第94話 脅威
先遣隊からの情報を得たギャリオ帝国は、その情報に驚きを隠せなかった。
「まさかこんな技術を、国家と呼べるかどうかも怪しい連中が持っていたとはな」
「確かにペンローズ過程を使った技術の研究は行われていたが、あと200年はかかるものだと思っていたぞ」
「それに、小さいとはいえ、ブラックホールを動かす技術も確立させている。かなりの脅威だ」
技術者たちは感嘆する。
当然の話だが、ギャリオ帝国やロクシン帝国でもブラックホールを使った研究は行われている。
しかし、ブラックホールを扱うということは、それだけ危険も伴うということだ。
過去には、数名の技術者が事象の水平線の向こうに到達してしまったという事故も起こっている。
高度な技術を持っている彼らにとっても、ブラックホールはそれだけ危険な星なのだ。
しかし、そんな危険を孕む星を、亡命国家は使っている。
それだけ、その分野に対しては理解を深めているということなのだろう。
この情報は、すぐさまギャリオ帝国首相に伝えられる。
「……なるほど。そのようなことが……」
「首相、これは安全保障上の問題です。直ちにロクシン共和国とミューシャ王国に報告するべきです」
そう国防相が意見を述べる。
「しかしだな、亡命国家というのは、もともとラサイド公国の残党が結成した小規模な組織だろう?そんなに脅威になるとは思えないが……」
「首相、既に先遣隊のうちの一隻が亡命国家の攻撃によって沈んでいます。目撃証言によれば、ほんの一瞬の出来事だったそうですよ?そんな危険なものを持っている亡命国家に遠慮なんかいりません」
国防相は息まいて説得する。
「分かった分かった。とにかく、陛下にお伝えせねばならないだろう」
次の日、早速首相は国防相と共に、ギャリオ帝国皇帝陛下と謁見する。
「陛下、この度は謁見の機会を与えてくださり、感謝いたします」
「あぁ、よい。それで?要件とはなんだ?」
「はい。早速本題に入らせて頂きます」
そう言って、首相が簡単に、亡命国家の存在と隠された技術力の話をする。
「……そうか、それだけの技術を持っているのならば、脅威にもなりえるだろうな」
「よって、首相である私がロクシン共和国並びにミューシャ王国に対して説明を行うべきであると考えます」
皇帝陛下は少し考え、口を開く。
「そうだな。確かにその必要がありそうだ。すまないがお主のほうでやってくれないか?」
「勿論です、陛下」
こうして、ギャリオ帝国、ロクシン共和国、ミューシャ王国の三ヶ国によるホログラム会談が行われた。
「本日はお集まり頂きありがとうございます。早速、我が国のほうから報告があります」
そう言って首相が簡単に説明を行う。
「先日、銀河中心部に侵攻中の先遣隊から、ある情報がもたらされました。それが、亡命国家の武力組織である亡命軍と、亡命軍が保有していた兵器です」
「亡命国家は存在しているという認識で問題ないのですか?」
ロクシン共和国の大統領が聞く。
「その認識で問題ありません」
「それよりも、亡命軍が保有していた兵器というのが気になりますな」
ミューシャ王国の閣僚会議議長が話す。
「それについてはこちらを。先遣隊から送られてきたデータです」
スクリーンにデータが並べられる。
「今回捕獲した兵器に関するデータです。我が国の総合技術研究所の職員によって整理されています」
「『マイクロブラックホールを使用した電磁波加速増強装置』……ですか」
「読んで字のごとく、ブラックホールを使用して光や電磁波のエネルギーを増強させ、それを放射する装置です。この装置から、ブラックホールを移動させる技術。ブラックホールからエネルギーを取り出す技術を持っていることが容易に分かるでしょう」
「それはそうだが、実際どれだけの能力を持っているのかが分かりません。何か比較になる情報はないでしょうか?」
「それに関しては、我が国の先遣隊の内の一隻が、照射された電磁波によって蒸発したという情報があります」
それを聞いた各国はザワザワしだす。
「ギャリオ帝国の船は重装甲で有名だろ?そんな簡単に破壊などされないはずだ」
「それをあっさりとされているのだから、相当なエネルギーが集中したんだろう」
「そう考えると、亡命国家の技術はとんでもないことになるな」
そんな声があちこちから上がってくる。
そこに、ミューシャ王国から報告が入った。
「我が王国でも、似たような兵器の開発は進んでいました。しかし、ブラックホールを安全に運用するための方法を模索中でした。そのため未だ実用化に至ってません。そうなれば、亡命国家は我々よりも早い段階で、この技術を確立させたことになります」
それによって、各国の騒めきはさらに大きくなる。
それもそうだ。ギャリオ帝国とロクシン共和国の技術の半分以上はミューシャ王国からもたらされたものである。それだけミューシャ王国は進んだ技術力を持っているのだ。
そんなミューシャ王国でも技術が追いつかないものを亡命国家が持っている。
それだけで、どれだけ技術力に差があるか分かるだろう。
「とにかく直近の課題としましては、この攻撃の回避の方法や、我々もこの兵器に準ずる兵器を持つことが必要であると考えます」
そんな感じで会談は進んでいくのだった。
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