第22話 ★(挿絵有り)
音の聞こえる方を確認すると、五体ほどスケルトンが向かってくる。
「まずいな……時間をかけすぎると炎が沈静化してしまうから、リビア抜きで五体は流石に……」
「テイトさん、何か策はない?」
俺はストレージリングの中身をチラと確認し、何か打開できる方法がないか考える。
だが煙幕や油は全て使い切ってしまったので、今までと同じような手段は使えない。
その為俺が身体強化を限界以上に使用し、新たに表れたスケルトン達を一時的に通路脇に吹き飛ばし、その隙に三人にはセーフエリアへと抜けてもらうという強硬手段しかない。
「……あるよ。俺が道を切り拓くから、俺の合図でセーフエリアの方へリビアを抱えて走って欲しい。追ってくる魔物は俺が食い止める」
「大丈夫なのかテイストさん、それだとあなたがかなり危険だぞ!?」
「そうだよ、そんなの……っ!!」
――バンッ!
その時突然大きな音が響いたかと思うと、炎で抑えていたスケルトン達がこちらへとなだれ込んできた。
見ると大楯のスケルトンがその楯を炎の上に敷き、炎の上を渡ったようだ。
「時間が無い!! リビアを頼む!!」
俺はそう言うや否やセーフエリアへと続く方へ、身体強化を限界以上に発動しスケルトン集団へと突撃する。
「はぁあああああ!!!」
――ガッキィイイイイン!!
俺は一振りでスケルトン一体を壁面へと押しやる。
返す刃でもう一体、さらに右足での足蹴でもう一体押しやるのに成功する。
この時限界を超えた強化での一撃による反動によって、右足の骨にヒビが入る感覚があった。
だが、お陰で最低限ロキとレインが通れる空間が開けた。
「二人とも、今だ!!」
準備していたのだろう、俺が合図をだすとすぐに俺の横を二人が駆け抜けていく。
「テイトさん、無茶はしないでくれよ!」
「っ!!」
俺はセーフエリア側の通路を背後にしつつ、正面に集結しているスケルトンと対峙する。
「さて……自分の見込みの甘さの付けは、自分で取らないとな……」
ストレージリングから回復ポーションを取り出して一息で飲み干す。
ひとまずヒビの入った右足を庇いつつ、回復するまでの時間を耐えながら、三人が逃げれるくらいの時間を稼いで撤退しよう。
そうして俺は剣を正面に構えスケルトンを――迎え撃つ。
==========
街が――辺り一面が――真っ赤だ――
隣の家のおじさんが――学校で仲の良かった女の子が――お花屋さんのお姉さんが――真っ赤だ――
真っ赤になった友達が、知っている人達がなぜ動かないのか、その時のわたしは完全に理解できていなかった。
けれど、もう二度と起き上がらないという事だけは、幼いながらに理解出来ていた。
その原因を作った男の人が――私の前に居た。
『ふん、お前もゴミか。なら……不要だな』
そう言って男の人がわたしに向かって、雷を纏った剣を振り下ろす。
『レイン、逃げて!!』
お母さんがわたしを大きく突き飛ばし、そしてお母さんも真っ赤になった――
『あ……おかぁ……さん?』
わたしはその光景を受け入れられず、その場から動けなくなっていた。
『はっ、さっさと逃げれば助かったかもしれなかったのにな。馬鹿なガキだ』
男の人が剣についた赤い液体を振り払いながら、わたしに向かってゆっくりと歩いてくる。
わたしももうすぐ真っ赤になって動けなくなる。
それは理解出来ていたけれど、それでもその時のわたしは動けなかった。
『レイン、逃げなさい!!』
――ガキィイイン!!
