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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第93話 接近

 先遣隊は、そのまま亡命軍を包囲するように動く。

 しかし先遣隊は隙間が空いている状態。それに比べて、亡命軍は密集状態であるとも言える。それでも距離は10kmほど離れているが。

 いくら宇宙空間といえども、1000kmもの間隔が空いていれば簡単には命中しない。

 そのため、亡命軍の攻撃はどんなに精密に撃った所で命中はしないだろう。

 逆に、先遣隊は密集している亡命軍に対して有利に戦うことが出来る。

 しかし、流石に間隔を空けすぎた。単純にして見れば、亡命軍の艦隊まで1000kmもの距離が空いている。

 この状況でレーザー砲撃した所で、減衰が起こって装甲に弾かれる可能性が高い。また、実弾を使用するにも、射程ギリギリである。


「指揮官、これは失策でしたな」


 そう艦隊参謀が呟く。


「確かにそうかもしれないな。しかし、未知なる脅威と戦うには、慎重過ぎるくらいがちょうどいいだろう。通信班、通信傍受のほうはどうだ?」


 指揮官は、通信士に聞く。


「それが、音声でのやり取りのはずなんですが、聞き慣れない言語でしゃべっているようです」

「どういうことだね?」

「言語としてはラサイド連邦で使われている言語なんですが、どうも要領を得ない箇所があるんです」

「翻訳機は?」

「ちょっと待ってください。……だめです、正しく翻訳されてません」

「うぅむ……。亡命国家で広く使用されている独自の言語なのだろうか?」

「今は通信傍受を諦めたほうが良さそうですね」


 そう艦隊参謀が言う。


「そうだな。今は敵艦隊と邂逅するのが先だ。全艦、敵艦隊に向けて前進!」


 指揮官が指示を出す。

 それにより先遣隊は、敵艦隊に向けて前進を開始する。

 しかし、先ほども述べた通り、距離が空きすぎてまともに攻撃が当たらない。

 とにかく今は接近するのが最適解だろう。

 各艦、ブースターを全力で吹かし、速度を上げていく。

 1時間もすれば、だいぶ距離は狭まってきた。


「各艦、通常攻撃を開始せよ」


 艦隊指揮官が指示を飛ばす。

 各艦、減速をしながら攻撃を開始する。

 宇宙空間で最も効果を発揮する武器は、レーザー砲撃だ。発射速度は実弾より少し遅いか同等程度である。そのため汎用性が高い。

 もちろん他の攻撃方法もある。砲撃と双璧をなす攻撃方法、ミサイルだ。

 先遣隊が載せているミサイルには、大気圏内用と宇宙空間用の2種類がある。さらに、それぞれ無重力下運用と重力下運用に分かれる。

 詳細な説明は今回省くが、要するに適材適所があるということだ。

 今回使用するのは、宇宙空間用無重力下運用である。

 仕様通りのブースター部を弾頭と接続し、発射態勢は整う。

 あとは諸元を入力し、発射するだけである。


「ミサイル発射準備完了」

「発射」


 ミサイルが一斉に発射され、そのまま敵艦隊へと突き進む。

 もちろん、亡命軍も簡単にはやられない。

 対小型飛翔物体機銃を使って応戦する。

 しかし弾幕が貧弱なのか、あっさりとミサイルの侵入を許してしまう。

 そして、次々と着弾する。

 敵艦隊の中心にある謎の巨大物体にも命中するものの、オンボロ艦艇と違って強固に出来ているようだ。

 やがて十分に減速した先遣隊は、そのまま10km圏内での砲撃戦に移行する。

 亡命軍との砲撃戦は、まさに一方的な戦いであった。


「なんだね、この錬度は。艦隊戦がまるでなっていない。まだロクシン共和国のクーデター軍の方が動けてたんじゃないか?」


 そんなことをボヤく艦隊指揮官。

 錬度の差、技術の差、それらを合わせた戦力差によって、目標の敵艦隊はすべからく撃沈した。


「さて、肝心のアレだが……」


 そういって、指揮官が目を向ける。

 そこには、亡命軍の残骸の中を漂う、球体に近い巨大構造物であった。


「先の正体不明の攻撃は、これから行われた可能性が高いです」

「言われなくても分かっている。あの巨大構造物に乗り込むぞ。陸戦隊は準備を進めてくれ」


 指示を受けたギャリオ帝国宇宙軍陸戦隊は、各々装備を身にまとう。

 準備が出来たら、そのまま小型艇に乗り込み、巨大構造物へと近づいていく。

 その時である。


「小型艇より入電。異常な重力を検出したとのことです」

「重力だと?接舷に問題はないか?」

「制御可能なため、このまま接舷を行うそうです」


 そういって、小型艇は巨大構造物に接舷する。陸戦隊はバラバラにならないように、一斉に内部へと突入した。

 そこには、非武装の技術員が数名いるだけだった。


「彼らはかつてラサイド公国の住民であったらしいですが、先の銀河戦争時に銀河中心部に避難。そのまま亡命国家の一員として働いていたそうです」

「そうか。この巨大構造物については、何か情報は得られたか?」

「はい。この構造物は、亡命国家の技術の粋を集めて造られた、マイクロブラックホールによる超出力レーザー光線砲であるとのことです」

「マイクロブラックホールだと?」


 ブラックホールには、エルゴ球と呼ばれる領域が存在している。この場所は事象の水平線とは異なり、頑張れば脱出することが可能な領域だ。

 実は、このエルゴ球に物体を落下させると、ブラックホールが持つ強大な回転力によって、加速した物体を取り出すことが出来る。これをペンローズ過程と呼ぶ。

 さて、ここでブラックホールを鏡で覆い、光や電磁波を入れたらどうなるだろうか。

 一部はブラックホールに吸収されるだろうが、大半はエネルギーを得て加速・増強する。

 十分にエネルギーを得られた電磁波を解放すれば、得られただけのエネルギーを持った電磁波が放出されることだろう。

 つまり、最初に先遣隊が攻撃を食らったのは、ブラックホールによってエネルギーを得た電磁波による光速の攻撃だったわけである。


「……なんだか難しい話になってきたが、要は電磁波を増強させて我々に照射した、ということか?」

「おおむねその解釈で間違いありません」

「……厄介なことになってきたな」


 そう、全長350mにもなるこの光線砲が量産されていた場合、かなりの被害を被るからだ。


「とにかく、これは懸念材料として総司令部に報告しよう」


 そういって、通信を入れる先遣隊であった。

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