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PROTOPIA ─地球人最後の少女─  作者: 叶あたる
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15話 決着 ─Altered of Merkava─ 前編

「ゴガァァァァッッ!」


 火蓋が切られて最初に動き出したのは、咆哮と共に振り下ろされる巨人の拳だった。


「こっちへ!」


 フレンに促されるように一緒に跳躍してから、巨人の攻撃を避けながら並走していき、後には巨人の拳を中心に、爆弾でも投下されたのかと見紛うほどのクレーターができあがっている。


「使って!」

「これは──」


 並走しながらどこから取り出したのか、フレンから二丁の拳銃と弾薬の詰まったリュックを受け取る。


 見た目はデザートイーグルに似ており、それを大型化した全長30センチはあろう銃身は銃口も相応に大型で、放たれる弾丸の衝撃に銃自体が耐えられるように設計されていると思われ重くてゴツく、明らかに生身の人間が使うのを想定したとは思えない造りをしている。


 なるほど、この躰に適した銃というわけか……面白いモンを持ってたんじゃないか。


「こんなのがあるなら、囮をするときに渡してくれてもよかったんじゃね?」

「切り札は最後まで取っておくものでしょ? それに、ボクの剣だけでいけると思ってたんだよ……」


 本気でそう思って言ったわけじゃないが、よほど自分の剣に自信があったのか少し拗ねているように見える。

 ま、俺とこうして共闘するのは想定外だったろうし、あれもこれもと気が回るのを期待するほうが無粋ってやつか。


「そんなことよりも、作戦だけを簡潔に伝えるよ。使い方は実戦でお願い」

「オーケー、どうすればいいんだ?」


 白いマントと美しい金髪をたなびかせているフレンの作戦に耳を傾ける。


「まず、ボクとキミの二人がかりで心臓を完全に破壊する。ボク一人では破壊しきるには足りなかったけど、二人で上手く連携すればいけるはずだよ」

「そのためのこの銃ってことか」


 いい感じにずっしりとくる二丁の銃を構えながら話は続く。


「うん、そうしたら心臓の再生が始まると思うけど、少しの間だけでいいから時間を稼いでもらいたいんだ」

「時間をか?」


 若干予想外の提案に思わず聞き返してしまう。

 てっきり俺とフレンの二人がかりで、ひたすら攻撃を続けるというのをどこかで想像していたからだ。


「心臓が再生能力の要と言っても、それは脳や脊髄にだって備わっている機能なんだよ。だから、心臓だけを破壊しても脳や脊髄が残っていれば心臓を再生させられるし、かと言って、心臓を破壊してから脳と脊髄を破壊するには、少し時間が足りないんだ」


 なるほど、心臓を張り切って破壊しても、それで倒し切るには足りないということを言いたいのは、なんとなく理解した。

 だが、それだとよく意味が分からないのは──。


「だったら時間稼ぎなんかせずに、それこそ手を止めないで集中攻撃で倒し切ったほうがいいんじゃないか?」

「説明がしづらいんだけど、心臓を破壊してからの再生が始まったら、キミは心臓が再生しきらないように心臓を攻撃し続けてほしいんだ。その間に、ボクがあの巨人を消滅させられるだけの準備を行うから」

