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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第86話 出撃

 超高速で巨大物体を破壊した際には、レーダー上では双方が消滅したように見えることがしばしある。

 今回もその類いの障害だろうとドレイクは考えていたが、いつまで経ってもレーダーは回復しない。


「爆撃機はともかく、あれだけはっきり見えていた遊星が見えなくなるのはおかしい……」


 ドレイクはあらゆる可能性を考える。

 まず上げられるのは、操縦ミスにより遊星と衝突した可能性だ。しかしこれでは、爆撃機の衝突程度で遊星が破壊されたとは考えにくい。

 別の可能性として、爆弾を投下したのはいいものの爆発に巻き込まれたというものである。これなら、爆撃機と遊星がレーダー上からロストしたという説明ができる。

 だが、破片すら見当たらないのは少々おかしいだろう。

 そんなことを考えていると、観測員が声を上げる。


「遊星の反応を確認しました!」


 ドレイクはモニターに映されたレーダーを見る。

 そこには、ほぼ原型を留めた状態の遊星が、何事もなかったかのように接近してきている様子が映っていた。


「これは……!遊星の速度が上昇、光速の42%!」

「一体どういうことだ?」


 艦隊指揮官が尋ねる。

 その時ドレイクの頭の中では、ある可能性を見出した。


「そうか、過貫通したんだ……」

「どういう意味だね?」


 指揮官はドレイクに聞く。


「今回使用した惑星破壊爆弾は、BN-2500爆弾……。つまり核爆発成形侵徹体を使用した成形炸薬弾です。この炸薬弾はタングステンの板を砲弾にして目標を破壊します。通常の岩石惑星なら、粉々にすることは可能なのですが、もしこれが通常の岩石惑星ではなかったとしたら……」

「通常の岩石惑星ではない、というのはどういうことだね?」

「つまり、惑星規模の大きさながら、その内部は惑星ではない……。小惑星と同等の、密度の小さな惑星であるということです。もしそうだとしたら、成形炸薬弾の運動エネルギーを十分に伝達することができずに、惑星を粉々にすることなく貫通してしまいます」

「なるほど。惑星は破壊されず、逆に加速しているのも、運動エネルギーを得てしまったからというわけか」

「推測の域を出ませんが、その可能性が考えられます」


 指揮官は椅子に深く腰掛ける。


「しかしどうするんだね?爆撃機の安否は不明、おまけに目標は加速してしまっていると来た。これ以上手を打てるのか?」


 しばらくドレイクは考え込むが、数十秒後に口を開く。


「方法はなくはないです。しかし、成功するかは未知数です」

「その方法は?」

「小官が出撃します」


 その言葉に、艦橋がざわめく。


「もちろん、皆さんの言いたいことはわかります。しかし、これ以上に戦力があるでしょうか?」

「確かに君はエースパイロットだ。しかし、病み上がりに無茶をさせるほど、我々は落ちぶれてはいない」

「ですが、今から超加速装置を使えるようになるには時間が足りません。それなら、少しでも勝手を知っている人間が使うのが一番でしょう」

「そうかも知れないが、今の君は機体に乗れるのかね?」


 予想通りの心配をする指揮官。

 しかし、ドレイクははっきりと答える。


「問題ありません。そのために治療を続けてきたのですから」


 結局、ドレイクが再度遊星に対して爆撃するという話に落ち着いた。

 そして、ドレイクの推測をもとに、別の惑星破壊爆弾が用意される。

 1つで衛星や大きめの小惑星を破壊可能な子弾を収容したクラスター爆弾、BC-1200爆弾だ。

 理論上は、これを遊星と接近している状態で使用すれば、衝突しただけである程度遊星を粉砕でき、そして爆発させれば影響の少なくなる大きさになると予測されている。

 だが、これはあくまでも理論上の話であり、実際にそうなるかは分からない。

 つまり、これからドレイクたちがやろうとしているのは、一種の賭けである。

 ドレイクが超加速装置を外付けした大型の爆撃機に乗り込む。


「本当に一人で大丈夫か?」


 整備士の一人が尋ねる。


「本来の能力を引き出せるのなら、問題はない」

「しかし、操縦するのは数ヶ月ぶりだろう?簡単にいくのか?」

「やれることはやる。でなければ、この惑星に住む30億の市民を道連れにするからな」

「……うまく行くことを祈ろう」

「ありがとう。……出撃する」


 整備士が爆撃機を離れる。

 誘導員が離陸の合図を出す。

 それに従い、ドレイクは爆撃機を離陸させる。

 その時だった。ドレイクは軽いめまいに襲われた。


「くっ、こんな時に……!」


 しかし、作戦の遂行と気合によって、そのまま機体を宇宙空間にまで上昇させる。


「こちらドレイク。宇宙空間に達した。これより超加速を開始する」

『了解。以降の作戦は、すべて君に任せる。……無事に作戦を遂行してくれ』

「もちろんそのつもりだ。通信終了」


 そういって、ドレイクは超加速装置を起動する。


「重力操作よし、空間歪曲率よし、亜空間フィールド生成よし。……加速開始」


 いかにも即席で取り付けたようなレバーを前に倒す。

 その瞬間、機体は通常空間を高速で駆け抜けた。

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