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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第88話 会合

 なんとか遊星を破壊し、ドレイクと先行して出撃した爆撃機も帰ってきた。

 上々の戦果である。


「よくやったなドレイク。君のおかげだ」

「自分は自分の仕事を全うしただけです」

「いや、君がいなければ艦隊はおろか、惑星丸ごとなくなっていただろう。君の功績だよ」


 そういって指揮官がドレイクのことを褒める。


「さて、その後のことも考えないといけないな」


 そういって指揮官はある提案をする。


「どうだ?原隊に復帰しないか?」


 もちろん、この話が出てくるだろう。


「もちろん、復帰するのは目標です」

「目標、というのは?」

「原隊に復帰するのはまだ少しばかり早いと考えます」

「つまり、もう少し治療が必要ということかね?」


 指揮官がドレイクの意図を汲み取る。


「今回の出撃で、それを痛感しました」

「そうか。本人がそういうのなら、それでいいだろう」


 そういって指揮官は引き下がった。

 今回の一件で、ドレイクは適応障害を無理やり克服したとも言えるだろう。

 しかし、服薬による治療はまだまだ続く。急に抗うつ薬をやめると、禁断症状が出る恐れがあるからだ。そのため、少しずつ薬の量を減らしていく必要がある。

 そのあたりは医師との相談だろう。

 こうして、ドレイクの病気はひと段落ついたのだった。

 それから数ヶ月後。

 ドレイクは病院にいた。


「……症状もだいぶ落ち着いてきましたし、薬も相当減らせましたね。これなら問題ないでしょう。今日で薬は終わりです。今日以降、症状が出なければ通院もしなくて大丈夫です」

「分かりました。先生、今日までありがとうございました」


 そういってドレイクは病院をあとにする。

 その荷物には薬はない。

 ドレイクは正真正銘、治療を終えることができたのだ。

 医師曰く、これだけ早く治療を終わらせることができたのは奇跡であるとも言っていた。

 それを実現させたのも、ドレイクが治療に専念したことにあるだろう。

 そのドレイクのもとに、ある人物が寄ってくる。


「ドレイクさん」

「……フクオカか」

「聞きましたよ。今日で病院通いは終わりなんですね」

「誰から聞いた?」

「もちろん、軍医からですよ」


 ドレイクは頭を抱える。

 軍医には何かと世話になっていたが、その影響がこんな所にまで来ていた。


「まぁいい。この後は軍医の元に通うこともなくなるからな」

「そうですか……。アタシとしては、少し心配ですけどね」

「フクオカが?冗談もよしてくれ」

「冗談じゃないですよ」


 そんなことを話しながら、二人は母港へと向かうのだった。

 その後、ドレイクは正式に第219巡航艦隊へと復帰する。

 こうして、ドレイクの治療は終了した。

 そのころ、ロクシン共和国首都星に、ある一団が到着する。

 それは、ギャリオ帝国経由でやってきたミューシャ王国の使節団だ。

 首都星の行政区画では、盛大に歓迎式典を執り行っていた。


「ようこそ、ロクシン共和国へ。お会いできて光栄です、王太子殿下」

「こちらこそ、大統領閣下」


 ロクシン共和国人とは違い、赤い肌をしたミューシャ王国の使節団は、王太子を連れてくるという普通ならやらないことをやっていた。

 ロクシン共和国側は、何か大変なことが起きていると考えて行動する。それは最悪の場合、戦争が起こりうる可能性があることを示唆していた。

 早速、非公開で会合が行われる。


「早速ですが……。殿下、今回の我が国への訪問、どのような理由がおありなんでしょう?」


 大統領は単刀直入に聞く。


「それは、ここに記されています」


 そういって、黒服の事務員が紙を配る。


「今時紙での資料提出とは……。相当不味いことが起きているということですか?」

「そうとも言えます。では資料をご覧ください」


 ロクシン共和国側が資料に目を通す。

 1部たった2枚の資料であるが、そこには懸念材料が記されていた。


「銀河中心部に存在する謎の国家的存在、通称亡命国家の活動が活発になってきているという報告です」


 それは、かつて共和国を転覆させようと目論んでいたクーデター軍との関与が疑われている集団である。


「亡命国家……。最近何かと話題ですな。しかし、これだけの情報を提供するのに、わざわざ使節団をよこすとは考えにくいですね」


 そう大統領が言う。


「察しが良くて助かります。これに加えて、ラサイド連邦が亡命国家に接近しているという情報を入手しました」


 その言葉に、会場がざわつき始めた。

 そんな状態でも、王太子は構わず言葉を続ける。


「かねてより、ラサイド連邦と亡命国家の関係は親密なものであると認識していました。しかし、ここになって、亡命国家とラサイド連邦の活動が活発になってきているのです」

「なるほど……。しかしそれを裏付ける確証があるのですか?」

「もちろんです。我が国のスパイは意外と優秀でしてね。そういえばクーデターの首謀者の階級は少将で、ラサイド連邦や亡命国家とも繋がりがあったそうで」

「……これ以上聞くのは、少々怖いですな」


 大統領は頭をかく。


「我が国とラサイド連邦は弱い国交を結んでいるものの、すべては分かりません。そのために、スパイなどを送り込んでいるのですが、その情報筋からの提供です」

「中立国故の苦労は絶えませんな」

「えぇ。話を戻しまして、ラサイド連邦は亡命国家に軍の総力の3割ほどを集結させているようです」

「3割?それは本当ですか?」


 それだけの兵力があれば、ロクシン共和国、ギャリオ帝国、ミューシャ王国のどれか一つの国土を半分奪い取ることができるだろう。


「この情報をもって、我が国はギャリオ帝国、ロクシン共和国とともに、ラサイド連邦の軍事的行動を抑圧したいと考えています」


 そう王太子は告げた。

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