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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第76話 自白

 しばらく腑抜けた表情をしているニュルブク少将。

 数分ほど待った少佐が声をかける。


『では質問しよう。今回のクーデター未遂事件、首謀者はお前か?』


 少佐の問いに、少しだけ体を揺らしたあと、口を開く。


『そ、そうだ……。俺がやった……』


 その発言に、捜査本部はざわつく。

 陸軍省長官は、それを黙って聞いていた。


『自分のパソコンからクーデターのメールを送っていたのか?』

『そ……そうだ……』


 それを聞いて、捜査員が何人か捜査本部を出る。おそらく、ニュルブク少将のパソコンを押さえにいったのだろう。

 少佐はタブレットを取り出すと、画面に例の秘文メールを表示させる。


『これ、お前なら読めるのか?』

『読める……。クーデター決行は2日後……』

『……確かにそうらしいな』


 そういって少佐は監視カメラのほうを向く。


『ということらしいんだが、どうするんだ?』


 これは陸軍省長官に向けた言葉だろう。


「……今聞いてもらった通り、ニュルブク少将が自白した。彼の周辺人物を洗い出し、使っていた端末からメールのやり取りを回収してほしい。以上だ」


 それを聞いた刑事たちが、一斉に捜査本部を飛び出す。


「これで、解決の糸口が見えましたな」


 共和国捜査局の役員が長官に話しかける。

 しかし、長官の顔は浮かばれない。


「どうしました?腑に落ちない顔をしてますよ」

「いやなに、これで本当に良かったのかと思ってしまってね」

「と、言いますと?」

「ほぼ違法な捜査、自白の強要、拷問……。今回の事の大きさと比例して、違法な方法で解決に導く。これが本当に正しいやり方だったのかと思っただけですよ」


 そういって長官は捜査本部を後にする。

 その後、ニュルブク少将の私物を調査した所、クーデターに関する情報がわんさかと出てきた。

 どうやら、事を終わらせた後はラサイド連邦に高飛びする予定だったらしい。

 その他、プライベートのパソコンにはクーデターに関する詳しい予定表、共謀してクーデターを企てた各師団の師団長リスト、クーデターに使用される武器の調達など、細かい内容が保存してあった。

 どうやら一度完全消去したらしいが、捜査局の技術によってあっさりと復元される。

 これによりニュルブク少将の容疑が確定し、正式に逮捕となった。

 もとよりニュルブク少将は、左派的な思想を持つ人物であり、その行動はたびたびテレビやネット上で取り上げられるほどである。その結果、このような事態を招いたと言えるだろう。

 ニュルブク少将と共謀したと思われる師団長は、後々捜査局の人間が確保に向かった。


「しかし、ニュルブク少将はああいう人間ではなかったはずだ……」


 彼の事を少し知っている陸軍省長官は思考する。

 彼の行動は左派的であるが、共和国を安定した国家に導くために奮闘していた。

 仮にも他の国に売り渡すような売国奴ではなかったはずである。


「何かに感化されたか……?」


 しかし、彼の本当の考えは長官には分からなかった。

 こうして1ヶ月に渡る捜査の結果、関係者のほとんどが逮捕される。

 この一連の騒動をめぐって、マスメディア関係は過熱を極めた。

 それもそうだろう。今回の事件は控えめに見ても、陸軍省や国防総省、ひいては現政権に大きな傷を付けることになるからだ。

 スキャンダルが好みなマスメディアは、一斉に今回のクーデターを現政権の失敗だと非難する。

 また、これまでにまともな記者会見を開いてこなかったのも、報道をヒートアップさせる要因になった。

 これに関して、情報の解禁をするべく陸軍省長官が直々に記者会見をすることになる。

 記者会見場には、多くの報道関係者が詰めかける。

 またネット上で同時中継が行われると、その関心の高さからか回線がパンク状態になった。

 長官が記者会見場に現れる。それと同時に焚かれるフラッシュの嵐。

 長官が演台の前に立つ。


「皆さん、本日はお集まり頂き感謝します。これより、今回のクーデター未遂事件、通称ディディラ内乱についての記者会見を始めさせていただきます」


 こうして長官自らによる、ディディラ内乱の説明が行われる。

 今回説明したのは、首謀者がニュルブク少将であったこと、関係者はかなり多い事、ラサイド連邦と何かしらの繋がりがあることを話す。


「……よって今回、ニュルブク少将は内乱罪によって逮捕されるに至りました。説明は以上です」


 その直後、話を聞きたい記者による質問攻めが始まった。


「今回の件で、陸軍省または国防総省は何かしらの措置を取るんですか!?」

「関係者によると拷問を行ったとのことですが、本当なんですか!?」

「そもそも、今回の捜査は国防総省による違法捜査ではないんですか!?」


 矢継ぎ早に質問が飛んでくる。

 長官は、今回の捜査に関しては合法であること、拷問はなかったこと、違法性はない事を強調した。

 しれっと拷問の事を隠しているが、軍の印象を下げることはしないように語る。

 ニュルブク少将は捜査の結果、内乱罪の他、反逆罪、ラサイド連邦に対する外患誘致罪の容疑で再逮捕され、即日死刑が執行された。

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