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マヤの理想郷のつくり方  作者: 蒼井スカイ
第1章
44/63

39.新しい仲間

 マヤは「ふぁ~」と大きな欠伸(あくび)をした。窓から差し込む朝日を見て、新しい旅の始まりに鼓動が高鳴っていた。


「この森に来てから規則正しい生活が染みついたみたい。朝日が昇るのと同時に目を覚ませる日が来るとはね……自分でもびっくり」


 はじまりの森では起きる時間も寝る時間も気にすることがなかったため、早寝早起きとは無縁だったのだが、リビトやジオウ、セリンが朝から忙しく自身のスケジュールをこなしている姿を見ていて、さすがのマヤもダラダラしている訳にもいかず、早寝早起きの生活をするようになっていた。


「旅支度は昨日のうちに終わってるから、とくに何もすることはないんだよね。リビトとの待ち合わせの時間まで、まだ余裕があるからなぁ。あっ、そうだ。最後に妖精の森をお散歩でもしてこようかな」



 宿を出ると、慌ただしく行き交う給仕の妖精たちの姿を見かけた。この場面も随分見慣れたものだ。護衛騎士は鍛錬の広場に集まり、剣や魔法の稽古をしている時間だろう。そんなことを考えながら森の中を散歩していると、前から見覚えのある妖精が歩いてきた。


「あれっ? もしかして、森の図書館で本を探すのを手伝ってくれた妖精さんですか?」

「――!」


 その妖精はマヤの顔をじっと見て少し考え込んだ後、過去の記憶の中にマヤの姿を思い出したのか、驚いた表情を見せていた。


「やっぱり!」


 マヤは満面の笑みを浮かべた。マヤが話しかけた妖精は、森の図書館で最初に給仕をしていた少年の妖精だった。華奢な体型で真新しい騎士服は若干大きめのサイズで、服に着せられているようである。

 少年は顔を真っ赤にしながら、どう対応すればいいのか慌てている様子だ。

 マヤは気にせず少年に話しかけた。


「最後にあなたにお会いできて良かったです。突然給仕係を辞めてしまったから、お礼も言えなくて。その、遅くなったけれど、あの時は本を探したり分からないことに答えてくれたりして、ありがとうございました。

 あなたのおかげで楽しい時間を過ごすことができました。本当にありがとう」

「――いえ、私は自分の役割を全うしたまでです。マヤ様にお礼をされるようなことは何一つしておりません……」

「あなたにとっては仕事の一部だったかもしれないけれど、この森に来たばかりの私にとってあなたの存在はとても有難かったんです。だから、やっぱりありがとう、と伝えさせて」

