第12話 ★
応接室を後にした俺達はリビアの冒険者登録を済ませる為、アンジェリカと共にクエストカウンターへと向かった。
リビアは冒険者ランクGからのスタートとなる。ただ俺のDランクパーティーに加入することになるため、Dランクのクエストから受けることは可能だ。
「はい、これにてリビアさんの冒険者登録完了です。こちらの冒険者として活動中の時は、識別タグを常に身に着けて活動するようにしてくださいね」
「ん……ありがと」
お礼を言うとリビアはアンジェリカから受け取った識別タグを首へかけた。
識別タグだがE~Gランクが銅、CとDランクが銀、AとBランクが金、Sランクが白金でタグが作られ、同じタグ帯ではランクが大きくなるほどタグが大きく装飾が豪華になる。
冒険者ランクがランクアップすると、前までのタグが回収されて新しいものが再配布される。
冒険者の識別タグは身元証明にも使われる。ただ海外から来た人が冒険者ギルドで登録をする場合、身元保証人がいなければ登録できない為、俺がリビアの身元保証人になっている。
「どういたしまして。それとテイトさん、昨日のクエストの達成報酬ですが、ギルド口座に振り込んでおきました」
「ありがとうございます、後で確認しますね」
「ところで魔獣の素材の売却とかは考えてないんですか?」
「そうですね……せっかくなので自分の武具の更新に使いたいと思っています。ただ牙や爪など、余りそうなものは武具の制作費用のために売りたいと思います」
「ありがとうございます、助かります! 冒険者ギルド全体の戦力増強の為、魔獣のようないい武具になる素材の買い取りを強化していまして……。武具の更新を行うということは、もちろん魔獣石も売却しないですよね……?」
「そうですね。基本的に武器に使いたいと思っていたので……すみません」
「いえ、お願いしているのはこちらですので。こちらこそ無理を言ってしまってすみません」
魔物の心臓にある魔力を内包した石は魔石と呼ばれ、燃料として電気の発電に主に使用されている。
もちろん魔石をそのままエネルギー源として使用することも可能で、他にも魔力回復薬などポーションの原料になったりもする。
魔獣石は魔獣からのみとれる魔石のことで内包する魔力が特別大きいことに加え、魔石と絶対的に異なる特徴が一つある。それは石自体が魔力を生成し続けるというものだ。
その為エネルギー源として優秀なのは勿論のこと、武具を作成する際にうまく使用できれば誰でも魔獣が使用していた魔法を使用できる武器、または同属性に耐性のある防具を作ることができる。
以上からわかる通り魔獣石は非常に用途が多いのだが、ヒノモトでは魔獣の発生率が少ないため、他の国と比較して圧倒的に需要が供給を上回っている。その為、買い取り金額も他国に比べ高めに設定されている。
ただ代わりにダンジョンで魔石を手に入れることができるため、ダンジョンの多いヒノモトはエネルギー源を他国に頼らずに済んでいる。
魔獣を討伐したパーティーは基本的に売却をせず、自分達のパーティー強化のために使用する割合が多い。それを分かっていながら、ダメ元で聞いたからアンジェリカは謝ったのだろう。
「テイト、おなか……減った」
そういうリビアはお腹を手でさすっていた。言われて俺もお腹が減っていた事に気づく。
ギルドカウンターに置いてある時計を見ると、リビアの登録で時間がかかったためかいつの間にか十三時を少し回った時間だった。
「確かにそれもそうだな、昼ご飯食べに行こうか。それじゃアンジェリカさん、これで失礼します」
「あ、テイトさん待ってください。ランチご一緒しませんか?」
「ダメ。テイトはわたしと一緒にランチを食べるから」
そう言って彼女はすごい力で俺をギルド入り口の方へ引っ張りだした。あれ、何このデジャブ……。
こうして俺はまたリビアに引きずられるようにギルドを出たのだった。
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俺達は昨日と同じ料理屋でご飯を食べた後、リビアの私服を買いなおす為服屋へと向かう事になった。
俺は女の子の服は詳しくない為リビアが気になった店にとりあえず入ってみることにした。
「いらっしゃいませ! よろしければお洋服をお探しするのをお手伝い致しますがいかがでしょうか?」
「ん、大丈夫。テイトと一緒に選びたいから」
「あらあら! 申し訳ありません、お邪魔してしまいましたね。ごゆっくり見ていってください」
そういうと女性店員は俺にサムズアップと目配せを行い去って行った。
