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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第74話 推察

 取調室の様子が中継されながら、捜査本部では誰が首謀者であるかの推察が行われていた。


「フェリデスト少将は兵站を司る部署の人間だ。軍を裏から操ることが出来るんではないか?」

「いや、ニュルブク少将も大概だ。さっきの聴取の様子を見てみろ、自分の身の保障ばかりに目が行っているぞ」

「だったらロッティラージ中将が一番怪しい。寡黙を貫いているようだが、あれは裏があるからに違いない」


 あーだこーだと言い合っているものの、結局結論が出ることはない。

 聴取のほうも進んでいるようには見えず、悪戦苦闘しているようだ。

 陸軍省長官は、この状態を突破すべく、刑事たちに声をかける。


「諸君、一旦落ち着こう。今ここで疑問を呈しても、問題の解決には至らない。ここは古典的な方法を使ってあぶり出そうではないか」

「しかし、どうするんです?容疑者3人が自分のした事を正直に話すとは思えませんよ」

「まぁ、秘策がないわけではないからな」

「秘策、ですか?」


 刑事の一人が聞く。

 陸軍省長官は静かにうなづいた。


「今回の捜査では、超法規的な方法を用いても問題はないはずだったな」

「それはそうですが……」

「それを十分に活用しようではないか」


 そういうと、一人の刑事が悟ったようにいう。


「まさか、拷問でもするってことですか?」

「その通り。普通の捜査ならまずやらないことを、とことんやってやろうじゃないか」


 そういって陸軍省長官は側近を呼ぶ。

 耳打ちされた側近は、そのまま捜査本部を出る。


「本日の仕事はもう切り上げよう。続きは明日だ」


 そういって長官は捜査本部を後にした。

 それを見た刑事たちは困惑したものの、次々と捜査本部を出る。

 翌日、何食わぬ顔でやってきた長官。


「では、今日も始めていこう」


 そのまま捜査会議が始まった。

 前日同様、取調室の中継を挟んでいる。


「諸君、昨日言ったことは覚えているかね?」

「確か……、拷問をするという話でしたか?」

「そうだ。そのために、ある人物に依頼を出した」

「ある人物……?」


 すると取調室の一つ、フェリデスト少将の部屋に何者かが入る様子が映された。


『……なんですか、君は?』

『俺は共和国陸軍第一師団第一連隊の少佐だ』

『君も陸軍の人間ですか。それで、何しに来たんですか?僕の無罪でも証明してくれるのです?』

『その通りだ。俺はある方法でお前の無実を証明しに来た』

『ほう、ならばその方法を見せてもらいましょうか』


 その瞬間、少佐はフェリデスト少将の事をぶん殴った。


「なっ……!」


 その様子を見ていた捜査本部の一同は、言葉を失った。

 少佐による問答無用のパンチ。それは無防備に構えていたフェリデスト少将の顔面を確実に捉えていた。


『ぶっ……』

『ここで質問だ。お前は今回のクーデターに関与しているか?』

『いっ、いきなりぶん殴る人間がどこにいるんですか!?あなたのやっていることは重大な軍法違反です!』

『残念だが、今回の事に関しては陸軍省長官から直々に命令されている。共和国捜査局も目をつむってくれるらしいからな』

『そんなバカな話がありますかっ。何かの間違いです!弁護士を呼んでください!』


 その直後、再び殴られるフェリデスト少将。

 その衝撃で、椅子から転げ落ちる。


『もう一度聞く。今回のクーデター、お前は関与しているのか?』

『し、していない!そんなこと僕はしていないっ!』

『……本当だな?』

『信じてください!』

『……まぁいい。今回はここまでにしてやろう』


 そういって少佐は取調室から出る。

 一連の光景に、捜査本部は静かになった。


「まぁ、こういうわけだ」


 陸軍省長官は、頭を撫でながら言う。

 その光景を見た一同は、終始無言のままである。

 少佐は、次の目標であるニュルブク少将の取調室に入った。


『なんだ、貴様は?俺に何か用か?』

『俺は陸軍の少佐だ。お前がクーデターに関わったのか?』

『そんなわけあるかっ。俺はただ自分の職務を全うしていただけだ!』


 その瞬間、少佐がニュルブク少将の事をぶん殴る。


『ガッ……!』

『俺の前で口答えはするな。答えはイエスかノーかで答えろ』

『そんなの……ノーに決まってるだろっ』

『……そうか』


 そういって少佐は、ニュルブク少将の取調室から出る。

 最後に、ロッティラージ中将の元に行く。


『……誰だね?』

『一介の陸軍少佐だ』

『そんな少佐が何の用事だ?』

『今回のクーデター、お前は関与しているのか?』

『してないな。する動議がない』


 その瞬間、少佐の拳が飛ぶ。

 しかしロッティラージ中将は、その拳を片手で受け止めた。


『予備動作が大きいな。もっと瞬発力を上げたほうがいい』

『……アドバイスは素直に受け取っておこう』


 少佐はそのまま取調室を出る。

 静まり返った捜査本部では、誰一人として声を上げようとはしない。


「……とまぁ、こんな感じだ」


 陸軍省長官は刑事たちに向けて話す。

 しかし、少しばかり衝撃的な映像が続いたため、誰も言葉を発しない。

 すると捜査本部に、先ほどの少佐が入ってくる。


「お疲れ様だな、少佐。少佐の意見はどうだ?」

「そうだな……。フェリデスト少将はシロだな。アレはやっていない。ニュルブク少将は少し怪しいな。ロッティラージ中将は手ごわい、あれの口を割るのは大変だな」

「そうか。また明日もよろしく頼むよ」

「あいよ、長官殿」


 そういって、少佐は捜査本部を出る。


「……ということだ。参考にしてくれ」


 参考になるもんか、と刑事一同は思ったそうな。

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