第67話 前進
第498輸送艦隊が行政区画フロートに接岸する。
それにより、陸軍歩兵部隊が続々と行政区画に流れ込む。
「行け行け!止まるな!全速力で駆けろ!」
各部隊の隊長が、声を上げる。
陸軍歩兵部隊が上陸した事を察知したクーデター軍は、対抗するために兵士を集結させる。
そして、敵同士が出会うと、必然とあることが発生する。
戦闘だ。
「撃て撃て撃て!」
「攻撃開始!」
ほぼ同時に、両者が撃ち合いを始める。
こうして市街地戦が開始された。
オフィス街は一瞬にして戦場と化す。
互いに銃弾が飛びかい、至る所に銃弾の跡を残していく。
しかし、クーデター軍のほうはたかだか1個師団にも満たないのに対して、陸軍歩兵部隊は少し数を減らしたものの20個師団は優に超える。
陸軍歩兵部隊は圧倒的な戦力差をもって、クーデター軍に立ち向かう。
「457小隊!あのビルに昇って戦況を報告せよ!465小隊は3ブロック向こうから迂回するように行け!334小隊は前進!」
陸軍歩兵部隊の大隊長は、逐次指示を出していく。
それによって、陸軍歩兵部隊は優位に行政区画フロートを進んでいく。
また、圧倒的な数の暴力によって、無理やりと言っていいほど、戦線を押し上げていった。
「クソッ!分が悪すぎる!」
「こんなに来るなんて聞いてねぇぞ!」
「ひるむなぁ!この程度の戦力差、根性があれば何とでもなるはずだ!」
「だったらやってみせろよマヌケ!」
「ガッデム!」
クーデター軍からは悲惨な声しかあがらない。
それもそうだ。
昔から、戦いは数の多いほうが勝つことが多い。
1個師団にも満たないクーデター軍に、20個師団を超える戦力をぶつけるのが異常なのだ。勿論、20個師団をそのまま行政区画フロートに放出すると大変なことになるため、フロートに降り立っているのは、そのうちのごくわずかである。
しかし、それでも陸軍歩兵部隊のほうが圧倒的に有利な状況だ。そうなれば、戦線を押し込むのは陸軍歩兵部隊の方だろう。
さらに、戦況をより有利に進めるために、各大隊長が戦場を観察し、的確な指示を出しているのも、陸軍歩兵部隊の強さの秘訣とも言える。
しかし、そういってられるのも最初の内であった。
どこからともなく、クーデター軍が何かを引っ張ってくる。
それに気が付いた大隊長は陸軍歩兵部隊に命令を下す。
「中止!攻撃中止だ!」
それにより、一時的に銃撃が止む。
大隊長が見たもの。それは……。
「一体どこから民間人を連れてきた……!」
そう、まだ幼さが残る少女であった。
行政区画ではあるものの、そこで働く人の家族もいる。当然のことだろう。
そんな避難するのが遅れた民間人の中で、子供を命の危機にさらしているのだ。
「オラオラァ!さっきまでの威厳はどうしたぁ!?」
そんな事を言いながら、クーデター軍は高笑いをする。
人質を取ったことにより、戦況はクーデター軍が有利になる、と思われた。
その瞬間である。
どこからともなく聞こえる発砲音。
それと同時に、少女に銃口を突きつけていたクーデター軍の兵士がその場に倒れた。
先ほどまでのような高笑いは無くなり、一瞬辺りが静寂に包まれる。
「……は?」
状況を理解出来ないような声。
その主も、すぐに全身の力が抜けたように、その場に倒れ込む。
そして、状況を察した一人が呟く。
「スナイパーだ……」
その瞬間、クーデター軍は蜘蛛の子を散らしたように、四方八方へと逃げていく。
しかし、そんな兵士たちの頭を、弾丸は無慈悲に撃ち抜かれる。
「助かった、スナイパー」
『いえ、これも仕事の内ですから』
そう通信を入れるのは、528小隊所属のスナイパーである。
正確無比な狙撃で、約91%の確率で狙撃を成功させる、まさにプロ中のプロだ。普通の戦場に出れば、命中率86%とかなりの高水準の成果を挙げている。
そんなプロの攻撃によって、各ビルの屋上から銃撃を行っているのだ。
むろん、地上からの反撃は数える程しかない上に、的外れな場合が多い。
「全部隊、前進せよ!」
指揮官がそう命令をする。
今や行政区画を制しているのは、クーデター軍ではなく陸軍歩兵部隊だ。
それでもなお、最後の抵抗を行うべく、クーデター軍からの攻撃は続く。
今更ながら、装甲車も数輌出てきた。
「ふははは!この装甲車があれば、俺達はいくらでも政権をひっくり返すことが出来るぜ!」
クーデター軍のやられっぷりに、とうとう当事者たちの神経もやられてしまったようである。
しかし、陸軍歩兵部隊はあくまで冷静に対処に当たった。
「装甲車発見!繰り返す、装甲車発見!」
「対戦車弾用意!」
後方に待機していた補給班から、ロケットランチャーが運ばれる。
そうして、前線に持って来られたロケランを構えた。
ロケランを構えた歩兵は、狙いを真ん中の装甲車に定める。
しかし、上手く射線が合わず、撃てずにいた。
そんな、お構いなしに迫りくる装甲車。
彼は一つの決断をする。
「うぉぉぉ!」
物陰から飛び出し、装甲車の列の横を走っていく。
射線を確保するためには必要なことであるが、それでも無謀にも程がある。
だが、装甲車に乗っているクーデター軍はそのことに気が付かなかった。
そうして、その辺に転がっていたちょうどいいコンクリートブロックに飛び込む。
そして、コンクリートブロックから身を乗り出して、照準を定める。
そのまま照準が定まると、引き金を引く。
弾頭は、まっすぐ狙った装甲車へ飛んでいった。
そのまま弾頭は命中し、装甲車をいとも簡単に貫通させる。
装甲車が爆発すると、車列が止まった。
状況確認のために、車からクーデター軍の兵士が出てくる。
そこを狙って、地上の歩兵やビルの屋上にいるスナイパーが弾丸を撃ち込む。
こうして、クーデター軍は壊滅状態となった。
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