「えっと、リビア? 俺女の子の服分からないんだけど……」
「テイトが似合ってると思う服を選んでくれたらいい」
「って言われてもなぁ……」
リビアに似合いそうな服を考えるため改めて、失礼がない程度に改めて容姿を観察させてもらう。
身体は少女らしい細目のスタイルで、白髪が腰まで伸びている。今日はストレートだが時折髪を結って気分転換しているそうだ。
腰からは髪色と同じ白くてしなやかで猫のような尻尾が伸びており、頭には髪色と同じ白色の獣耳が付いている。
少し幼さの残る顔立ちにツンとした印象が同居しており、大粒の宝石の様な綺麗な黄緑色のパッチリした目が特徴の少女だ。
ん~……やっぱりその綺麗な白髪が映える色がいいかなぁ。それと出会った時に白のワンピースを着ていて似合っていたけど俺は逆に……。
「よし、選んでみる」
「ん、よろしく」
その後色々と似合いそうな服を提案して、まるでリビアは着せ替え人形の状態だった。
何故そんなことになっているかというと俺の反応が普通過ぎるようで、どうやら俺の反応がいい服に決めるとの事だった。
数着着せ替えた後、その時はやって来た。
「どう、似合ってる?」
「おぉ……」
今回選んでみた服は正直俺の趣味がかなり盛り込まれている為、似合うか自信がなかったが凄く似合っていた。
今彼女が来ているのは黒色のワンピースドレスで、腰の部分をリボンで締める形になっている。
ワンピースは肩を出すタイプなのだが肩の部分と、スカート部の裾は薄い黒のレースがあり彼女の白い腕と太ももがよく見える。
手には黒色の薄手手袋が嵌められており、どことなく上品さを感じさせられる。
そして服と一緒に太もも丈の白い二―ソックスを履いており、赤のガーターベルトで二―ソックスが落ちないよう留められていた。
ショルダーバッグも欲しいとの事だったので、白を基調に金の金具で装飾されたバッグを選んだが、黒のワンピースに映えてとても似合っていると感じる。
白の二―ソックスに赤のガーターベルトが映えているのが、俺の密かなこだわりポイントだったりなかったり……。
「……見てばかりじゃなくて、似合ってるか教えて?」
「えっと、その……めっちゃ似合ってる」
「ん……よかった。ならこれをそのまま買う」
そういう彼女はどこか満足そうな笑顔を浮かべ、尻尾が左右にゆっくり揺れているのが見える。
ちなみにこのやり取りを初めにサムズアップしてきた店員が、終始ニヤニヤしつつ見守っていたことに会計に向かう時判明した。
そしてお会計後にリビアがそのまま服を着替えたいとの事だったので、お店に許可を取って更衣室を借り着替えてから店を出た。
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リビアのワンピースの他に肌着など何点か買い揃えた後、俺達は服屋を後にした。
リビアの武器を買いに行くかとも思ったが、そのまま着る物を揃えるという流れで、今朝の計画通りリビアの防具を揃えに行くことにした。
リビアがヒノモトへ向かう際結構な金額を実家から持って来たとの事なので、デザイン性と機能性を両立した少しお高めの店に行くことにした。
そして俺はギルドから少し離れた位置にある、「ハイエスト」という、比較的新しめの防具屋にやってきた。
「先に言っておくと初めは店主の対応独特で驚くと思うけど、仕事は一級品だから頑張って慣れていってね」
「ん、……ん?」
俺は店に入る直前にリビアへそう一言伝えるが、流石に意味は分からないようだった。まぁ店主と対面すれば嫌でもわかるのでそのまま入店する。
店内は一五畳程の大きさであまり防具が展示されておらず、広くスペースが取られていてじっくりと防具を見ることができるようになっている。
二人で店内に入ると先客の四十代後半のおじさんがおり、この店の店主とちょうど会話をしているところだった。
「あの……」
「……」
「あの……すいません」
「……なに」
「今日新作のジャケットが売られたと聞いているんですがまだありますか?」
「ジャケットない」
「ウッ……」
「……」
「アッアッー、ッハッハ……」
「……もういい?」
「ピンズは……?」
「ピンズはレジ」
「レレレ、レジィ、ッィッィッィ……」
「もういい?」
「レジィ……アッアッー……ッハァー……」
「お客さん、またなんかあったら言ってくださいね。いい一日を」
「――ねぇ、テイト……この店、大丈夫?」
目の前で繰り広げられる独特な先客と店主のやり取りに、あまり動じない印象のリビアがドン引きしているのだった。




