちゃんに服従の鞭を使って、後で解呪のペンダントで解除することだ。
だが俺はそれはしたくない。
「俺はレンカちゃんと心が通じ合っているからな。さっきのはほんの戯れだよ」
「何を言うのです! エルモンに脛を叩かれているのを見ましたよ! しかもエルモン如きに名前を付けるとは‼ あーはっは!」
ガスタが俺を指さして、高笑いをすると、アルカディアの街の人間たちがそれを真似して笑う。
ぷぷぷ。馬鹿な新米だねえ。
黒髪黒目の異国人かよ! 常識を知らないなら出て行け!
がっはっは! 頭の悪そうな眼付きだねえ。
『ど、どうするの? これ』
『……』
俺は冷静に観察する。周りで笑っているトレーナーたちは皆人間だ。
だが……獣人族のトレーナーだけは笑っていない。
皆一様に苦い顔や同情した顔をしている。
なるほどな。さっきのイケメン門番という例外もいるが、人間は皆エルモンを道具としてか見ていない。だが獣人族はその限りではないらしい。
俺はデブ商人のガスタに一言こう言った。
「ああ、人間って皆豚みたいな顔をした、豚足エルモンだったんだな」
『⁉』
俺の一言で空気が一変する。
高笑いをしていたガスタや人間のトレーナーは一転して俺を睨みつけてくる。
「何ですって! 私を豚扱いですか!」
「おい、お前も人間じゃねえか!」
「ふざけるんじゃないわよ!」
人間のトレーナーはぶひぶひ、豚みたいに鳴く中、周りの獣人族のトレーナーはぽかんとしていた。
もう一押しか。
「あー俺ってバカだからわかんないけど、人間のトレーナーは皆豚みたいに太ってるけど、獣人族のトレーナーさんは皆体が引き締まってしっかりしてるんだよなあ。いつもエルモンに指示だけして何もしない無能なトレーナーたちと自分も動ける優秀そうな獣人族のトレーナーさんとは違うなあ」
俺はニヤニヤとした顔をしながら、嫌味たらしく、大きな声で言ってやった。
獣人族のトレーナーたちは俺の言葉を理解すると、表情を次第に変えて、腹を抱えて笑い出す。
「にゃっはっは! にゃっはっは! これは傑作にゃ!」
「確かに俺たちと違って人間のトレーナーは皆豚みたいだな! ブタモンって感じか⁉」
ガスタは人間の中でも更に太っているのでめちゃくちゃ指を差されて笑われる。
俺も一言言ってやった。
「ぷっぷー。ブタモン見っけ! あ、でも弱そうだから要らない~」
俺の言葉に先程見た猫人族のトレーナーと狼顔のトレーナー、他にも多種多様な獣人族のトレーナーが爆笑していた。
俺は何で人間の街で人間を煽っているのか。
それは人間より獣人族の方が単純に数が多かったからだ。
まあ俺自身は元人間だけどこの世界の人間は軒並み嫌いだし。
獣人族のトレーナーが連れているエルモンは不満そうな顔をしていなかった。
これは俺達がエルモンだからわかることだ。
そんなことを考えていると、ブタモンのガスタが俺を指さして、こう言ってくる。
「き、貴様! 調子に乗りやがって! ガスタ商会を敵に回してアルカディアで生きて行けると思うなあ!」
「あ、言い忘れてた」
「何だあ⁉」
「俺、別にこの町に住む気ないんだよね」
「はあ⁉」
そうなのだ。俺はエルモンだし、レンカちゃんもエルモン。
今はマモンが魔の森で暮らせそうな拠点を探してくれている。
だから別にアルカディアで宿を取る必要はない。
「にゃっはっは。あたし、あんた気に入ったにゃ」
「ニャーサ。ブルドもあいつのこと気に入った」
お? さっきの猫人族と狼顔の獣人が俺に声をかけてくる。
「あたしはニャーサ。あんたの名前はなんだにゃ?」
「ガランだ。こっちの相棒はレンカだ」
「ブルドはブルド。お前とはいい付き合いができそうだ」
ニャーサとブルドが俺に手を差しだす。
おお、これはいい出会いかもしれないな。
だが後ろのブタモンは黙っちゃいなかった。
「ニャーサ、ブルド! お前らがトレーナーギルドで活動できなくなってもいいのか!」
その顔にニャーサとブルドの顔が曇る。
ふむ、俺が巻き込んだような節もあるしここはどうにかするか。
次話に続く。
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