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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第91話 ラサイド連邦

 ラサイド連邦首都星。

 そこでは、これまでにないほどの緊張感に包まれていた。


「不味いです、大統領。このままではギャリオ帝国とロクシン共和国と戦争に入る事になります」

「そんなこと分かっている!くそっ、ヒト型め……、卑劣なことをしてきやがる……!」


 そういって大統領は机を叩く。

 ラサイド連邦にしてみれば、銀河内で孤立している状況だ。

 実際ラサイド連邦は、亡命国家と交易がある。しかしそれを公表してしまっては、ただでさえ貧弱な国交が完全に絶たれる可能性が高まるだろう。


「大統領、思想も大事ですが戦略も大事です」

「そんなことは分かっている。だが我々の歴史を見返してみろ。ヒト型にいつも虐げられていただろう」


 そう、ラサイド連邦はレプティリアン、ヒト型爬虫類と呼ばれる種族だ。

 最初は他の国家とは友好的に接していた。

 しかし、ロクシン共和国、ギャリオ帝国、ミューシャ王国の種族は体形が比較的似ているのに対し、当時の国家、ラサイド公国の種族は爬虫類に似ている。

 当然の事ながら、その見た目から、何かと邪険にされることが多かった。

 それは次第に態度として出てくる。

 しかしそれ以上に、ラサイド公国が孤立するような行動を取るようになったのだ。

 それは、見た目の劣等感から来る自己嫌悪とも呼べる感情である。

 それによって、ヒト型国家に対する強硬策を取る事をしたのだ。


『ヒト型を滅ぼせー!』


 そういった国民感情が噴出し、結果戦争という選択肢を取ってしまったのである。

 もちろん、感情に任せて始めてしまった戦争は、ロクシン共和国とミューシャ王国によって、あっさり鎮圧されてしまった。

 その後に締結された銀河戦争停戦条約により、ラサイド公国は解体され、ラサイド連邦となった。さらに銀河戦争停戦条約では、ラサイド連邦の軍の保有を半分以下にするように規定される。それによって、ラサイド連邦は弱体化せざるを得なかった。

 自分から始めたことであるが、結局国民感情が何より優先され、現在のような状況になっているのだ。


「大統領、冷静になってください。彼らヒト型と言っても一枚岩ではないでしょう」

「だが共通の敵である我ら連邦を前にして、団結するのではないのか?」

「その時は、亡命国家に頼ることになるでしょう」

「亡命国家……。以前から疑問なのだが、あの国に投資して、何かリターンはあったか?」

「少なくとも、とある技術に関しては知見が広がったことでしょう」


 そういって大統領は、落ち着きを取り戻す。


「まぁいい。その技術があれば、ヒト型の戦力にも勝てるのか?」

「試算では可能です」

「……本来なら確実に勝てる状態であって欲しいのだがな。この際仕方ないとしよう」


 そう言って、大統領は席を立つ。


「とにかく、戦争が始まるのは確実だ。ヒト型に対抗出来るように準備を進めてくれ」

「勿論です」


 大統領はそのまま会議室を出る。


「……大統領も困ったものだな」


 閣僚の一人がいう。


「仕方ないだろう。大統領はこの国でも随一のヒト型嫌悪のひどいお方だからな」

「もう少し柔軟な考え方を持ってもらいたい所なんだが……」

「そうか?大統領の考えは合っているようにも思うぞ」

「それは国民に支持されているからだろう」

「良くも悪くも、国民の声を反映しているんだろうな」


 閣僚たちが雑談をする。


「それで、肝心の外交はどうするつもりなんだ?」


 外交大臣が聞く。


「それは当然、抵抗するに決まっているだろう」

「しかし、亡命国家との関係はバレているのも同然。それを前提として動かないといけないだろう」

「だがどうする?今の軍事力では対等に戦えるとは思えないぞ?」

「そんなのは最初から分かっていたことだろう」

「条約違反の軍事力は生産しているが、財政的にも問題だ。税収を増やしたことで国民の反感を買っている」


 そう話す財務大臣。


「それでも大統領のヒト型嫌悪のおかげで、革命などの運動が起きてないのが救いだな」


 そう言う労働大臣。


「それでどうするんだ、武力省?」

「我々の見解としては、十中八九負けでしょうね」


 そう武力大臣が答える。


「なんともあっさりだな」

「我らには秘密兵器があるだろう?それでどうにかならんのか?」


 ほかの閣僚が聞く。


「私は兵器の理解についてはそんなにないが、アレには致命的な欠点があると言わざるを得ない」

「それは言ってるだけで、証拠はないだろう?どこに欠点があるというのだね?」

「分からない。しかし、私の直感がそういっているのだ」


 そう武力大臣が答える。


「まったく……。君は優秀だと聞いていたのだが、理由はそれだけか?」

「まともに説明も出来ないというのは、些か責任感が弱いのではないのかね?」


 武力大臣が、他の閣僚に責められる。


「……いいでしょう。私の言葉をよく覚えておいてください。きっと分かる時が来るでしょう」


 そういって武力大臣は、会議室を出た。

 閣僚たちは顔を見合わせ、疑問の顔をしながら会議室を後にするのであった。

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