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山手線×ゲーム  作者: 亟遊 次人(きゆう つぐと)
4/5

佐藤と田中③

 「そんなーー。俺は学校や社会に出てからも真面目一筋で生きてきたんだ。うざけるな、こんなところで死んでたまるか!」

 佐藤はことの重要性にやっと気づいたみたいで、女よりも激しく取り乱す。男は女よりも脆く出来てる、緊急の重なるストレスに気持ちが追いつかないのだ。女は精神と肉体の苦痛に耐え日々を生きている、子供も苦痛を伴いながら産む、そのことが良く理解出来る。彼はそれほど凄まじい形相でナイフを睨んでいたからだ。

 「やっと理解したの? 底辺のゴミらしい判断力ね」女は大きく笑った。取り繕っていた佐藤の仮面が剥げたことで精神的に余裕を生み出した。

 「うるせー俺は、何も悪く無い」

 「悪く無い? あなた無職でしょ」

 「俺は今まで働いてて、会社が倒産してたまたま再就職に間に合わなかったんだ」佐藤は勢いよく座席のシートを斬りつけた。シートから無数のわたが空気中を舞って、電車の光と合間って車内を白に染める。

 「私だってネットアイドルとして動画サイトで稼いでた。確かにニートをうたって視聴者を獲得したけど収入はあった」

 「収入って数万とかだろう非課税だろう、所詮」「馬鹿? 桁が違うは動画一本50万だった」

 「えっ50万!・・・ですか」佐藤は自身の月給よりも一本の動画で稼いでた彼女へ反射的に敬語を使ってしまった。

 「うける、だいたい大人はそうよね。金、金、金」彼女は頭を掻きむしるよう強く髪型を乱した。

 「金は大切だ、稼ぎは強いオスの証だからな」「私に負けてるのに?」

 佐藤は何も言えなかった、自分よりも立場が下だと思ってた相手が実はもの凄い偉い立場の人間だったときの衝撃と似ている。自分に裏切られたような敗北感、それに伴い口数も少なく発言がなくなる。プライドが傷つけられると人は黙る。

 「くだらない、やすっちいプライドにこだわるから男は嫌いなのよ」女は唾を車内に吐き捨てる。

 「金稼いでる奴が、なんでこんなことになってんだよ。嘘、そうだ嘘だろう、そんな話信じられるか!」

 言い終わる前に女の給料明細が佐藤の目の前にあった。沈黙。。。

 「見せつけてやろうと思って持ってきたけど、海外の銀行に移してたのが理想の国民像から離れてる行為だそうよ、ほんと意味分かんない」

 日本で稼いだ金は日本に落とせという考えらしい。金は稼いでいても国に対して貢献できてない人物は無職として処理されるみたいだ。

 「あー早く、私に殺されてくれないかな。もー池袋回っちゃってるんだけど。マジで!!」

 「えっと、あと・・・」「30分くらいよ、馬鹿!」女の罵りかたが次第に強くなってきてる、その道の変態さんだったら最高かも知れないがノーマルな佐藤には腹立たしい限りである。顔がまだ可愛らしくて背が低いからそこまで苛立ちも少ない。可愛いは正義だと感じる瞬間である。そのとき佐藤は彼女の顔に見覚えがあった。

ーー ガタンゴトン、ガタンゴトン。 プシュー!!!

 目白駅に着いた時、大きく張られたポスター「今を楽しく生きている」のキャッチコピーが特徴的な広告に彼女の顔が映し出されていた。その顔には鼻に絆創膏を付けており、キュートな瞳がアクセントに全体のゆるさも兼ねている。動画ネームは「キャット・キャプテン」通称キャトテンだ。若者に絶大な人気を誇る人気ネットアイドルだ。佐藤は通勤途中などでポスターを目にする事があり、その雰囲気を思い出した。


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