男の人が剣を再度振り下ろしてきた瞬間、お父さんが間に入って炎を纏った剣で、男の人の剣を受け止め助けてくれた。
『ほぉ、お前は悪くないな。俺のモノにしてやろう』
『何を……言っているっ!! 嫁と街のみんなの仇だ、殺してやる!!』
そう言ってお父さんと男の人が激しい剣戟を繰り広げ始めた。
わたしは建物の陰に隠れてその様子を見守った。
剣が打ち合う度にお父さんの剣の炎と、男の人の剣の雷が辺りにまき散らされる。
初めは互角に思えた剣戟も、次第にお父さんが劣勢となっていた。
そしてついにお父さんの剣が弾かれ、膝をついたお父さんの首に男の人の剣があてがわれた。
『くぅ……クソッ……』
『ハハッ!! お前みたいな掘り出し物がいたんだ。わざわざこんな片田舎の小さい街に来た甲斐があったぜ』
『アンタ、一ついいか……』
『ん? なんだよ、俺様今気分がいいから話くらいなら聞いてやるよ』
『俺はどうなってもいいから、そこにいる僕の娘だけは逃がしてくれ』
『あー、お前まだいたのか。……いいぜ、この街の奴らは皆殺しの予定だったが、お前に免じて逃がしてやるよ。ただし、俺に心から従うと誓うのが条件だ』
『……契約をしろと?』
『まぁそういう事だ』
『分かった、アンタと契約をしよう』
お父さんは私の方へ顔を向けて微笑みかけた。
『……レイン、僕はこの人に剣を捧げる。だから一人で生きていくんだ。お母さんの仇も取れず、本当にすまない』
『っ!? お父さん!!』
『来ちゃだめだ!! 逃げてくれ、レイン……。どうかお父さんとお母さんの分まで自由に生きるんだ!!』
私が駆け寄ろうとするのを見て、お父さんは膝をついたまま手をこちらに向ける。
『おい、俺も暇じゃねえからとっとと済ませるぞ』
わたしとお父さんの会話を男の人が遮った。
『わかった、僕の名前と望みは――』
『いや、モノの名前と望みなんざどうでもいい。俺に一生を捧げる意思と、宣誓の言葉があればそれでいいからな』
『なんだって? それじゃあ契約にならないぞ』
『いいからとっとと誓え』
『……わかった――僕はアナタに今後一生従うことを誓う』
お父さんがそう言った直後、お父さんの居た場所に激しい炎が上がる。
炎が少しだけ収まると、お父さんが使っていたのと同じ剣が地面に刺さっていた。
その剣を男の人が引き抜き、邪悪な笑みを浮かべている。
お母さんもお父さんも、わたしを逃がそうとしてこんな結末になってしまった。
わたしが、わたしがもっと早く、逃げることが出来ていればもしかしたら――。
『イ、イヤァアアアアアア!!』
激しい後悔の念に駆られた直後、あたり一面がとんでもなく激しい炎に包まれた。
男の人がその炎から素早い動きで撤退するするのを視界に納めて、わたしの意識はそこで途絶えた。
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――ドシュッ!!
「うっ……」
何度か危ない場面もあったが大楯のスケルトンなど倒し、スケルトンの数を五体まで減らすことに成功する。
その代償で限界以上の身体強化の反動で身体が何度も傷つき、ポーションで回復できない筋肉痛の様な痛みが全身を支配し、動きが鈍くなってきていた。
そういったことも有り撤退しようと思っていた矢先、自身の魔力切れに気付かず身体強化が切れ、矢で左ひざを撃ち抜かれて膝をついてしまった。
「はぁ……はぁ……クソッ……。魔力回復ポーション飲む暇なかったから、はぁ……やらかしたか……つっ!!」
傷を癒す事は間に合わないだろうが、一縷の望みを賭け矢を無理やり引き抜きつつ、傷を治すための回復ポーションを飲み干す。
「んぁ……これは万策……はぁ……尽きたな……」
せめて魔力が残っていれば、身体強化で傷を無理やり無視して距離を取り、魔力回復ポーションを飲むことが出来たんだが……。
「テイトさん!?」
「レインさん!? はぁ……はぁ……どうして戻って来たんだ!?」
俺とスケルトンの間に撤退していたはずのレインが割り込み、俺を庇うような形となった。
「減らしたとはいえ、この数相手だとキミ一人じゃ流石に無理だろう!」
「ううん……レインならなんとか……できるよ」
「え……? どうやって……」
「隠しててごめんね。この後ちゃんと説明するから、今は私を信じて!」
「……わかった。信じるよ」
それならばと俺は今のうちに魔力回復ポーションを取り出し飲み干す。
空っぽになっていた魔力が、ポーションの効果で徐々に回復していくのを感じながら、レインがどうするのかを見守る。
「もう、同じ後悔はしたくないから……今のレインには力があるから!!」
そう言って彼女は一歩前に踏み出す。
「テイトさん、絶対にレインの前に出ないでね? レイン、この力まだちゃんと制御できないから」
そう言った彼女は右手を前に突き出すと、突如激しい炎が生み出され、彼女の背後に居るのに肌が焼かれている感覚があった。
そして気づいた時には彼女の右手に、武骨で真っ赤な剣が握られていた。
俺はその剣を見た瞬間に、何かを思い出しそうな感覚に襲われた。
ただ次の瞬間の光景を見て、その思い出せそうな感覚が一瞬で吹き飛ぶ。
彼女が剣を左から右に軽く一振りすると、前方一体が炎に包まれスケルトンが全滅した――
※ノベルAIにて作成した挿絵です。
※AIイラストの為毎回キャラの雰囲気は変わる可能性が有ります。
明日も22時頃に投稿予定です!
基本手動での投稿の為多少前後すると思います。
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