第九章:外交の場で
隣国の王宮で、二人は並んで座っていた。
向かいには、隣国の王と将軍たちがにらみを利かせている。
交渉は難航した。将軍たちは戦争を望んでいた。
「我が国には領土の拡大が必要だ!話し合いなど無駄だ!」
エレナが静かに立ち上がった。
「将軍様、戦争をすれば、勝っても負けても、多くの兵士が死にます。そしてその兵士たちは、誰かの息子であり、夫であり、父親です」
「それがどうした!戦士の本懐だ!」
クラリッサが次に立ち上がり、将軍の前に歩み寄った。
「本当にそう思いますか?将軍様にも、大切な家族がおありでしょう?もしあなたの息子様が、無意味な戦争で死んだら、どう思いますか?」
将軍は一瞬たじろいだ。クラリッサは聖女の身体の持つ「純粋な眼差し」を最大限に活用していた。
エレナが機会を逃さず、提案をした。
「戦争ではなく、貿易で繁栄しませんか?私たちの王国には、あなたがたにない農作物があります。あなたがたの王国には、私たちにない鉱物資源があります。交換すれば、両国が豊かになれます」
隣国の王が興味深そうに頷いた。
「……面白い提案だ。具体的には?」
クラリッサが外交文書を取り出した。
実は彼女、元悪役令嬢としての「駆け引きの才能」をフル活用し、事前に詳細な貿易協定案を準備していたのだ。
「こちらに草案がございます。ご覧ください」
将軍たちが文書を見て驚いた。
あまりに詳細で、双方に利益があるように巧妙に設計されていた。
「……これは、あなたがた二人だけで考えたのか?」
エレナとクラリッサは顔を見合わせ、微笑んだ。
「はい。私たちの『長所』を合わせたのです」




