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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第73話 容疑者

 捜査本部では、首謀者の絞り込みが行われていた。


「現在のところ、首謀者として容疑にあがっているのは、陸軍省に勤めている将官3名です。うち2名につきまして、現在までのアリバイが存在していません。そのため、この2名のどちらかが今回のクーデターの首謀者と言っていいでしょう」

「では、容疑者の3名をそれぞれ紹介してくれ」

「はい。まず一人目は、陸軍省兵站局兵站管理部輸送機器調整担当官のアックラー・フェリデスト少将です。後方の兵站維持管理を主任務にする部署の責任者で、特に物資輸送に使われる車両や艦艇の調達に長けているようです。現在のところアリバイのない容疑者の一人であり、部署自体もかなり小さい模様です。そのため、外部の人間との接触が少なく、物理的に近い部署の人間も、何をしているのか分からない、といった状態です」


 刑事の報告を元に、彼の情報が備考欄に書き込まれていく。


「なるほどね……。確かに小さい部署なら、やっていることは外部に漏れにくい。その上、関係各所との連絡も絶えず行っていることから、そういった方面とは関係を構築しやすいな……」


 共和国捜査局の重役が感想を述べる。


「では、次の容疑者を」

「はい。二人目は、陸軍省国防政策局政務官のアドレジ・ニュルブク少将です。国策で共和国の防衛に関する政治的な問題を取り扱う責任者になります。たまにニュース等で見かける方もいるでしょう。彼に関してはアリバイがある事が判明しています。そのため、彼をクーデターの首謀者と捉えるのは難しいと思われます」

「しかし、ニュルブク少将に関しては、少々人相が悪いという話を聞いた事があるぞ?」

「確かにそのような結果が出ていることは間違いありません。過去の政治思想診断では、急進左派に近い結果を残しています。かつては軍縮を主張した際、記者から国防の低下を招くのではないかと質問された時に、『我々は戦うためにいるわけではない。誰もが平等になる事を目指している』と発言し、炎上しかけた事があります」

「しかし彼にはアリバイがあるんだろう?首謀者として決めつけるのは、まだ早いのではないか?」

「それもそうですが……」


 重役の言葉に、刑事は少し狼狽える。


「とにかく、最後の容疑者を聞かせてくれ」

「はい。三人目は、陸軍省兵器調達局兵器設計責任者のヤコンブ・ロッティラージ中将です。兵器設計に関わる大きな部署の最高責任者でもあります。陸軍に存在する全ての兵器は、一度彼の目を通していると言っても過言ではありません。彼も現在の所、アリバイのない関係者の一人です」

「大きな部署ねぇ。それだけ他とのコネクションを持っている事も考えられるな」

「しかし、彼は多忙を極める人間ゆえ、まとまった暇を取れるとは思いません。常に人の目もあるでしょうし」

「しかし、使われている秘文メールは一つ一つが短い文章で構成されている。何かのメールのチェックの後に、ついでにメッセージを放出するのは出来るのではないか?兵器設計の責任者をしているほどだ、そのくらい簡単に出来るだろう」

「人間の処理能力を超えてませんか?」

「とにかく、今の三人が容疑者ということでいいんだな?」

「えぇ」

「メールの出所は分かったのか?」

「サーバをいくつか経由しているようで、捜索は困難を極めます」

「そうか……。ここまで来ると、よくやっていると思うよ」

「しかし、サーバの情報は残っているはずなので、全てを力技で解析しています」

「うむ、全力であたってくれ」


 そう役員は話を切り上げる。


「そういえば、この三人の身柄はどうなっている?」

「現在は総司令部の取調室で、それぞれ事情を聞いています」

「監視カメラはついているな?」

「えぇ。ライブで流せますが」

「流してくれ」


 そういって、三人の様子がモニターに映される。

 三人は、それぞれの態度で対応に応じていた。


『僕は関係ありません。それだけです』

『こんな事をしていて、後でどうなるか分かっているのか!?』

『俺はそんな事知らん。とにかく仕事に戻らせてくれ』


 順番にフェリデスト少将、ニュルブク少将、ロッティラージ中将である。

 反応は三者三様だ。


「……それで、これからどうやって容疑者を絞っていくつもりだね?」

「まずは秘文メールを見せます。その反応から推測していきましょう」


 そういって、対応に当たっている刑事が秘文メッセージの文面を見せる。


『……なんですか、これは?』


 フェリデスト少将は、少しの間を置いて聞き返す。


『これがなんだというんだ?そんなことより、私をこんな所にいつまで閉じ込めるつもりだ!』


 ニュルブク少将は、とにかく怒っているといった感じだ。


『知らんものは知らん』


 ロッティラージ中将はあくまでも冷静でいた。


「むぅ。この調子では、首謀者が判明するまでに相当時間がかかるぞ」

「それに、彼らをいつまでも拘束しているわけにもいかない。時間が経つにつれて、証拠は無くなっていく可能性があるからな」


 捜査本部に一種の緊張が走る。

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