「要はかさぶたを引き剥がしまくって傷の治りを遅くすればいいってことか……」


 時間稼ぎと言っていたが闇雲にという意味じゃなく、心臓が再生しようとするところをを続けて攻撃しろと、確かにそれなら心臓はいつまで経っても治り切ることはないわけだ。


「よっし、理解した。美味しいところを譲ることになるけど、そこは俺の信用の意も込めたということで譲ってやるよ」

「はは、キミって、もしかして人が絡むと性格変わるタイプなのかな? なんか戦闘狂被れのチンピラみたい」

「抜かしてろ……頼んだぜ」

「うん、キミと一緒ならやれる気がする。任せてよ」


 そのやり取りを最後に、お互い笑みを交わしてから左右に散るように散開していく──。



「オラッ! こっちだうすのろ!」


 挑発なんて意味を為さないとは思うが、注意を引くという効果ならば少なからずあるだろう。何より、こういうのは気分が大事ってね。


「グゥッ……」


 挑発が効いたかはたまた大声に反応しただけなのか、巨人がこちらへと向きを変えて狙ってくる。

 そんな巨人の姿を見据えながら、俺は銃を構えてトリガーに指をかけていく。

 使い方は実戦でと言ったフレンの言葉が脳裏をよぎった──。



 セーフティはない、狙い方も撃ち方も勝手に脳内でシミュレートされていくのが分かる。

 これもこの躰の特性なのか、初めて触れるはずだというのに、俺はこの銃を以前から使ってきたかのような、そんなデジャブにも似た感覚を覚えた。


「まずは一発……派手にいくぜッ!」


 だが、思考はそれまでと言わんばかりに、俺はトリガーを強く引き巨人目がけて弾丸をぶち込んだ──。


「う、オッ!」


 大砲が撃ち出されたのかと錯覚する爆音と、並の人間なら目が潰れそうなほどのマズルフラッシュの閃光が弾けたかと思う間もなく、俺は無様にも反動で体勢を崩してしまい尻餅をついてしまう。


「大丈夫!」


 その様子を見ていたのか、フレンが大声でこちらへと声をかけてきた。


「あ、ああ、大丈夫だ! ちょっと転んだだけだって!」


 うーん、いきなりカッコ悪い。即座に起き上がって体勢を整えていく。


 ある程度の予想はしていたが、やはり生身の人間が使っていいような反動じゃない。

 片手で大砲を撃ち込んでいるようなもので、普通の奴が使えば腕がもげるどころか、上半身が回転してネジ切れるんじゃないか?

 そんな想像をしながら、巨人を再び見据える。


「ゴオォォォッッ!」


 致命傷には程遠いが胸に穴が空いており、反動で転けてはしまったが心臓に上手く当てることはできたようだ。


「ま、当てられただけいいほう──っと、ヤバッ!」


 構え直すやいなやとしているところで、巨人がこちらへと目がけて拳を振り下ろしてくる。


「ちィッ!」


 体勢を整えている最中なのもあり、銃撃に移るには多少面倒な立ち回りになっていた。

 決してかわすのは苦ではないが、反動に負けないように銃を構える姿勢を取るとなると、このままでは難しい──。

 だが、ある程度接近しなければ距離によって銃弾が減衰したり、腕で防がれてしまう可能性が高まる。

 距離を……もっと、もっと距離を詰めて撃ち込まないと!


 わずかな隙でも見逃さないように集中を研ぎ澄ましていき、チャンスを待ち、そして──。


「ヴォォォォッッ──!」


 それは訪れた。

 巨人の両腕が瞬時に切り落とされ、その先では鉄塊のような剣が高速で回転しながらブーメランのように飛翔しているのが見える。

 おそらくフレン! こちらのチャンスを作るために動いたんだ。


「今だよ!」


 意思疎通をしたわけでも合図のようなものも特にしていない。

 だというのに、まるでこちらの考えを読んだかのような完璧さ、最高のタイミングでの援護をしてくれるじゃないか。


「サンキュー、フレン! 後は俺がやってみせるぜ」


 ここでキメなければ俺が廃る。応えたいぜ、ああ、応えてみせる──!


「…………」


 意識を限界まで研ぎ澄まし、完全なる覚醒状態へと自身を引き上げていく──。

 銃も躰も魂も、いっさいが例外なく自分の一部として三位一体の境地へと昇華させる。

 どう撃てば躰が反動に耐えられるか、その動きを如何に無意識下で行えるか──ありとあらゆる感覚を同化させていく無我。


「今度は上手くやる。二度の失敗はしない──」


 ブーメランのように戻ってきた鉄塊をキャッチしているフレンへと意識が向く巨人、切り落とされた両腕が再生を始めているその姿を見つめながら、両手に構えた拳銃のトリガーに指を置く。

 かすかに躰を反らし、風に吹かれる柳の木の如くに身を任せた脱力状態を作り出し、巨人が真横を向いたのを確認すると。


 ここだッ──!


 (せき)が切れた意識が目標を捉え、俺はトリガーを強く引いていった。

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