第七話 最弱トカゲに転生した俺、アルカディアに潜入する
「じゃあ、行ってくるな」
「ああ、オラは魔の森でいい土地を探すだ」
「マモン、気をつけるのよ」
俺とレンカちゃんは人間の街に向かい、マモンはここで別れる。
レンカちゃんは、体のサイズを小さくできるようで、人化した俺の肩に乗っている。
実はアジトで良い物を見つけたんだよな。
アジトの奥でお金と換金できそうなエルモン用の進化アイテムをゲットした。
そして、エルモン同士なら離れても念話出来るアイテムを見つけた。
ハイリンクというアイテムだ。
でも何故かアジトの奥で埃をかぶっていた。
まあ人間には使えないアイテムなので価値がないと思われていたのだろう。
俺達とマモンは別れて、別々の道に向かう。
『なんか寂しいな』
『また会えるわよ』
ハイリンクはイヤリングになっていて、五匹まで登録したエルモンと念話ができる。
レンカちゃんとマモンは登録済みだ。
今の気候は日差しが暖かく、森の中に木漏れ日がさしていた。
暫くすると、視界が開けてきて、大きな外壁が見えてくる。
『これがアルカディアだよ』
『すごく壁が高いわ』
大きな岩を組み合わせた外壁がそびえ立っている。
アルカディアに向かう道には大きなカバンを抱えた商人やエルモンを連れたトレーナーが多くいる。
俺の黒髪黒目が珍しいのかちらちらと視線を向けられる。
一人の腹が大きく出た商人が振り向いて、にやにやと笑いながらこちらに来る。
「おやおや、新人トレーナーですか?」
俺は努めて無表情で返事を返す。
「そうだが何か?」
「その肩に乗せているエルモンを売っていただけませんか? ホーリーコモドは中々稀少価値が高いので良い値段になりますよ?」
はあ、そんなことだろうと思ったぜ。
『ちょっと、このデブ何よ!』
『レンカちゃん、落ち着いて』
『落ち着けないわよ! このデブ臭いし、キモイし何なのよ!』
この商人、汗かきでめっちゃお腹が出てる。
というか、この道を歩いているトレーナーは大体体がだらしない。
どうせ、エルモンに戦わせて、自分は動かずにふんぞり返っているんだろうな。
俺は念話には乗せずに心の中で呟いた後、商人に言葉を返す。
「悪いが、俺の相棒を売る気はない」
「相棒! エルモンを相棒ですって?」
デブ商人は更に表情を歪めると嘲笑を見せる。
話を盗み聞きしていたトレーナーが周囲で笑い始める。
「あっはっは。あーはっはっは!」
『何よ、こいつら。本当に人間って腐ってるわ』
『……そうだな』
『どうかしたの?』
『……なんでもない』
俺は悲しくなった。エルモンのゲーム内とはここまで反応が違うとは思わなかった。
そして元人間の前世を覚えているからこそ、レンカちゃんの言葉が刺さった。
俺はエルモンに転生したからエルモン側に立てているが、人間に転生していたらこうなっていたかもしれない。
こいつらを反面教師にしようと心で固く誓う。
俺はニヤニヤと笑う、デブ商人に名前を聞く。
「おい、お前。名前はなんだ」
「ガスタ商会の頭取、ガスタですよ」
「お前とは喋りたくないな」
俺がつばを吐き捨てながら、そう言うとガスタはしかめた顔をする。
「ふっ、そうやって甘い理想を何時まで貫けるか見物ですね。アルカディアに貴方のようなトレーナーの居場所などないですよ」
「失せろ」
俺はそれだけ言って、アルカディアに向かう道を進んでいく。
外壁の門の前にはずらっと人が並んでいた。
『ガラン、本当にアルカディアに潜入するの?』
『ああ、行ってみて、エルモンたちの現状を知りたい』
『さっきのガスタみたいなやつばかりじゃないの?』
『どのみち、エルモンたちの国を作るにはお金が必要だからな。行くしかないんだよ』
俺がレンカちゃんと念話をしていると、俺たちの順番が来た。
「おい、次の者。名を名乗れ」
「ガランです」
「トレーナーか? 黒髪黒目は珍しいな。その肩に乗っているエルモンを売りに来たのか?」
「違います。この子は俺の相棒です」
そう言うと門番は少し驚いた表情を見せる。
『どうせまた笑われるわ』
『……』
レンカちゃんの冷めた念話が聞こえる。
だがその門番は真剣な表情でこう言った。
「そうか。今どきエルモンを相棒というやつは少ないんだ。大事にしてやってくれ」
「⁉」
俺はその言葉に驚く。
「おっと、今の言葉はここだけにしてくれよ。身分証は?」
「いえ、田舎から出てきたのでありません」
「そうか。銀貨三枚払って、仮身分証を発行するからトレーナーギルドで作るように」
「はい。ありがとうございます」
俺は少し驚いたが普通に受け答えをしてその場を後にする。
『ああいう、人間もいるのね』
『ああ、驚いたな』
その門番は金髪碧眼の鼻の高いイケメンだった。
さわやかな笑みを見せて通してくれた。
そして先ほどのガスタやその周りにいたトレーナーと違って引き締まった体をしていた。
エルモンに労働を任せずにしっかり自分で仕事をしている証拠なのかもしれない。
これはいい判断基準になりそうだ。
地面は石畳みになっていて、馬車の轍はあるもののしっかりとした作りだ。
そして立っている家を見ると石造りの大通りに繋がる商会が立ち並んでいる。
ちょっと歩くだけでいい匂いのする串焼きの香りがする。
ここら辺はエルモンのゲーム内のアルカディアと一緒だな。
『おなかがすくわ』
『まずはトレーナーギルドに行ってその後、食べ歩きするか』
俺とレンカちゃんはトレーナーギルドに向かった。
俺はちらっと後ろを見る。
デブ商人のガスタが意地悪い笑みを見せていた。
あいつ、何か企んでやがるか?
だが関係ない。次に絡んで来たら絶対目にもの見せてやる。
次話、トレーナーギルドに向かう。
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