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PROTOPIA ─地球人最後の少女─  作者: 叶あたる
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8話 黒い天井

「くッ!」


 少女を包むように(かか)えたまま、いまだ銃撃を続けるロボットの猛攻にひたすら耐えていく。

 肉体だけでなくコートなどの衣服にも何か特別な力があるのか、ひたすら撃たれ続けてもなお損傷らしい損傷が起きる様子はない。

 なら、チャンスはあるはずだ。このまま耐え続けていれば、必ず──。


「……大丈夫だ」


 腕の中で虚ろな表情を覗かせている少女を見つめていると出てきた言葉。

 少女と自分に向けてその言葉を発したのと同時、その瞬間が来た──。


 ──今ッ──!


 ほんのわずかな瞬間、そのラグを逃さないと少女に被せるようにコートを脱ぎ捨てながら、ロボットのほうへと一息に駆ける。


 どんな仕掛けだろうと〝銃〟である以上は〝弾切れ〟を起こす、そうでなくとも長時間の発砲は銃身に負担がかかり、いずれ限界がくるはず。

 そして、それは来た!

 弾切れか故障か、どっちでもいい。このチャンスを逃すわけにはいかない!


「おおぉぉぉォォッ!」


 全身から張り上げた掛け声と共にロボットの眼前に迫ると、まずは発砲元である両の腕にそれぞれ左右から手刀を繰り出す。

 模造剣を思いっきり振ったような、およそ人体から発してはいけない風切り音を上げて繰り出した手刀は、見事にロボットの両腕に直撃した。


「────」


 手刀の一撃によってロボットの両腕は千切れ、その様子をカメラのような頭が追うように見ている。

 機械だというのにどこか驚愕しているような様子に、一瞬の躊躇(ちゅうちょ)が出てしまいそうになったが……。


「──じゃあな」


 俺は気持ちを振り払うように両腕を一度引っ込めてから、拳に力を込めた正拳突きを繰り出す。

 ただ純粋に力を込めただけの繰り出した拳は、まるで砲丸でも撃ち出したかのような空気を圧迫させた風切り音が鳴り、金属を弾け飛ばしながら正確にロボットの頭を貫いた。

 ジジ……と、配線が発熱する音を立てるのが聞こえ、だらんと肩を落としていくロボットの様子に、機能が停止したのだと思わせる。

 そのまま一気に拳を引き抜くと、がしゃがしゃと音を立てながら崩れるようにその場でロボットが沈み込んでいく。


「ふぅ……」


 警戒を残しながらも、なんとかなった安堵感に思わずため息が漏れ出しその場に腰掛ける。

 本来、苦戦するような相手ではなかったが、色々と思わせてくれたおかげで気分的にはそこそこの疲労感だ。


「まっ……俺にしては上々の立ち上がり、かな」


 コートを被せた少女へと視線を向けると、コートがわずかに上下しているのが見え、乱れた呼吸音みたいなのも聞こえない。

 ミスはあったもののとりあえずはってところかね……意志はあっても、やっぱ実践は難しいや。


「ま、反省会は後だな。そろそろずらかろうかね」


 この子をどうするかは決めてないけど援軍が来られても困るし、さすがにこれ以上の長居は危険な気がする。

 少女の側に寄ろうと、どっこらせと腰を上げていく。

 すると──。


「──ッ! 地震?」


 大きな揺れを感じ、上げようとしていた体はバランスを崩して膝をついてしまう。

 次から次へとよくも起きる。

 苦笑が漏れながらなんとか少女の側まで駆け寄り、少女にコートを着させてから抱え上げようとしたとき、何かが激しく崩れていく音が聞こえ、咄嗟(とっさ)に少女をかばうように伏せた。


「な、なんだ!」


 ビルが倒壊して崩れるような音が頭上を横切っていくように響いた後に、空気が吹き上がるような流れを感じ、俺はなんとか顔だけを上げていく。


「な……」


 その視線に映った光景に、思わず言葉が詰まってしまう──。


「なんだ、こりゃぁ……」


 そこには、もはやどこからどう突っ込んでいいのか、訳がわからなくなるような光景が広がっていた──。


 まず認識できたのは、施設の白い天井が抉られるように吹き飛んでおり、残骸となった建物の端々には、ピンクの肉片のようなものがこびりついているのが見えた。

 無くなった天井の代わりとでも言わんばかりに、黒い天井と形容したくなる、夜空というには異質に感じる真っ黒な空が広がっている。

 ──異質に感じた要因の一つは、空に浮かぶ岩のような星だ。

 俺の知る限りの夜空の星は、大小あれど瞬いているものだがこれは違う。

 星でなく岩としか形容できない、ぼこぼことした(くぼ)みだらけの岩がいくつも浮かぶ空であり、物静かな雰囲気というよりは、荒れ果てた荒涼感のほうを強く感じさせる。


「あれは……ガラス?」


 おまけに、よく見れば薄いガラス張りの膜のようなものも見え、境目は六角形が綺麗に繋ぎ合うように結合しており、ハニカム──つまり蜂の巣のような形で、この辺一帯をドーム状に覆い尽くしてるのだろうと理解できた。

 つまるところ、この空は自然ではなく人為的なもので、それが異質に感じられる正体だというわけか──。


「ゴォオオォォォッッ!」

「ッ!」


 大した時間は介さずに、なんとかそこまでのことを理解したところで、頭を割られるような轟音によって、思考が裂かれていった。

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