「…………」


 マヤは改めてお礼を告げると、少年ににっこり笑顔を向けた。


「私は今日でこの森を去るけれど、あなたもどうかお元気で」

「…………」

「じゃあ、私はこれで――」


 マヤが少年の横を通り過ぎ、森の散策を再開しようとした時だった。


「――私も!」

「えっ?」


 ずっと黙っていた少年がマヤの方へ振り向き、声をかけた。


「私も、短い間でしたが、マヤ様の給仕を担当することができて良かったです」


 少年の顔にはオロオロとした表情はなく、そこには満面の笑みがあった。


「えぇ、ありがとう!」

「マヤ様、どうか道中お気を付けください。ご無事をこの森で祈っております」


 少年は体を2つに折るように深々とお辞儀をしてから、マヤと逆方向へ歩いていった。


 マヤも再び森の散策を再開した。



 ******



 マヤとリビトは妖精王に別れの挨拶とこれまでの感謝を述べるため、王の間で王と謁見していた。王の間には長老やジオウ、セリン、彼らの従者も勢揃いしている。


「リビト、お前を送り出すのは何度経験しても辛いものだ。道中くれぐれも気を付けるのだぞ」

「はい、妖精王。これまでご指導いただいたことを胸に刻み、マヤと2人で必ずや夢を実現してみせます」

「兄上、随分威勢がいいではないですか」

「ジオウ、俺は必ず叶えてみせる」


 無言で視線を交わし合うリビトとジオウ。そこへセリンが待ちきれずに割り込んできた。


「リビト兄上、マヤのことをしっかり守ってあげてくださいね」

「あぁ、そのつもりだ。二度と危険な目には遭わせない」

「リビト……」


 リビトの隣に立つマヤはリビトの固い決意を聞いて、胸が温かくなった。


 すると、玉座の斜め前で控えていた長老がマヤに近づいてきた。手には麻の小袋があった。


「マヤ殿、これは我等妖精族からの餞別(せんべつ)の品じゃ」

「ありがとうございます。あの、これは一体……」

「これは妖精の魔力を注いだ結晶の粉じゃよ。この粉をかければ姿を隠すことができるんじゃ」

「そんな凄いものを頂いていいんですか?」


 長老が答える前に、妖精王が先に声をかけた。


「マヤ殿、我等妖精族は君たちを全面的に支持する。その証として、その粉を分け与える。いざという時に使ってほしい。もちろん、その時が来ないのが一番なんだがね」

「妖精王様、長老様、ありがとうございます! 大事に使わせていただきます」


 妖精王も長老もやさしい笑顔をマヤに向けている。


 マヤは隣に視線を向けると、リビトと目が合った。リビトはコクリと(うなず)いている。まるで「良かったな」とでも言っているようだ。


 王の間の空気がほっこりしたところで、突然ジオウが王の前に片膝をついて最敬礼をした。すると、ジオウは予想だにしないことを言い出した。


「父上、いえ、王、私から1つお願いがございます」

「ジオウ、急に何の真似だ?」

「ジオウ・ヨセウィーは王太子の座を退き、リビト兄上とマヤ殿の旅に同行したく存じます」


 王の間のほっこりした空気感は一転して消え去り、一瞬にしてピリついた。その場にいる従者や護衛騎士たちは動揺を見せている。

 マヤはセリンを見ると、やはりジオウから何も聞いていないらしく慌てた様子がその表情から(うかが)えた。


「兄上、突然何を――」


 セリンが慌てた様子でジオウに問い詰めようと1歩前に出かけた時、王が鋭い眼差しをジオウに向けて、冷たい言葉を放った。


「ジオウよ、お前は妖精族の王太子なのだぞ。お前1人の一存で王太子の座を退くことなどできぬ!」

「もちろん、承知しております。ですが、王太子のままでは旅に同行できないでしょう?」


 ジオウは王の圧をものともせず、いつものあっけらかんとした物言いで返した。すると、今にも激怒しそうな表情をしていた妖精王は、お腹を抱えて笑い出したのだ。


「あっはっはっは! 爺、ほら私の言う通りだっただろう?」

「…………」


 王が大笑いする一方で、長老はしかめっつらをしている。その場の張り詰めた空気は再び和やかな雰囲気になるも、多くの者たちが未だ動揺を隠せないでいた。


「ジオウ、お前は王太子の座を退くほどの固い決意でこの森を出るというのだな?」

「はい、私は元来、自由を好む性分です。王太子の責務を全うするにはまだまだ経験が足りません。兄上たちの旅に同行し、この機会にさらに大きく成長した姿を父上にお見せしたく存じます」


 マヤが立つ位置からはジオウの後ろ姿しか見えず、表情は分からなかったが、声のトーンから想像するにすっきりとした顔をしていると感じた。それはまるで、昨夜マヤと話し終えたばかりのジオウの表情のように。

 リビトに視線を移すと、真剣な眼差しでジオウの背を見つめているようだった。(しばら)くすると、隣から「はぁー、やっぱりか……」と、小さな(つぶや)きが聞こえてきた気がした。


