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決着

「来たか!?」


「ええ! 全員外に出るわよ!」


俺たちの作戦は至ってシンプルなものであった。まずは前提条件として、遮蔽物の無い屋外で、敵の姿を常に捕捉し続ける必要がある。そのうえで奴らに攻撃の隙を与えないよう、一方的な連続攻撃を浴びせ続けるのだ。これはリリアンとフットの役割であった。彼ら二人に加え、一名の索敵班員が身を寄せ合って体制を整える。


機動力と格闘戦に自信のある俺とロイドは、アナスタシアの護衛を務めることになっていた。リリアン達とは少し離れた地点でテレポート使いの奇襲に備えるためである。その他王宮職員もアナスタシアの周囲を取り囲み、敵の襲撃に備えるのであった。


「二時の方向! 敵影発見!」


索敵班員の声が上がると共に、俺たちの目の前に氷の壁が現れた。リリアンの無差別攻撃から俺たちを守る為の楯である。


無数の氷槍が彼女らの周囲に出現し、一斉に放たれた。俺たちは目の前の氷壁に守られながら、前方に見える敵の姿を確認する。


「初めて見る敵がいる。あの大男……」


「どうやら強化系の能力を使っているようですな」


氷槍の連続攻撃をもろに受け続けながら、ゆっくりとこちらへ歩み寄る一人の男。いや、男かどうかも分からない。その全長は三メートル近くあるだろうか。全身が堅い岩のようなもので覆われており、全ての氷槍攻撃を弾いているのである。


「あの後ろにテレポートと重力が隠れてるな。しかしリリアンの貫通力でも貫けないとは」


遮蔽物が無いなら、持ってくればいいという訳か。あの岩男の陰に隠れて重力攻撃を浴びせるつもりなのだろう。しかしこちらにはフットの爆破攻撃がある。


「食らいやがれ!」


岩男を中心に大規模な爆発が発生した。白煙に包まれる敵影。フットは攻撃の手を緩めず、連続で爆発を食らわせ続けている。


すると次の瞬間、フット達の目前に敵の姿が現れた。恐らくテレポートの仕業であろう。岩男が拳を振りかざし、フットら三人を纏めて叩き潰そうとする。


間一髪で氷壁が発生し、敵の一撃が食い止められた。しかし氷のバリアは粉々に砕け散り、岩男の二撃目が繰り出されようとしている。

再び防御態勢を取ろうとするリリアン。しかしその時、俺達の身体に巨大な重力が圧し掛かる。


「くそっ! またこれかよ!」


氷槍攻撃が一時停止され、他二名の敵が自由に動けるようになっていたのだ。

不味い、このままでは……。


嫌な予感は見事的中した。フードを被ったテレポート男が目の前に現れ、まずはロイド目掛けてサーベルを突き立てようとする。俺は地面に這いつくばりながら、力ずくでピストルを構え、敵の足元目掛けて発砲した。


「くっ……!?」


右足首を撃ち抜かれたテレポート男は体勢を崩し、すぐさま瞬間移動で退避する。同時に巨大な爆発音が響き渡り、俺たちを押さえつけていた重力が解除された。フットの爆破が間に合ったのだろう。三人の状況が心配だが、今はそちらに意識を割いている余裕がない。


「ロイド! 大丈夫か!」


「……急所は外れています。助かりました」


背中に刺し傷を負ったロイドであったが、命に別状は無さそうだ。彼は急いでアナスタシア達の元へ駆け寄り、再度応戦の構えを取る。

前方に目をやると、サーベルを杖代わりに立つテレポート男の姿が見えた。俺はすかさず自動小銃を構え、男めがけて乱射する。


バリバリと音を立て連射される銃弾。敵は瞬間移動を用いて、今度はアナスタシアら非戦闘員の背後へ現れた。


その動きを予測していたロイドが、瞬時にサーベルで応戦する。俺は隙を見て、再び銃弾を浴びせ掛けた。


後方へ退避したテレポート使いであったが、俺は引き金を引いたまま銃口を移動させる。やはり思った通りであった。このテレポート男は不意打ちに弱い。視覚外からの攻撃を避ける際、必ず後方へと退避するのである。

自動小銃の連射をかわし切れず、体に数発の弾丸を打ち込まれるテレポート男。声を上げる間もなく、男は仰向けに倒れ込んだ。


「ロイド! 手錠を!」


男の両手に手錠が掛けられる。こいつは只の手錠ではない。諜報局から渡されていた、能力封じの効能を有する手錠である。

これでテレポートの能力は封じられた。残るは二人、岩男と重力使いである。


「ロイド、もうテレポートの奇襲を気にする必要も無くなった。非戦闘員を遠くに避難させてくれ」


「分かりました」


アナスタシアたちが戦場から離れるのを確認した俺は、残る二人の契約者を見据えた。戦闘は一進一退の攻防を繰り広げているようだ。


「フット! リリアン! テレポートを倒した! 後は思いっきり暴れてくれ!」


俺の声に、フットが不敵な笑みを浮かべる。


「ニック! お前も少し離れろ! こいつも一緒に!」


フットらと共にいた索敵班員が、俺のもとへと駆け寄ってくる。俺はテレポート男の身体を抱え上げ、索敵班員と共に戦線を離脱した。



俺たち二人は、少し離れた地点から戦闘を見守ることにした。


「他の四人はどうしてる?」


隣に立つ索敵班員へそう尋ねると、彼は事務的な調子で返答する。


「敵の感知系契約者を捜索しております」


そうだ。戦闘に夢中で、すっかり少女の存在を忘れていた。彼女の能力は取り分け厄介な為、できれば身柄を押さえたいところである。


「見つかりそうなのか?」


「いえ、捜索は難航していますね。彼女の探知可能域は広大です。我々索敵班の予測では、恐らく十キロメートルを超えるのではないかと。対して我々は一名につき一キロメートル前後の探知可能域しか持ちません。四名で当たっても、周囲十キロメートル範囲内の捜索は困難を極めます。ましてやテレポートが沈んだ今、彼女は既に撤退を始めているかもしれません」


「確かにそうだな。まあ、三人やれただけでも充分か」


少し目を離している間に、既に残る二人との戦闘は片付きかけていた。岩の男は体全体を氷漬けにされ、身動きの取れない状態となっている。そしてフットの爆破とリリアンの氷槍を同時に向けられた重力使いに、最早反撃の手立ては残っていない。為すすべなく逃げ惑う男に向け、一斉に放たれる攻撃の嵐。


「あいつら、やっぱバケモンだな……」


俺は思わずそう呟いていた。瀕死に追い込まれた重力使いの両手にも、能力封じの手錠がはめられる。



「終わったな。二人ともやっぱすげえよ」


そう声を掛けると、フットがニヤリと笑みを浮かべた。リリアンは相変わらず何も答えない。


「お前がテレポートを倒してくれたからな。奴がいないだけで戦局が大きく変わる」


「一旦こいつらを運ぼう。折角確保したんだ。死なれたら困る」

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