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山手線×ゲーム  作者: 亟遊 次人(きゆう つぐと)
5/5

佐藤と田中④

 「君はポスターにでてる動画系芸能人の人なの?」

 「あーあれ? 事務所から動画系のイメージアップの為に作った広告でしょ! くだらない有名になってから近づいてきた汚らしいクソども」

 彼女の心はとても荒んでいた、大人の汚い部分を沢山味わってきたのだろう。金や人気が出るということは自分を殺して世間のイメージに合わせるという事なのかもしれない。一般人には一般人の、有名人には有名人の悩みがある、それはその人を澄んだ心から歪んだ感情を生むのに十分なんだと佐藤は思った。

 「君はなぜ動画系を目指したの?」「なんでアンタに答えないといけないの、なに油断させる気なの?」

 このままでは先に進めない、そう考えた佐藤は自己開示をして話を聞き出そうと「俺の不幸自慢を笑って聞いてくれないかい?」と話しだす。

 「なんでアンタの話を聞かないといけないの? 後、30分切ってるのよ」

 「分かってる、だからさ。誰かに話したいんだ死ぬ前にな」

 彼女はいったん固まり指を頭に押し付けながら悩んで、距離をとり席に腰を下ろした。

 「俺の会社、企業の個人情報データを管理していたベンチャー企業だったんだけど平川部長のミスで倒産しちゃったんだ」

 「低能ね、その上司は」「いや、そうでもないんだよ」

 女は疑問な表情で「えっ?」と佐藤に不機嫌な態度で反応した。

 佐藤は大きく息を深呼吸して悔しそうに言うーー「俺の教育担当をしてくれてた人だったんだ」

 平川は、とても優秀な人間だった。それに人を思いやり気さくに会話もできる最高の上司、そんな彼が唯一弱点だったのが機械操作だったのだ。アナログな彼は、申し訳なさそうに機械関係の仕事は部下にお願いしていた。そんな彼が倒産の原因だと佐藤は思わなかった、これは推測でしかないのだが誰かにはめられたのだろう。それか部下のミスをかぶったのか、真相は分からない。部長は消息不明になったのだから。

 「それで俺は社長や幹部に楯突いた、平川部長は機械関係の仕事は苦手だから部下にさせていたって抗議したんだ」

 「馬鹿じゃない? そんなこと言ったって会社は倒産するしアンタの印象も悪くなり再就職も不利になる」

 「男には言わなければならないときがあるんだよ」「それはアンタの自己満足よ」「そうかもな」

 少し女は笑った、ポスターよりも可愛くて綺麗だ。そんな儚い笑顔に佐藤の胸は締め付けられた。

 「なーキャトテンだっけ、きみの話も聞かせてくれないか?」

 彼女は少し頬を赤らめ「田中でいいよ、キャトテンって恥ずかしいから」と本名を明かしてくれた。

 「何で動画系を目指したの」

 「私はいじめられて、引き蘢りになって20まで光を浴びない生活をしてたの別にそれ自体は楽しかった」ふせ目がちに首を傾げる田中。

 「それは辛かったな」佐藤は優しい口調で彼女に少し近寄る。

 「ゲームしたり、好きな時間に寝たり、メイクしたりと快適だったんだけどある日突然両親が倒れたの、それから家族を養う為に色んなビジネスに手を染めていてその一つのプロモーションとして広告塔が必要だった。それがキャトテンというアイドル」田中も話しながら上着のポケットに手を忍び込ませる。

 ただいま恵比寿駅到着ーー。 残り8分

 とある暴力小説で、クラス全員で殺し合いをする作品があった。その主人公たちは皆で生き残ろうとか。必ず生きて戻るなど小説における希望フラグを立てる行為をしていた。創作の世界ならば物語のバランスを考える、それは当たり前だ作品として観客に媚を売らないといけないからだ。だが今この動いてる電車で起こってることは、生々しい現実であり戦いでもある。


 つまり、人は自分が一番可愛いのだ、誰かと心中自殺しても、どちらか片方は生き残るそれは無意識に生きようとする本能で愛を忘れるから。


 ただいま、AM 03:04 品川駅到着。

 扉が開く、一人の勝者が出てくる、その姿は血まみれでサバイバルナイフは真っ赤に染まってる。更正は完了された、ここに新たな社畜の誕生だ。これが正しい世界のあり方なのか知らないが、この国は成果を上げている。生産性の人間が量産されることで税金を納めてない者もいない、政治に皆が関心を寄せて生きている、社会のため世界のためより良い環境づくりを後世に残していこうと考えている。これこそ理想の国づくりでは無いだろうか?

 勝者「佐藤」左手には田中の首を掲げてる、これ見よがしに監視カメラに押し付けてる。鬼畜、非道、狂気、そう一般的なモラルを持つ人間は忌み嫌うだろう。だが、人は自分が一番可愛い、自分の狂気には目を伏せている。牛や豚や鳥や馬やイノシシやシカなど、肉の部位をショーケースに並べ、レア、ミディアム、ウェルダンと焼き方までチョイスしてる。それら全てを人の肉と考えてみると恐ろしく狂わしいと思わないのだろうか?

 多分、思わないのだろう? それほど想像力すらなくなってるのだ。


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