「ジオウ、其方(そなた)は奴隷商人に捕まったばかりではないか。其方がいると、リビト殿やマヤ殿に危険が及ぶとは思わないのか?」


 長老が険しい顔でジオウに苦言を(てい)した。

 ジオウはちらっと上半身だけ振り返り、リビトとマヤの顔を見て再び長老に視線を戻した。


「確かに、私がいると2人に危険が及ぶやもしれません。ですが、私も兄上と同じく、これまで以上に鍛錬を積み重ねて参りました。もう同じ失敗は致しません。自分の身は自分で守ることができます。どうか旅の同行に賛同していただきたいのです」

「王が許可したところで、リビト殿たちが拒絶したらどうするのじゃ?」

「…………」


 マヤは、ジオウの威勢の良さは長老の苦言によって削がれているように感じていた。


――私は何か言った方がいいのかな? ジオウ様が旅に同行してくれたら心強いけど、長老様が言うように奴隷商人に狙われる危険が高い。それに、ジオウ様は次期妖精王になられる方だし。どうすればいいんだろう? リビトは、どう考えてるんだろう?


 リビトへ視線を向けると、(うつむ)きながら何かを考えている様子が見てとれた。


――リビトも悩んでるんだ。それもそうだよね、リビトはジオウ様を守るためにずっと嫌われ役を買って出ていたんだから。ジオウ様が旅に同行するのを許さないかもしれない……。


 王の間に沈黙が続いていたが、思わぬ人物が驚きの発言をした。


「父上、兄上がこの森を出ている間、兄上に代わって王太子の座を私にお任せいただけませんでしょうか?」

「セリンプス……」


 ジオウは、自分が森から出て行くことを一言も相談しなかったセリンはさぞ怒るだろうと想像していたが、さすがは我が妹だと感心した。


「セリンプス、確かにお前はジオウの執務の手伝いも卒なくこなしているが――」


 王はそう言いかけて口を閉じた。セリンプスが何を考えて発言したのかが分かったのだろうか。

 王が何を話そうとしているのか、皆が次の言葉を待っている。


「セリンプス、お前もいろいろと思うことがあるのだな……。そうか、そうだな」

「王っ! 何を迷われることがあるのですか! 王太子が森を出て行くなど聞いたことがありませんぞ」

「爺よ、先例がないからと何もせねば、良くなるものも良くならぬだろう」

「な、何を!」

「爺も覚悟していただろう。ジオウがこのような決断をするのだと」

「……! 父上、私が旅の同行を申し出ることが分かっていらしたんですか?」


 今度は自分の決断をすでに予想していたという王の言葉にジオウが驚いているようである。マヤは顔を上げたリビトと共に、王とジオウが出す結論を見守っていた。


「うむ、リビトとの関係が修復されたあの日、今日こうなることは分かっていた。長老ともその話はしていたんだよ」

「――父上」

「長老は反対したが、お前はいずれ王になる、このことからは一生逃れられない。王になれば今よりも己の身に危険が降りかかることも増えるだろう。私は家族の絆がやっと深まったばかりで、お前とこの森の未来を一緒に考えたいと思っていた。

 だが、それは私の、父としての願いに過ぎない。お前の成長を思えば、今こそこの森を出て行くことを許可するべきだと思っている」

「父上! では!」

「だが、私やお前の気持ちだけで、リビトやマヤ殿を危険に(さら)すことは許可できない」

「…………」


 ジオウは一瞬喜んだように見えたが、王の言葉で再び俯いている。


「ならば、お前が旅に同行するかどうかはあの2人に決めてもらいなさい」

「えっ? 父上――」


 王はジオウに向けた視線をリビトへと移した。その眼差しは真剣そのものだ。王と視線を合わせるリビトも、堂々とした表情をしている。


「リビト、其方はジオウを旅の仲間に連れて行く覚悟はあるか?」

「――王、私には解答する資格はございません。この旅のきっかけを作ったのは、他でもないマヤです。私はマヤの決断を支持します」

「そうであったな。マヤ殿、其方はどう思う?」

「…………」


 リビトが王と話をつけると思って何も考えずに皆のやり取りを見守っていたが、突然マヤに話が振られ、頭が真っ白になってしまった。


――えぇ、どうして私が? リビトが決めたらいいじゃない。どうしたらいいんだろう? どうしたら?


