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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第80話 確認

 2週間後。医師の診察を受けに、再び病院を訪れるドレイク。


「今日は、前回行った検査の結果が出ています」


 そういって数枚の紙を渡される。

 そこには、ドレイクの能力や性格について書かれていた。


「能力に関しては、全体的に平均値よりも高いですね。ドレイクさんは以前から宇宙軍の艦載機に搭乗していたので、頭の回転が早いのだと思われます。ただ、言語に関しては平均にちょっと届かないくらいなので、その辺は苦手だと思います。それでも平均に近いので、一般的には大した事はありません」


 医師が解説する。


「それで、セリフを入れてもらう検査なんですが、これで分かったことは、ドレイクさんは責任を自分で負いがちということです」

「自分ではそう思いませんが……」

「認識としてはそうかもしれませんが、全体的に内向的な思考をすることが多いようです。今回の適応障害も、自分の責任を強く感じて、症状が出たのでしょう」

「そんなもんですかね?」


 そして医師は、最後の紙を見せる。


「最後のバウムテストですが、自身のエネルギーを内々に閉じ込めているような状態です。しかし、これは決して悪いことではなく、別の形として外部に放出している事を示しています。ですが、外部に放出する機会が少なく、独りよがりになりやすいことも考えられます」

「はぁ」

「総括すれば、ドレイクさんは自己決定が早く、それによって今までは上手くやれて来ているんですが、それが仇となっている状態ですね。よき理解者が近くにいれば、円滑に物事が進んでいくはずです」


 これを聞いたドレイクは、まるで占いを聞いているような気分になる。


「とにかく、発達障害やASDの傾向はほぼないといっていいでしょう。問題である適応障害は、今後の方針としては投薬による対症療法を進めていくと同時に、暴露療法も視野に入れて進めていきましょう。ドレイクさんも、日常を過ごしている間に、何かふとしたことに気が付いたらメモを取るなどしてください」


 そういって、薬を貰って旗艦に戻る。

 しばらく、医師の言葉を振り返るドレイク。


「気が付いたことか……」


 おそらく、ドレイクの症状が閉所恐怖症なのか、適応障害なのかを判別するための材料にするつもりなのだろう。

 ドレイクは自分のできる範囲での観察を開始した。

 まずはベッド。士官用の二人部屋を一人で使っている状況である。そのため、二段ベッドを使用しているのだ。

 ドレイクは下段のベッドを使用している。閉塞感の類いは感じない。


「二段ベッドは問題なし……と」


 自分の端末に、メモとして書き残す。

 そのほか、コックピットと同じような状況に陥る場所を探してみる。

 次に思いついたのは、個室のトイレだ。

 士官室には洋式トイレが一個ついている。

 改めて、自分の症状を考えて入ってみた。

 すると、少しばかり息苦しさを感じる。


「長時間いると発狂しそうだな」


 それもメモに残す。

 それ以外に、何か閉鎖空間になる場所はないか探す。

 旗艦の中を歩き回るドレイク。

 なんとなく歩いていると、偶然にも格納庫に到達した。


「そういや、同じコックピットでも広いほうは入ったことないな……」


 そういって許可をもらって、輸送機のコックピットに乗り込む。

 計器類が目に飛び込んできた瞬間、一瞬のめまいを感じる。


「くっ……!」


 めまいのせいで足元がおぼつかなくなるが、シートに手をかけてなんとか持ちこたえる。

 そのまま、シートに座り込む。


「ふー……、ふぅー……」


 深呼吸をして、なんとか意識を持ちこたえるドレイク。


「……なるほどな。計器が原因の一つだな」


 そういって、ドレイクは自分の端末にメモを書き残す。

 広いとはいえ、そこはコックピット。ドレイクの精神に何か異常をきたすのだろう。

 そんなことをメモに書いた。

 ドレイクは何とかコックピットから降り、整備員に礼をいう。

 そして自室に戻り、この日で分かったことをまとめる。


「閉所でも、自分の生活圏内だと問題はないようだ。それよりか、コックピットのような場所だと、どうも精神的によろしくないようだな」


 そんなことを書いていると、ドアをノックする音が聞こえる。


「誰だ?」

「フクオカです」

「……入れ」


 なんとなく嫌な予感がしたものの、フクオカの入室を許可するドレイク。


「ドレイクさん、お体のほうは大丈夫ですか?」

「あぁ、大した事はない。薬を飲んでいれば、いずれか治るさ」

「アタシ、少し調べたんですけど、適応障害って少々面倒くさい病気だと思うんですが」

「それでも問題はない。不安要素に暴露して無理やり治す」

「相変わらず強引ですね」

「……お前には言われたくないな」


 そういって、ドレイクは机の上に置いてあった薬を静かに隠す。


「とりあえず、暴露療法が良いことは聞いたんで、これを作ってきました」


 そういってフクオカは、あるものを取り出す。


「……ゴーグルか?」

「はい。ドレイクさんの症状は閉所恐怖症かも知れないという情報を聞いたので、これで視界を狭めて特訓ってわけです」

「……ふっ。やってることは馬鹿のそれだな」


 そういってドレイクはそのゴーグルを受け取った。

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