第92話 光線
ギャリオ帝国軍が派遣した調査隊は、ギャリオ帝国の国境を越えて、銀河中心部へと進んでいた。
一方で、ラサイド連邦は声明を発することはなく、丸一日ほど時間が経過する。
ギャリオ帝国、ロクシン共和国、ミューシャ王国は共同で、ラサイド連邦に対して次の声明を発表する。
『我々三ヶ国は、ラサイド連邦がこれまで行ってきた蛮行を許さない。銀河中心部に存在すると思われる亡命国家との関係を公表せず、これまで説明を逃れてきた。これはその決算である。我々はラサイド連邦に対して、宣戦布告する。これ以上の蛮行は許さない。これは最後通牒である』
この最後通謀をもって、三ヶ国は戦争状態に入った。
第二次銀河戦争の幕開けである。
この瞬間、ギャリオ帝国の調査隊は、亡命国家に対する先遣隊になった。
ロクシン共和国の宇宙軍も、艦隊を動かしてサライド連邦に向かう。
第13艦隊第219巡航艦隊は、第599任務部隊に編成され、ロクシン共和国とラサイド連邦の国境を越える。
「俺たち、もう敵地にいるんだな……」
そうフクオカの同僚が呟く。
「もしかして、緊張してるの?」
「バッ、そんなんじゃねぇよ」
「お前ら、話するのは別に構わないが、もう少し緊張したらどうだ?」
上司からそんな小言を言われる。
そんな中、ギャリオ帝国の先遣隊が、あるものと遭遇した。
「何か反応はあったか?」
「磁気嵐で良く見えませんが、我らと同じ程度の艦隊と思われる物体が接近してきています」
レーダー観測員がそのように報告する。
「とにかく接近してみないことには分からないだろう。全艦、前進を続けよ」
そういって先遣隊は前進を続ける。
前進を続けることによって、少しずつ全貌が明らかになってきた。
10光秒の距離に入ってくると、先遣隊は向こうの様子の全体を確認する。
「これは……、見たことない艦艇が多くありますね」
「これが例の亡命国家の艦艇なのか?」
「おそらくそうでしょう。IFFの情報を更新します」
そういって敵味方の識別を行う。
そして、これらの敵を亡命軍と呼称することになった。
「亡命軍艦隊の中心に、謎の巨大物体が存在しているようです」
「ずいぶんと巨大だな。一体なんだろう?」
そんなことを言っていると、総合光学観測器が何かを観測する。
「あの巨大物体から、何かX線のようなものを観測しました」
「X線だと?一体なにがあるんだ?」
そう言ってると、次の瞬間には先遣隊旗艦の横を光る何かが通り抜けた。
そして光る何かは、そのまま先遣隊の一隻に直撃する。
「な、なんだ!?」
「分かりません!」
「強力な電磁波を確認!こんなの見たことない……!」
観測員がそう漏らす。
「被害状況を確認せよ!」
「味方戦艦の反応消失!」
「我が艦含めて多数の艦艇に損傷を確認!」
とんでもない損害を被ったようだ。
先遣隊の指揮官は混乱する。
「一体なんの攻撃だ!?」
「各種観測機器が故障している。特にカメラ関係がやられたようだ」
「主砲で使っているレーザーとは異なるようだが?」
「それはなんとも言えない」
「そもそも、あの光線の出所を調べる必要があるだろう」
「ほんの一瞬の攻撃だったが?」
結局話し合いを設けるものの、残念ながら結論が出ることはなかった。
それに、次にまたあの攻撃が来ることも簡単に想像出来るだろう。
とにかく、今はこの攻撃を食らうわけには行かない。
そのため、艦同士の間隔を空けることを余儀なくされた。
「今はこれが一番の対処法だ。しばらくはこれで耐えてくれ」
お互い1000km程度の間を空けて、先ほどの光線に対処しようとする。
しかし先遣隊の司令部は、対処に困っていた。
「あの光線が一体なんなのか。それをはっきりさせないといけないだろう」
「いや、それよりその不明な兵器を壊すほうが先だろう」
「しかし、亡命国家に関して何か分かるのではないか?」
「そんな事をしてどうなる?結果は変わらないだろう」
「とにかく、接近しないことにはなんとも言えない。とにかく接近だ」
「亡命軍の戦力がどこまでなのか不明なのに、そんな事をしてはこっちが攻撃される」
そんな感じで、堂々巡りが発生してしまう。
しかし、そんな事を言っている間にも、亡命軍との距離は次第に接近してくる。
こうなれば、もはや結論は出たも同然だ。
「近接戦を仕掛ける!」
幸い、先ほどの光線は今になっても来ていない。
ならば攻撃するほか手段はないだろう。
「全艦、突撃準備!」
そう指揮官が命令を下す。
そうなれば戦う他ない。
艦隊はお互いの距離を1000kmほど離れた状態で亡命軍に突撃する。
「この状態で突っ込むなんて無茶に近い」
「だが、あの光線を見ただろう?あんなものを放置しているのが問題だ」
「とにかく、攻撃するに限るだろう」
先遣隊の中では、意見が二手に分かれる。
しかし、意見がどちらに分かれたとしても、司令部が決定した意見は簡単には覆らない。
結果、先遣隊は亡命軍に突撃するという形になった。
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