 (すが)るような目でリビトの顔を見ると、リビトはやさしい笑みを浮かべてぼそりと呟いた。


「この旅はお前が始めたんだ。お前が決めろ。俺はお前が決めたことに従うだけだ」


――そんなぁ。急に決めろと言われたって、どうしたらいいか分からないよ。あぁー、どうすれば……。


 王の間にいる者たちから一斉に視線が向けられ、冷や汗が額を流れた。


「マヤ殿、ジオウが旅に同行することを無理強いするつもりはない。其方が不要だと思うなら、この話はなかったことにできる。ジオウは王太子の座を退くとは言ったが、それは一時的なものだ。

 妖精族は人間よりも長生き故、其方と旅を続けた後でも王太子として返り咲くことは些末(さまつ)なことだ。重く考えすぎず、決めるといい」

「…………」


――そうは言っても、こんな重要なことを私が決めるのはちょっと重すぎるよ。どうしよう、どうしたら。


 どう答えていいか分からずオロオロしていると、マヤの目の前にジオウが立っていた。


「……!」

「マヤ、急にこんなことを言われて驚いてるよね。正直なところ、昨夜マヤと話すまで、ずっと悩んでいたんだよ」

「昨夜……? あっ、昨日の――」

「そう。私は兄上にずっと勝ちたいと思っていた。でも、奴隷商人に捕まってようやく自分の弱さと向き合うことができたんだ。兄上と真剣勝負をしてから、自分も兄上たちと旅ができればもっと成長できるんじゃないかとね」

「――ジオウ様」

「本当は今日まで結論を引っ張るつもりはなかったんだけど……。でも、昨夜マヤと話せて良かった。マヤの固い決意を聞いたから、私も自分のために、この森の民たちのために、全てのマグスのために、できることをしたいと思えたんだ。

 私が旅に同行すれば今まで以上にマヤたちを危険に巻き込むかもしれない。でも、自分の身は自分で守れる。決して2人に迷惑をかけないと誓う。だから、どうか私を旅の仲間に加えてほしい」


 ジオウはそう言い終えると床に片膝をつき、王にしたように最敬礼をマヤとリビトに行った。


「ジオウ様、顔を上げてください!」


 ジオウはマヤの言葉を聞いても、お辞儀をしたまま動かない。


――これって、私がOKしないと丸く収まらないパターンでは? ジオウ様、そんな風にお辞儀をされたら、断りたくても断りにくいよ。もう、本当にきれいな見た目に似合わず強引なんだから。本当にリビトの弟みたい。


 ジオウがリビトの弟のように見えてきたと思ったら、緊張で硬直していた全身から力がすっと抜けていく。


――そういえば、セリンが言っていたようにジオウ様もお母さんを探したいのかもしれない。リビトがお父さんを探しているように。それなら、私はジオウ様の想いを踏みにじることはできないよね。私は言うべきことを言うだけだ。


 マヤはふぅーと小さく深呼吸をした後、ジオウの顔の前に自分の片手を差し出した。


「ジオウ様のお気持ちは分かりました。ぜひ私たちの旅の仲間になってください。今日からどうぞよろしくお願いしますね」


 マヤがそう言うと、ジオウは俯いた顔を上げた。差し出されたマヤの手を取ると立ち上がり、「ありがとう。今日からよろしくね」と言い、今まで見たことがない満面の笑顔を浮かべた。


 こうして、ジオウはマヤとリビトの旅に同行することが決まった。とはいえ、ジオウを1人にするのは(いささ)か心配だ、ということで従者のフィデリスと侍女のサーティスも旅に同行することとなった。


