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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第78話 問題

 ニュルブク少将の死刑が執行された後、捜査本部にはこれまでの捜査によって得られた情報が集約されていた。


「……というわけで、少将の個人用の端末から、データの復元が終了しました」


 そのデータは膨大で、整理するだけでも1日かかった。


「それで、少将がラサイド連邦に惚れ込んだ理由というのは分かったのか?」


 陸軍省長官が聞く。


「これがなんとも曖昧な所でして……。クーデター計画初期には『共和国のために身を売る』ような文言だったのが、クーデター実行前には『銀河の平和のために』といった変化が見られました」

「これも亡命国家の影響なのか?」

「当の本人がいないため、精神鑑定等が行えないのが残念ではありますが。しかし専門家によれば、何かしらの影響を受けていた可能性があるということです」

「まぁ、そう考えるのが妥当といった所か」


 長官は、そういって報告書の内容を見直す。


「結局、この秘密兵器というのがなんとも言い難いな。詳しいことは分からないのか?」

「それには私が」


 そういって、国防軍事務局統合情報本部副本部長が出てくる。


「これまでの諜報活動によって得られた情報を統合すると、秘密兵器とやらは銀河中心部のさらに奥に存在することが分かっている。しかし、それは亡命国家でも知っているものは少なく、技術者たちも軟禁状態で開発しているとのことだ。ラサイド連邦との繋がりは確認出来たが、それを使って外交するにはパンチが弱すぎる。よって、このことは今後の課題としておく必要がある」

「結局、秘密兵器というものが何なのかは分かっていないのだな?」

「非常に無念ではあるが」


 そういって副本部長は席に戻る。


「それで、少将以下の師団長らの容疑は確定したのか?」


 長官は思い出したように聞く。


「えぇ、一応は。大半の下士官は師団長からの命令によって動いていたことが分かっています。どうやら、クーデターを起こしていたと認識していた下士官はごく少数であると思われます。一方で師団長クラスは、クーデターであることをはっきりと認識していました。よって下士官らには12ヶ月の減俸、師団長らには国家転覆罪で200年の禁固刑などの懲戒処分を下しました」

「司法の素早い仕事に感謝するしかないな」


 そういって長官は、天井を見上げる。


「これで解決した、と言いたい所なんだがなぁ……」


 まだまだ問題は山積みである。

 しばらく捜査本部に足を運ぶ必要がありそうだ。

 一方で、宇宙軍第13艦隊の管轄。その駐留星に第219巡航艦隊の姿はあった。

 クーデターの後始末が終了し、無事に帰投したのである。


「あー、疲れた……」


 フクオカは母港近くにあるビジネスホテルのベッドに横になる。

 フクオカたちは半舷上陸として、3日間の休暇が与えられたのだ。

 フクオカの女性同僚も同じ部屋に入る。


「艦の中って少し狭いからねぇ。ちょっと体凝っちゃうし」

「ホントそれ。マッサージでも受けに行こうかな」


 その時、フクオカはあることを思い出す。


「そうだ!ドレイクさんが病院に行くとか話してたじゃん!」


 そういって貴重品を持って、フクオカは部屋を飛び出す。

 その頃、ドレイクは旗艦から降り、母港近くにある総合病院に向かっていた。

 現在は旗艦の軍医から診断書を貰い、正式に療養することになったのだ。当然その間は、職務に支障をきたすため、休職扱いになっている。

 総合病院の精神科に診断書を提出すると、すぐに診察室に呼ばれた。


「コーウェン・ドレイクさんですね?」

「はい」

「診断書によれば、典型的な適応障害とのことですが?」

「はい。今まで難なく搭乗できていたコックピットに乗り込むことができなくなってしまったんです」

「なるほど……。精神病の中には、日常的に出来ていたことが、急に出来なくなることもままあることです。今のところ閉所恐怖症なのか、それとも他の要因が重なっているのかは今後の課題としましょう。とりあえず抗うつ剤を処方しますので、1週間程度様子を見てください」


 こうして処方箋を貰い、病院を後にするドレイク。

 するとそこに、フクオカ走ってやってくる。


「ドレイクさん、やっぱりここでしたかっ。はぁ、はぁ」

「……お前、走ってきたのか?」

「そうですよ。ドレイクさんが今後も軍で活動出来るかどうかがかかっているんですから」


 そういって、肩で呼吸するフクオカ。

 それを見て、ドレイクは一つため息をついた。


「まったく。お前はおせっかいが過ぎるな」

「む、そんなこと言われたくないですよ」

「それで、俺に何をさせようっていうんだ?」

「あ、えっと、それは……」

「考えなしで来たんだな?」

「そういうわけではないんですけど……」

「けど?」

「……はい。考えなしで来ました」


 しょげるフクオカ。

 それを見たドレイクは、軽く笑った。


「あ!今鼻で笑いましたか!?」

「いや、違う」

「絶対鼻で笑いました!」

「とにかく俺は旗艦に戻る。今日は外泊の予定ではないからな」

「半舷上陸なのに、ですか?」

「軍医がうるさいもんでね。それに、今は療養中の負傷者扱いだからな」


 そう言ってドレイクは母港へと戻っていく。

 フクオカは、その後ろ姿を見送るのだった。

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