第66話 対空
第219巡航艦隊の活躍により、対空火器の処理に成功する。
それを見ていた第498輸送艦隊は、我先にと降下していく。
それを見ていた第219巡航艦隊の指揮官は、声を荒げる。
「不味い!まだ対空火器がある可能性がある!」
思わず通信を入れようとしたが、時すでに遅し。
行政区画から、何かが照射されるのを検知する。
「この光線は……?」
「これは……レーザー目標指示誘導のものです!」
「ミサイルが飛んでくるということか!」
だいぶ古い技術であるが、確実に動作するであろう装備。それを所持していただけでも驚きだが、今では廃れ気味の技術だ。
しかし、それがミサイル攻撃の前触れであることを爆速で理解した艦隊指揮官は、直ちに通信を開く。
「全艦、ミサイル警戒!高速で突っ込んでくる飛翔体を見逃すな!」
その警告から数秒もしない内に、報告が上がる。
『東から高速飛翔体接近中!艦隊接触まで推定30秒!』
「迎撃ー!」
艦隊指揮官は、即座に命令を下す。
グングニルシステムはすぐさま、高速物体に照準を定め、適切な攻撃手段を選択する。
それによって、艦隊全体で対空ミサイルが選択された。
グングニルシステムがミサイルを感知してからわずか4.5秒でミサイルが発射される。
ミサイルはぐんぐん加速していき、最高速度に達した。
そして、高速飛翔体と交差する。
その瞬間、レーダー上から高速飛翔体と対空ミサイルが消失した。
『高速飛翔体の迎撃を確認!』
「よし……!」
だが、それもほんの数秒の間だけである。
『指揮官!高速飛翔体が再度出現!艦隊まで推定5秒!』
「なん、だと」
その瞬間、艦隊東部方向に展開していた艦艇が爆発する。
「やられたっ。敵はミサイルを2発撃っていたのか!」
そう息つく間もなく、レーダー上には、次々とミサイルと思われる飛翔体が続々と表示される。
それに反応するように、グングニルシステムは次々と対空ミサイルを発射していく。
ソフトウェア上では対処出来ているのだが、ハードウェアが対処出来ていない。
すなわち、グングニルシステムの処理が速すぎて、物理的に間に合っていないのだ。
正直こうなるのは想定外な上に、想定しておかなければならない事象ではある。
しかし、グングニルシステムがエラーを吐こうが、今はこれで対応するしかない。
少々無茶をしながら、第219巡航艦隊はやってくる飛翔体の群れを次々と撃墜していく。
「指揮官!対空ミサイルの残弾が残り少なくなってきました!」
「くっ!ビーム砲用意!砲撃で潰せ!」
砲塔が旋回し、高出力のビーム砲撃が飛翔体を襲う。
しかしそれでも、飛翔体は防御網を突破し、艦隊に突撃していく。
それによって第219巡航艦隊、そして第498輸送艦隊双方に被害が出る。
「これ以上の被害を出すな!全力で迎撃しろ!」
そう言っている間に、飛翔体の数は次第に少なくなってくる。
そして最終的には、やってくる飛翔体の数も少なくなってきた。
「なんとか対処出来たのか……?」
「そのようで。ただ、今回の戦闘で、第219巡航艦隊は中破12隻、大破が7隻、撃沈が8隻出ました」
「かなり被害が出たな。特に撃沈が8隻というのは想定外だ」
「今回のような突発的な戦闘が発生した場合は、対処が上手く出来ないということになりますね」
部下からの冷静な指摘。彼の言葉が的を得ているのは、正直なところだろう。
だが、今嘆いたところで状況が改善するわけではない。
指揮官は現状を甘んじることにして、今後の作戦案の内容を確認する。
「確か、この後は第498輸送艦隊による陸軍常陸作戦か。うまく行くといいんだがな」
「こればかりは祈ることしかできまでしょう」
そういって、艦隊指揮官は仕方なく第498輸送艦隊の様子を見た。
その第498輸送艦隊は、次々と輸送艦隊降の降下が行われる。
そして、各艦が指定された場所に向かって、降下が続けられた。
「高度はまだ高い!もっとだ、もっと降ろせ!」
輸送艦隊は、素早く、そして単純な仕事をこなすために軍に忠誠心を示せる兵士を乗せていることが多い。
こうなった原因は、単純に配備された直後に忠誠を誓うための訓練が行われるからだ。
そのため、妄信的に共和国軍最強を語る人間も少なくない。
そんな第498輸送艦隊であるが、先ほどの高速飛翔体の影響によって、いくらか数を減らされていた。
勿論、それに伴って陸軍歩兵部隊の数も少なくなる。
しかし、今回の陸軍歩兵部隊は30個師団もあるのだ。多少の損失は誤差にすぎない。
「我々はこれから元同胞を撃つ。その覚悟は出来ているか?」
「応!」
「同胞が目の前で倒れても、前に進む覚悟はあるか?」
「応!」
「共和国のために、死ぬ覚悟は出来ているか?」
「応!」
「よろしい。我々は強い。故に負けない。それだけを信じて前に進め」
「応!」
そう陸軍歩兵部隊の指揮官が鼓舞する。
彼らはあと数十分で、かつての仲間を撃つだろう。
しかし、彼らはその覚悟が出来ていた。
あとは実行に移すだけである。
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