 フィデリスとサーティスは突然の王命にも慌てる様子がなかった。マヤは、きっとジオウから事前に話を聞いていて、主に着いていくという決意を固めていたのだろうと考えた。



 王と長老と別れの挨拶をかわしてから王の間を後にした。すると、セリンプスが森の出口そばまで見送りに出てくれた。


「マヤ!」

「――! セリン……」


 マヤの胸にセリンが勢いよく飛び込んできた。マヤの背中に回された両手は力強く、セリンのやさしさと温もりに包まれているように感じた。


「セリン、絶対にまた会いに来るからね。それまで元気でいてね」

「マヤ、約束だよ! 絶対に会いに来てね」

「うん、約束する」


 セリンはマヤの背に回した腕を解くと、マヤから教わったように自分の小指をマヤの目の前に差し出した。マヤも自分の小指をセリンの小指に絡め、約束を誓い合った。


「マヤ、これは私たちが親友である証よ」


 セリンの両手に包まれていたのは光が当たると七色に光る石が連なった腕輪だった。セリンはマヤの左手を取り、その腕輪をマヤの腕に通した。


「セリン、ありがとう。でも、ごめんね。私からあげられる物がなくって……」

「それじゃあ、その髪紐を私にくれない?」


 セリンはマヤが髪の一部を束ねる水色のリボンを指差していた。マヤはそのリボンを(ほど)き、セリンに手渡した。


「こんな物でいいの?」

「もちろん。この髪紐を毎日見て、マヤのことを思い出すわ」

「うん、私もこの腕輪を見てセリンのことを思い出すよ」


 セリンはもう一度マヤを抱きしめて、離れると、次にリビトの目の前に立った。


「リビト兄上、マヤと兄上のことを頼むわね」

「あぁ、分かった」


 セリンはマヤをちらりと見てから再びリビトに視線を向けると、突然リビトの頬に口づけをした。


「おいっ、セリンプス。急に何するんだ!」

「お別れの挨拶ですわ。まぁ、リビト兄上は妹のキスに赤くなるようではまだまだですわね。うふふふ」

「――!」


 リビトは顔を真っ赤にしてセリンに怒っているが、当のセリンは気にもかけず、ペロッと舌を出して笑っている。


 マヤはセリンの突然取った行動に驚いたが、セリンは本当の兄のように慕うリビトに親愛の気持ちを伝えたかったのだろうと納得した。


 セリンは次にジオウの前に立つと、ふてぶてしい表情を(あら)わにした。


「兄上、生きて帰ってこなかったら、私、絶対許しませんからね!」

「セリンプス、私だけ扱いが違わないか?」

「何をおっしゃっているのか分かりませんわ。でも仕方ないのではなくて? 妹の私に一言も相談せず旅に出ると決めてしまったのですもの」

「あぁ、悪かったよ。この通りだ」


 ジオウはセリンに頭を下げて謝罪した。


「――兄上はずっと本当の自分を隠していたけれど、やっと本音を言えるようになったのですね。私はそれがうれしいのです」


 ジオウが顔を上げると、ずっと笑顔を見せていたセリンの大きな瞳に涙が(あふ)れ、頬を伝って流れた。


「セリンプス、涙を流すなんてお前らしくないではないか」

「ぐすん、妹が泣いているというのに、兄上はそんな言葉しかかけられないのですか」

「本当にすまなかった。許してくれ、セリンプス」


 ジオウは涙を流すセリンをやさしく抱きしめ、セリンにだけ聞こえる声で(ささや)いた。


「私は必ず母上を見つけてみせる。だから、お前は心配せずに待っていてくれ。必ず母上と一緒に帰るから」

「兄上――。分かりました。必ず帰ってきてください」

「あぁ、分かったよ」

「マヤ~! 元気でね~! 時々連絡をよこしてね」

「分かった~! 連絡するね~! セリンも元気でね!」



 マヤはセリンの姿が見えなくなるまで馬車の荷台から上半身を出して手を振り続けた。


 マヤとリビトの2人だけで始まった旅に、ジオウとフィデリス、サーティスの心強い3人が加わり、新しい旅が始まった。


 これから先、どんな困難が待っているか分からないが、仲間がいればきっと大丈夫。そんな強い気持ちを胸に、マヤはこれから始まる旅に期待を膨らませるのであった。

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