表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/157

詰問

 「ランカスター、全て話してもらおうか。遊園地の事故はお前が仕組んだものだろう? 労農党を嵌めて、議会における敵対勢力を亡き者にするための……」


 首相官邸を訪れた俺たちは、テーブルを挟んでランカスターと対峙していた。彼はいつものように飄々と、まるで俺たちのことなど眼中にないかのような調子で食事を進めるのであった。


 「そんなに怖い顔しなくても。ニック、これは君の為でもあるんだ。労農党はアナスタシアを脅かす存在だった。だから潰してやったんだ。やがて王室を敵視する社会主義者の活動は減退する。一体何の不満があると言うんだい?」


 遊園地の爆破事件に加担したとして、労農党書記長並びに党幹部の殆どが逮捕された。彼らはテロと大量殺人の容疑を掛けられ、検察は死刑を求刑しているという。世間の反応も凄まじく、王国の安寧を脅かす社会主義勢力を断固排撃すべきとの論調が日増しに高まっていた。


 しかしあの事故は、すべてランカスター首相及びランプリング内相の陰謀であったのだ。


 「市民を大勢殺した。労農党の仕業に見せかけて、奴らを潰すために仕組んだんだ。この事実を公表すれば……」


 「公表すればいい、新聞社にでも持ち込みたまえ。ランカスターは己の野望の為に市民を殺したと、そう訴えればいい。王国の英雄が証言者とあれば、全国の読者も信用するだろうよ。私は総理大臣の役職を失い、殺人教唆の罪で極刑といったところかな? さあ、今すぐここを出てユトダイン・タイムスの本社か、それとも警察の下へ向かうといい」


 「……てめえ」


 「はは。君が真に誠実な男であれば、既に私を売り飛ばしているはずだ。しかし君は今こうやって私と対話している。君はまったく不誠実な男だよ。どうせ、公表する気などこれっぽっちも無いのだろう?」


 薄ら笑いを浮かべるランカスター。今なら分かる。こいつは自分以外の人間をコケにして嘲笑っていやがるんだ。奴からして見りゃ俺も労農党の連中も、いや全国民が、全人類がバカに見えて仕方がないのであろう。全ての事象がこいつの思い通りに進んでいるのである。


 「何の罪もない自国民を殺しておいて、平気でいられる総理大臣があってたまるか」


 「戦争となれば更に多くの自国民を犠牲とする。果たしてヘルト皇帝は現下の紛争を通して、一体何人の国民を殺したかな? リトラス義勇軍のトップも同様だ。君も元軍人ならそのくらい理解できると思っていたが……。部下の兵士に死ねと命ずる度胸も無く、軍人ごっこでもしていたのかい?」


 「……兵士と市民は違うだろうが。てめえはてめえの思惑で民間人を殺した。善良な市民をな」


 「果たして違うものか。兵士は市民から成る」


 「国王は国家であるかと、初めて会った時お前は、俺にそう問いかけたよな? あの時お前はノーと言い放った。法は国王をも超越すると暗に伝えてきただろう? その理論を取るならば、言うまでもなくお前は厳正に処罰されるべき人間ではないのか?」


 「ハハハ、ねちっこいなあ。私は最初から、己の野望しか見えていない」


 「世界平和のためってやつか? いかれてやがる」


 「私を止めるか? ニック」


 「……お前がわからねえ」


 「君はアナスタシアの心配だけしてればいい。リトラス紛争は思っていたより長引きそうだ。義姉さんのヘルト訪問は、まだまだ先の話になりそうだね……」


 「お前はアナスタシアの気持ちを考えたことがあるか? 実の父親を裏切らせるんだぞ?」


 「ハッハッハ! 家族が何だっていうんだい!? まるで兄さんみたいなことを言うじゃないか!?」


 大声で笑い立てるランカスター。常に冷静な姿を見せる彼が、柄にもなく大げさな反応を取って見せるものである。これも何らかの演技なのであろうか。


 「ジェームス国王は立派なお方だ。少なくともお前よりは何倍もな」


 「そりゃそうさ。出来損ないの私と違って、兄さんはいつだって優秀だった。……フフフ」


 「何が可笑しい?」


 「……いやあ。そんな兄さんがね、僕に先を越されてさ……クク……今やお飾り国王って……フフフ……」


 必死になって笑いをこらえるランカスター。やがて彼は平静を取り戻し、鋭い眼光で俺を睨みつける。


 「なあニック、君は裏切らないよな? 王家の契りに従って、最後まで盟約を遵守してくれるよな?」


 「裏切るって……ホールデンの情報は全部見せただろうが。俺は約束を守った、後はお前の番だろう?」


 「だって君は過去に戻れるんだから。盟約をなかったことにもできてしまう」


 「……今のところ、お前を信用している。ある程度な」


 「これからも信用してくれていい。……そうだな。さすがに軍隊へ復帰させることはできないが、君たちを王室付職員に任命してやろう」


 ランカスターのセリフに、俺たちは顔を見合わせた。彼の提案はすなわち、俺たちへアナスタシアの護衛を任せるというものである。これまで半年間彼女へ近づけなかった俺たちにとって、王室付職員への任命は願ってもない提案であった。


 「その代わりにだニック。君は政治に首を突っ込むな。労農党の件も他言するなよ。下手に過去へも戻るな。私の完璧な計画を崩せる者は、君の他存在しないからな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