第二話 最弱トカゲに転生した俺、体当たりしか使えない
金属製の柵の隙間から天井を見上げると、洞窟の中であることがわかる。
岩肌の隙間から、水滴が落ちていた。
黄色い光を放つ、ランプがちかちかとしながら洞窟の中を照らしていた。
洞窟の奥では、悪徳ハンターたちの下品な笑い声が響いていた。
クソ。ムカつくな。
酒盛りをしているようで、洞窟の中はアルコールの匂いとかび臭い匂いが充満していた。
俺は前足で金属製の柵を触ったり、鼻で押してみる。
頑丈なつくりだが、長年使われているようで表面が錆びている。
俺は独り言をつぶやく。
「俺が転生したグレーコモドンは、体当たりしか使えない。最弱のエルモン。だが攻撃や防御、素早さのステータスは高い。それに……」
周りのエルモンが胡散臭い目で俺を見るが、構わず呟いていく。
「何か騒ぎに乗じて、俺の体当たりでこの柵を壊せば……」
近くで座っていたホーリーちゃんが俺の呟きに反応して、近づいてくる。
「ちょっと何を言っているの。変なことをこれ以上しないで」
「ホーリーちゃん」
「ホーリーちゃんって何よ。私はレンカよ」
そうかホーリーちゃんはレンカちゃんだったか。
だが最初に言ったことは聞き逃せないな。
「レンカちゃん。このまま行ったら俺たちは只の道具として使い潰されるか、ペットにしかなれない」
「だってしょうがないじゃない。それしかもう道はないのよ」
俺は前足としっぽを振り下ろして、ドンと叩く。
「それでいいのか!」
俺とレンカちゃんの話を聞いていたエルモン達はびくっとする。
レンカちゃんも目を丸くしてびっくりした顔をする。
トカゲ顔だけど結構表情が出るな。
レンカちゃんは、少し押し黙った後、目に涙をためる。
「私だって嫌だわ! でもしょうがないじゃない! 逆らえないの!」
「どこまでだったら行動できるんだ?」
「え?」
「さっき、俺に回復魔法を掛けてくれただろ。あれくらいならできるんじゃないのか?」
「確かに……」
そうなんだよ。悪徳ハンターたちが持っている魔法の鞭がどこまでエルモンに縛りを与えているのかがよくわからないんだ。
だから、ここに付け入るスキがあるんじゃないかと思う。
さっき洞窟の中を見ていて、使えそうなものもいっぱいあったしな。
「レンカちゃん、俺が何とかするから、協力してほしい」
「……しょうがないわ。危なっかしいから協力してあげる。貴方の名前は?」
レンカちゃんはそっぽを向きながらも協力してくれると約束してくれた。
俺の名前は……。
「俺の名前はガランだ」
「ガラン? 珍しい名前ね」
「ああ」
この名前はネット上のニックネームとしてよく使ってたんだ。
「その話、オラにも聞かせてくれ」
「ん?」
後ろを振り向くと、体中に鞭の後がある、ウシ型のエルモンが立っていた。
ウシと聞くと穏やかそうなイメージがあるが、体つきが引き締まっていて、闘牛のような顔つきだった。
「ウシ型のエルモンか。名前は?」
「オラはマモンだ」
「マモンも協力してくれるのか?」
「ああ、オラはあの鞭に叩かれただけで怯えてしまっていた。でもガランは心を折れずにまた立ち上がっている。オラも手伝わせてくれ」
おお、俺の言葉に立ち上がるエルモンもいたのか。
なんか嬉しいな。
中々強そうなエルモンだから協力してくれるのは頼もしいな。
「分かった。この柵を体当たりで壊してくれないか?」
「分かっただ。あの鞭で叩かれてから力が出ないけど、これくらいなら壊せる」
「私は何をすればいいの?」
「レンカちゃんは、俺に回復魔法を掛け続けてくれ」
「良いけど、まさか。ハンターたちと戦うの?」
「ああ、そのつもりだ」
「それは無理よ。ガランのレベルじゃ勝てないわ。しかもあいつらは強力なエルモンを従えているのよ?」
「いや、勝つ」
不安そうに言っているレンカちゃんの動揺を抑えて、俺は言い切る。
体当たりしかできない俺だが、エルモンにはそれぞれ特性がある。
俺の特性は強いぞ?
「俺の特性はきんちょうかんだ。相手の技のタイミングや攻撃タイミングは見切れる」
「でも、ハンターの頭が従えているエルモンはアグリーサラマンダーよ? レベルは20もあるわ」
レベル20のアグリーサラマンダーか。
俺はステータスを自分のステータスを確認する。
名前:ガラン
種族:グレーコモドン
レベル:一
ステータス
HP:10
攻撃:50
防御:45
魔攻:10
魔防:20
素早さ:60
特性:きんちょうかん。
(相手の技や攻撃タイミングをきんちょうかんにより見切れる特性だ!)
アグリーサラマンダーはこの10倍のステータスの差があるだろう。
だが俺は負ける気がしないな。
何故なら、悪徳ハンターたちの宴で、アグリーサラマンダーが技を見せているのを確認しているからだ。
宴会芸に火炎放射を使わされるのはかわいそうだったけどな。
他にも色々と技を見せていたから対策は出来そうだ。
エルモンたちは進化するたびに、覚えられる技の枠が増えていく。
最初に技を沢山覚えているほど強いとゲームでは言われていた。
だが、それは違うと思っている。
このゲームは実質的に覚えられる技の数は無限だ。
バトルの時に何が勝敗を左右するか。
それは特性だ。
「俺が見せてやる。攻撃は当たらなければどうという事はないってことを」
次話。悪徳ハンターたちと対決!
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